8 採用面接
ローリアさんが部屋を出ていくと、ミリアーナさんが改まって話し始める。
「ではまず、現在のあなたの立場は私達が今いる都市ラストムーロによる保護預かりという形になっています、指示に従って頂ける限りにおいては市民と同等に扱わせて頂きます」
鉄格子のある部屋に入れるのは保護じゃなく軟禁だと思うんですが、俺にも市民と同等の自由が欲しいです。
「指示には従うつもりですが……もし指示に従わなかったらどうなるんでしょう」
「申し訳ありませんが拘束の上、地下牢へと移送させて頂きます。武器として使用可能なスキルを持っている時点で指示に従っていただけない者を自由にさせておくわけにはいきませんので」
おう……きっついな。
だが言ってる事はもっともなのでうなずいておく。
「コンテナさんを保護させていただくことになったのは女神教からの保護要請に応えてのものなのですが……どうでしょう、コンテナさん、ブケパロス辺境伯に仕えてみる気はありませんか?」
女神教とか気になる、行ったら「私があなたを召喚しました、魔神と戦って下さい」とか無茶振りされるのかね?そんなことになったら逃げたい、行く当て無いから逃げれないけど。
それに自分で言うのもなんだが、俺みたいな得体の知れない奴雇っていいのかね? 何が目的があるんだろうけど、安直な判断はしたくないが身の安全と生活の基盤は優先して確保したい。
「えーっと、判断材料が少なすぎてなんとも、女神教って何なんです?」
「女神教は北方発祥で、ファドーグ王国の国教にも指定されている宗教団体ですね、孤児院の経営と、聖者と聖女の認定と支援が主な活動内容です、聖者は大陸中を旅して困っている人を助けているそうです、聖女は信者集めの広告塔ですね」
うーん、聖女が広告塔だとか身も蓋もないな、信用していいのか判断つかない。
「ブケパロス辺境伯に仕えたとして、僕は何をすれば?待遇とかはどうなるんでしょうか? 先日の魔族みたいなのと戦ったりはしたくないんですが・・・」
「戦う必要はありません、私の家をコンテナに作り変えられましたが、中の家具まで再生できていましたよね、外観はアレですが……家具が再生できるだけでも十分に価値がありますし、外壁面を確認したところかなり頑丈に出来ているようなので、壊れてしまった砦を修復してその場しのぎとして使う分には有用だと判断しました」
確かに家具だけでも再生できるのは役に立てるか。
砦の修復は……戦場には行きたくないが、戦いが終わったあとならまあ大丈夫か。
「砦だと兵士が入ってる状態で入り口も閉めきれないのは大丈夫なんですか?」
「門だけ別に設置すれば問題ありません、私の家もそのようにする予定です、あくまで建て直すまでの応急処置ですが」
コンテナ化した家の話になると、目に力が入るミリアーナさん、ほんとゴメンナサイ……もう許して下さい……
「お給料とかは?」
通貨価値とか全く分からないがとりあえず聞いてみる、お金は大切だってアヒルも言ってた。
余裕が出来たらこの世界でも趣味だったコイン収集をしたいな。
「最低でも中位兵士としての待遇はお約束しますよ、四人程度の家族が普通に生活できる給金と食糧の配給を受けられます、辺境伯がお帰りになられてからもう一度話し合う事になりますが」
かなり好待遇な気はする、スキルを有効活用できればもっと待遇が良くなるとしたらありがたい。
「お話を受けて頂けるなら、デシアーナ付きの従兵として働いていただくことになります」
ん? デシアーナさんの従兵? それってデシアーナさんと仕事中はずっと一緒にいられるってことなのか!? 女神教なんてよく知らないとこより近くの胸の大きな美人さんだ! 肩とか凝ってそうだし揉んで差し上げたい。
「謹んでお受けいたします! ぜひ!ブケパロス辺境伯に忠誠を誓います!」
こうして俺は、隊長代理メイドの従兵という良くわからない肩書を手に入れた。