表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第2章 サイファートの町探索編
43/451

第42話 コロネ、教会の相談を受ける

「コロネー! こっちこっち!」


「アイスクリーム~? おいしかったよ~」


「これ、すごいわね。食後にぴったりだわ。口の中がさっぱりするもの」


 コロネを手招きしているのは、『あめつちの手』の三人。精霊種の双子のアルルとウルル、その保護者のシモーヌだ。

 特に、アルルとウルルは、アイスクリームが気に入ったらしく、コロネの肩をバンバン叩いてくる。うれしいけど、少し痛い。


「そう言っていただけるとうれしいです。あ、制服の方もありがとうございました。徹夜仕事だって聞いてましたので」


 結局、オサムの方の追加発注も、コロネのだったわけだし。

 何となく、申し訳がない。


「いいのいいの、よく似合っているし。それで満足よ!」


「そうよね、サプライズって言っても、もしサイズとか合わなかったら大変だもの。ちゃんと着られるものに仕上がっていて一安心だわ」


「シモーヌ~、それどういうこと? ウルルが寸法とったんだから~、失敗するはずないのに~」


「いやいや、ウルル、あんた、寝不足の時の仕事でけっこうやらかしてるじゃないの。徹夜仕事で問題なく仕上がったのは、あたしたちのサポートのおかげでしょ」


「う~、アルルまで~、ひどい~」


「はいはい、きりがないから、その辺で。それにしても、お菓子だっけ? 今後は甘い物がメニューに加わっていくのよね?」


 さすがはシモーヌ、流し方が慣れている。

 じゃなくて、甘い物についての話だね。


「どこで、どうやって販売していくのかは、検討中ですかね。水の日の営業では一定量は用意する予定ですよ。後はどのくらいの需要があるか、そちらを確認してからになります。ピーニャの方とも相談して、パン工房で一部販売とかもあるかもしれません」


 食材の確保が可能となったメニューについては、ある程度は数もそろえられると思うが、結局のところ、どのくらい売れるのか、その辺との兼ね合いになる。

 添加物なしでは、日持ちしないので、アイスクリームにしたところで、作った以上はその日で食べきる必要があるのだ。

 最初のうちは手探りで行くしかない。


「だったら、あたしたちの分は数に入れておいてよ。毎日でも買うから」


「うん、そうだね~。これなら、吸収効率も良さそうだし~」


「ただ、あくまでも値段次第よ? さすがにアイスクリーム一個で金貨一枚とかだと、ちょっと厳しいもの」


「ありがとうございます。価格については、オサムさんとも相談しますが、原価プラスちょっと上乗せ程度になると思いますので、そこまでは行かないはずですよ」


 うん、お客さんの意見だ。

 こういうのはありがたい。

 ちなみに、ウルルが言う吸収効率と言うのは、精霊種の本体へのエネルギー変換に関することらしい。詳しいことはよく分からないけど、とりあえず、アイスクリームはその条件に合っていたらしい。


「うん、これからは楽しみが増えてうれしいわ!」


「さっき、リッチーが叫んでいた時のも、興味あるし~」


「こういう時、記者さんはうらやましいわね。新メニューの味見ができるもの」


 あ、そうだ。忘れていた。

 この三人にも、プリンを用意していたんだった。

 オサムのサプライズのおかげで、すっかり吹っ飛んでしまっていた。


「あ、すみません。プリンについては、お三方の分は取ってありますので、今持ってきますね。制服のお礼です」


「え! さっきのがあるの!?」


「プリン~、プリン~!」


「ああ、そういえば、オサムがそんなこと言ってたっけ。私もすっかり忘れていたわ」


「はい、じゃあ、今、お持ちしますね」


 調理場へと戻って、冷蔵庫からプリンを取ってくる。

 これで、基本のプリンについてはおしまいだ。

 後は、生クリームのプリンがいくつか残っているだけだ。

 そのまま、三人のテーブルまで戻って、二種類のプリンを提供する。


「お待たせしました。プリンです。黄色い方がノーマルなプリンで、白い方が生クリームを使ったプリンです」


「おー! ふたつもあるの!? やったね!」


「あ~、おいしい~! しあわせ~」


「ウルル、あんた、飛びつくのが早いわよ! 何よ、こういう時だけ、そのスピードは。あ、コロネ、ありがとうね」


「いいえ、ごゆっくりどうぞ」


 美味しそうに食べてもらえるだけで、コロネもうれしくなる。

 そんなこんなで、三人にお辞儀して、テーブルを後にした。





「おーい、コロネ、ちょっといいか?」


 あれ、巡礼シスターのカミュだ。

 いつの間に来ていたのだろうか、気付かなかった。

 そのテーブルには、カミュの他にもうひとりシスターが同席している。先日、教会に行ったとき、バターなどを売っていた人だ。確か、シスターリリックと呼ばれていたような気がする。


