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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第6章 町の外への挑戦編
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第414話 コロネ、工場へと向かう

「今度来るときは前もって一報入れてくれ。エドガーのとこ経由でも構わんから」


 そうすれば、工房への道を解放するか、ピッケさんか誰か、工房のものを案内に出すから、とパナマさんが言ってくれた。

 やっぱり、この辺の区画って、コロネひとりではやってこれないようだ。

 なので、事前連絡は必須って感じかな。


 方法としては、遠話用のアイテムを持っていたら、そっちを使ってもいいし、後は噂ネットワークの方に職人街関連の伝言板ボードもあるから、そこに吹き込んでくれても構わないとのこと。

 そのどちらも難しい場合は、エドガーさんの工房までやってきて、この受付から取り次いでもらってもいいみたいだけど。


 というか、コロネの場合、専用アイテムを持ってないから、自動的に、エドガーさんの工房ってことになるんだよね、今のところは。


「はい、わかりました。色々とありがとうございます」


「何、うちも工房だ。仕事なら大歓迎だよ」


 そう言って、口元に笑みを浮かべるパナマさん。

 うん、これで困った時は相談に来られるかな。

 小人工房なら、機械関係のちょっとした部品の話とかもできるみたいだし。

 後は、ガラス関連のこともかな?


 ちなみに、今日のところはこの工房の隣にある、ガラス作りの工房はお休みなのだそうだ。

 工房主のギヤさんって人は、ガラスの原料を採りに行っているとのこと。


「まあ、ギヤのやつは月の半分くらいは、この町の地下遺跡に潜ってるしなあ。なので、小人工房でも、ガラス作りに関しては、半分くらい請け負ってるんだ」


「びん」


「そうそう。エドガーさんたちの言う通りよ。今から、この先の工場にも足を運ぶんでしょ? そっちで使うガラスびんもここで作ってたりもするの。ガラス工房が開いている時に比べると、数はそんなに作れないけどね」


「あ、そうなんですね」


 今はペトラさんがガラスびん作りを担当しているのだとか。

 今、コロネたちがいる場所からだと、どこで作業をしているのかわからないけど、ここから更に下にある階では、火を取り扱うための施設もあるんだって。

 その辺は、『火の民』の人たちの工房との兼ね合いとのこと。

 どうも、高火力の設備は、その辺に多くあるみたいだねえ。

 換気とか空調って、大丈夫なのかな?

 その辺は、魔法を上手に使って、って感じなのかもしれない。


「よし、じゃあ、そろそろ工場の方に行くか。あんまり長居しても悪いしな」


「また遊びに来いよ、コロネ。今度こそ、俺の雄姿を見せてやるぜ!」


「ピッケ、あんまり調子に乗らない。てか、そんなにやる気なら、今から、こっちの仕事を手伝ってもらおっか。いいかげん、ガラスびん作りを覚えてよね」


「…………」


「あ、おれも今なら余裕があるから、姉貴たちに付き合うんよ。ピッケももうちょっときちんと作業できれば、納品できるレベルまで行けるかも、って」


「おーい……あれ? 俺、うっかり? ていうか、囲まれてのしごきは嫌ーーーっ! まったくこんちくしょーなやつらだぜ!」


 そのまま、パナマさん以外の三人に取り囲まれるピッケさん。

 あっという間に、強制連行って感じに連れていかれてしまって。

 後に残ったパナマさんが嘆息する。


「あいつ、いくらやっても上達しないからなあ……あそこまで不器用なのも才能だな」


「はは、小人種にしてはめずらしいよな。ピッケの場合、口から先に生まれてきたって感じだしな。それじゃあ、俺たちは行くぜ。悪かったな、パナマ」


「ありがとうございました」


「ああ。工場のやつらにもよろしく言っておいてくれ」


 そんなこんなで、小人工房を後にするコロネたちなのだった。





「ここが工場、ですか?」


「そういうことだ。少し階段を下りるぞ。この辺の区画は地下遺跡のギリギリまで、めいっぱいスペースを広げているからな」


「三階」


「ああ、深さとしては、塔の地下三階くらいまではあるぞ。もっとも、今日のところは上の部分だけの案内になるだろうがな」


 へえ、そうなんだ?

 エドガーさんの説明を聞きながら、改めて、目の前を見ると、そこにあるのはそれぞれ、上と下に続いている階段がある場所だった。

 どう見ても、工場って感じじゃないけど、下の方へ向っている階段の横、その壁には『この先、工場。関係者以外は立入禁止』という張り紙がしてあった。

 あれ?

 もしかして、工場って、けっこう危険だったりするのかな?

 というか、塔の地下三階って、かなり地下深いよね?