「あ、カミュさん。いらっしゃいませ」


「おう。何とか、営業時間までに戻ってこれたからな。それにしても、すぐに料理を披露しているじゃないか。やるな、お主」


 からかい半分で、カミュが笑いかけてくる。

 少しだけ赤ら顔なのも相変わらずだ。

 テーブルの上にもお酒が載っているし。


「まあいいや。そういえば、顔合わせはしていたんだっけか? こっちのシスターが、リリックだ。今のところはカウベルの部下みたいな扱いだな」


「部下って……あ、すみません。改めまして、リリックと申します。先日はごあいさつもできませんで。どうぞよろしくお願いします。あ、アイスクリーム、とても美味しかったですよ」


「こちらこそ、ありがとうございます。料理人のコロネです。どうぞよろしくお願いします」


 シスターリリックは、線の細い感じがする美少女だ。

 コロネよりも少し年下だろうか。

 青い髪に、青い目という向こうの世界ではまずお目にかかれない容姿だが、その色彩が不思議と彼女の印象に馴染んでいた。修道服と相まって、その儚げな感じを引き立てているというか。

 まあ、カミュの方が年下に見えるのはご愛嬌だ。


「そうそう、コロネを呼び止めたのは他でもない。アイスクリームの件だ。このメニューについて、真面目な相談がある」


「相談、ですか?」


 カミュが真剣な表情を浮かべている。

 なるほど、案外、彼女の本質はこっちなのかもしれない。


「ああ、オサムからも聞いたかもしれないが、近く、このサイファートの町に少しばかり人員を受け入れる予定がある。そのための仕事……収益込みの労働だな。それが必要になるんだ。でだ、何か良いものを探していたんだが、このアイスクリームだ。さっき言ってただろ。たまごとミルクとハチミツって」


「はい。このアイスクリームでしたら、それらで作ることが可能ですよ」


「だったら、教会に協力してもらえないか? こちらに製法を教えてほしいんだ。もちろん、ただとは言わない。対価として、利益に応じた分の乳製品の供与。これでどうだ? 基本、乳製品については教会がほぼ専売状態だ。悪い話じゃないと思うが」


 あ、話が大分大きくなってきた。

 ふむ。

 元々、コロネもオサムの話を聞いてから考えていたのだ。

 実のところ、アイスクリームも候補に入ってはいた。

 確かに条件的には悪い話ではない。


「製法をお教えするのは問題ないですよ。条件もそれで願ったり叶ったりです。ただ、いくつか問題がありまして」


「何だ? その問題は」


「ひとつは、たまごの量の確保です。カミュさん、教会としてたまごの入手経路を持っていますか?」


 コロネの場合、プリムを通す必要がある。

 要するに、卸しの業者を通しているのが現状だ。

 この状態では、教会の方へと融通できる数を確保できるとも限らない。


「ああ、たまごを作っているところに心当たりはある。別の支部でたまごを売りにしている場所があってな。少し遠いが、あたしにとっては大した距離じゃない」


 なるほど、たまごは大丈夫、と、

 それにしても、教会もたまごを作っているところがあるんだ。

 メモメモ。


「でしたら、もうひとつ。アイスクリームを作るには、冷凍が可能な設備が必要なのですが、そちらはどうでしょうか?」


「そうだな。そっちも何とかしよう。オサム経由で丸め込むさ」


 いや、丸め込むって。

 まあ、いいか。気にしても仕方がない。


「それなら、わたしとしては問題ありません。その条件で」


「よし。感謝するぜ。これでひとつ問題解決だ」


 そう言って、笑顔でコロネと握手するカミュ。

 こういう時、彼女がシスターであることを再確認する。

 口は悪いが、基本、すごくいい人なのだ。


 ともあれ、これで乳製品も何とかなりそうだ。

 そのことがうれしくて仕方がないコロネなのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