 何せ、メルさんたちが住んでいる地下街まででも、軽く、向こうの世界のビルの四、五階分の高さがあったものね。

 だから、普通に二階建ての一軒家とかも地下に作れたわけだし。

 あの地下街で、まだ塔の地下一階部分だったはずだ。


「エドガーさん、ということは、工場って、かなりの大きさってことですか?」


「それはそうだ。少なくとも、うちの工房くらいなら余裕で全部入るぞ。高さ的にも、広さ的にもな」


「広大」


「えっ!? エドガーさんの工房が全部!?」


 うわあ、工場って聞いてはいたけど、想像以上に規模が大きいんだねえ。

 階段を下りながら、色々と、その工場について話を聞いてみたんだけど。


「工場で働いているのは、おもちゃ系のモンスターの人たちなんですよね?」


「ああ。多くは、さっきのパナマたち同様に『ドリファンランド』の出身だ。コロネもサーカスを見たことがあるんだろ? そっちと同じような人形たちが働いているな。で、主に作っているのは、缶詰とビン詰め関係だ。早い話が保存食に関する工場だ」


 なるほどね。

 前に、オサムさんがツナ缶の話をしてくれたけど、それらを缶詰にしているのが、このおもちゃたちによる地下工場なのだそうだ。

 ビンに関しては、ガラス工房と提携で。

 そして、缶に関しては、工場内でそれを作るラインもあるらしくて、そっちに関しては、工場だけでまかなえるのだとか。


「なので、ビン詰めに関しては、缶詰よりは少し数が少ないな。メルだけだと対応できない時とかは、ポーションの作業とかも一部補助したりもしてるぞ。中身の調合薬だけ預かって、ガラス工房で作ったビンに詰める作業な」


「あ、ポーションの詰め込みとかもやってるんですか」


 もしかして、メルさんの工房の膨大な数のポーションも、こっちの工場で詰めていたりするのかな?

 確かにあそこに保管しているポーションの数って異常な量だったし。


「まあ、そっちの作業はあくまでも、おまけだな。何だかんだ言っても、この工場の場合、フル稼働させると色々と問題があるんでな。その辺は、少し加減しつつ動かしているんだ。何せ、缶詰に関しては、出荷なんかも場所を制限しているからなあ」


 その辺は、ポーション類と同様にトップシークレットだ、とエドガーさんが苦笑する。

 一応、物資として流しているのは、食材などを提供してくれている、人魚の村なり、『魔王領』の一部なりのみに限定されているのだそうだ。

 今のところは、缶詰はサイファートの町の限定品と考えてもらった方がいい、って。


「まず、缶を量産できるのが、ここの工場か、『ドリファンランド』に限られるってのが一番の問題だな。保存食としては優秀なんだが、下手に流通させられないんだ。缶詰を作るのに、割と高度な魔法技術も必要になるしな」


「むず」


 あ、そっか。

 缶詰作りって、やっぱり高度な技術なんだものね。

 他の場所だと、作るのが難しい工程が多いらしくて。


「そもそもが、密封状態を保てる缶を作るのが難しいからな。後は、缶詰に適した料理の作りかたとか、洗浄や脱気の工程とかな。色々と問題が山積みだ。普通のやり方じゃ、ちょっと作れないだろうな」


「ということは、ここの工場は普通じゃないってことですよね?」


「まあ、普通ではないな……お、ほら、コロネ、そこの扉が工場の一番上の区画の入り口だ。今日は、ここを見ていくぞ」


 エドガーさんが指差したのは、下へと続く階段の途中の踊り場だった。

 そこに看板も何もない大きな扉があった。

 そして、階段自体は、更に下へも伸びている。

 まだまだ、工場は地下へと広がっているみたいだね。


「エドガーだ。昨日話した通り、コロネを連れてきた。扉を開けてくれ」


『はい。確認しました。扉開きます』


 扉の前で立ち止まって、エドガーさんがそう話しかけると、そのまま、その大きな扉が自動的に左右へと開いた。


 あー、すごい。

 ちゃんと自動ドアみたいになってるんだね。

 どこからともなく、女の人みたいな声がしたし、誰かがここをチェックしているようだ。


『洗浄区画へとお入りください。そこから先は消毒してからでないと立ち入りできません』


「ああ、わかった。よし、コロネ、中に入るぞ。この中が洗浄区画だ。ここで、全身を消毒するんだ」


「全身消毒ですか?」


 そう尋ねながらも、エドガーさんたちに続いて、扉の中へと進む。

 扉の中はそれほど広くない白い部屋になっていた。

 奥の方には、また大きな扉があって、そして、部屋の中にいたのは。


「「もっ! もっ! もっ!」」


「あっ、ミドリノモさん」


 この町のあちこちで見かける、まんまるの緑色の生き物。

 妖怪種のミドリノモたちが、その洗浄区画にもいて、ぴょんぴょん飛び跳ねていた。

 コロネも、もののけ湯のクリーニングとかでお世話になっているから、すっかりおなじみというか。

 なるほど。

 工場に入る前に、この子たちに消毒してもらうんだね。


 そんなこんなで、ミドリノモの『穢れ祓い』を全身に受けるコロネたちなのだった。

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