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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第6章 町の外への挑戦編
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第408話 コロネ、職人街の地下に驚く

「はい、こちらが地下の職人街になりますよ」


 ヴィヴィも通常モードに戻って、ショコラも何事もなかったかのように、コロネの頭の上に戻ってくれたので、そのまま、扉を開けて、地下工房へと降りた。

 少し、長めの階段を下りて、さらにその先にある扉をアストラルさんが開錠して。

 地下へと抜けたんだけど。


「うわ、すごいですね。ここが地下工房ですか?」


 ちょっとコロネが想像していたのとは異なる、地下工房がそこにあった。

 目の前に広がっているのは、れっきとした街だ。

 天井の高いところと低いところで、多少は差があるものの、大きめの、広い通路というか、道路があって、その両側にお店や住居が並んでいる感じだろうか。

 向こうで言うところのアーケード街。

 それの工房とか、工場っぽい施設の比率を高めた場所というか。


 南北方向には、本当に大きな通路が伸びていて、アストラルさんの工房の入り口から、ちょっと南側のところには、噴水広場のような場所も見えて、そこで、人やちょっとモンスターっぽい感じの人、それに、大小さまざまなお人形さんたちや、噴水からは、ぴょんぴょんと飛び跳ねている、緑色の生き物の姿も見えた。

 あれ、妖怪種のミドリノモだよね?

 どうやら、この噴水広場って、この町の地下水路ともつながっているらしくて、水の浄化のお仕事がお休みのミドリノモたちが、ここで休んでいるらしい。


 というか。

 塔の地下の町よりも、ちゃんとした地下街って感じがする。

 あっちの方は、まだ、むき出しの自然の壁があったり、元々あった地下遺跡の壊れた部分を活用しましたって感じで、建物とかも、地下なのに一軒家とかが多かったんだけど、この地下の職人街は、本当に、アーケード街っぽいというか。

 ちょっと驚きだ。


「はは、少しは驚いたか、コロネ? ここの通りは北は農家連の方から、南は果樹園まで、まっすぐ伸びているからな。ある意味で、物の輸送の要にもなっているんだ」


「はい。壁とか、天井とかもきれいですし、塔の地下よりもしっかりした作りになってるんですね」


「まあな。あっちはもう、完全に遺跡に重複してるから、下手にいじれない部分も多かったんだが、この辺りは、本来の地下遺跡の上に乗っかった、普通の地面だったからな。それで、ファムたちの手で、色々とできたってわけさ」


 そもそも、塔の地下は、この辺よりも入るための条件が厳しいしな、とエドガーさんが苦笑する。

 職人街のものでも、あっちには足を踏み入れたことがない人も多いのだとか。

 あ、そうなんだ?

 確かに、油関係とか、ポーション関係とかもあるしね。

 それに、プルートさんたちのいる冥界の門とかもあるみたいだし。


 そういうのも、コロネが地下の職人街に入るのが、あっさり許された理由らしい。

 あっちに入れるなら、こっちも問題ないだろうって感じで。


「うちは違いますけど、職人街の工房の多くは、地下の方にもお店を開いているんですよ、はい」


「その辺は、上の職人街は、表向きの街って感じだからな。あくまでも工房としての対応がメインで、そこで作っている商品に関しては、こっちの地下の店へどうぞってな。アストラルの場合は、食器とか、日常で使う陶器がメインだから、上に店があるんだ。もちろん、こいつが望めば、地下空間をそういう店として、作り変えることもできるぞ」


「ファム」


「土の民」


「ああ。だから、連中は地下に都市を作るのとかお手の物なのさ。王都のスラムの方も、一部は地下を利用した空間があるらしいぞ? 俺もまだ行ったことはないが」


 へえ、そうなんだね。

 ただ、王都のスラムの方は、整備されているわけじゃなくて、かなり、ややこしい作りになっているらしい。

 それに、そのファムさんも、元々は土木専門って感じじゃなくて、そっちの技術に関しては、ロンさんの商隊の人たちに教わったり、手伝ってもらったそうだ。

 そういえば、ギムネムさんとかも『土の民』だったものね。

 

 ともあれ。

 上の職人街も、十分、活気があって立派だけど、地下は地下ですごいね。

 けっこう、人でにぎわっているし、歩いている比率で言えば、上の街よりも多いくらいだもの。

 それに、大通りは大通りで、ちょっと気になるものがあるし。


「エドガーさん、通路の一部に、床が動いているところがあるんですけど……」


 床の色が変わっていて、それが一定方向へと流れるように動いているというか。

 これ、歩く歩道みたいだよ。

 荷物と一緒に乗って、移動している人とかもいるし。

 そういえば、アイテム袋を使わないで、物を運んでいる人もけっこういるね。

 果樹園の市場ですれ違った人もちらほら見えるから、食品関係かな?

 そういう時は、この動く床は便利そうだ。

 北の方向に走っているのと、南の方向に走っているのの二種類あるみたいだし。


 それにしても、すごいね。

 どういう作りになってるんだろ?

 これもベルトコンベアーみたいな感じなのかな?


「ああ、あれか? あれは、ダンジョンの罠システムを応用したものだよ。本当は、ダンジョン内に設置して、作動させるやつらしいぞ? はは、意外と便利だろ?」


 何か、物や人が乗ると、床自体が稼働するようになってるんだ、とエドガーさんが笑う。

 あれ?

 ダンジョンの罠って、どういうこと?


「あの、エドガーさん、ダンジョンって、自然に発生するものじゃないんですか?」


 前にそんな話を聞いたような気がするんだけど。

 もしかして、罠をダンジョンから持ってきたの?

 まあ、バスとかも持ち帰れるんだから、そういうことができてもおかしくはないんだろうけど。


「そうだな。コロネはまだ聞いたことがなかったか? ダンジョンの中には、人為的に作られたものもあるんだよ」


「そうなんですか?」


 へえ、ダンジョンって作れるんだ?

 あれ? でも、そう言えば、どこかでそんなことも聞いたような気がするよね。

 どこで聞いたんだっけ?


「今、『放浪のダンジョンメーカー』がロンのとこに居候してるんだよ。いわゆる、迷宮作成師ってやつだな。ほら、モスのやつと同族だよ」


「あ、幻獣種のかたなんですね」


 そうだそうだ。

 ドロシーの家で、その話を聞いたんだよね。

 幻獣種の『異界生成』でダンジョンを作っては、疑似核を設置して、世界中のあちこちに、勝手にダンジョンを作っちゃう幻獣さんがいるって。

 つまりは、その人の協力を得て、この地下の作りに応用しているんだね?

 仕組みはエドガーさんたちも詳しくはわかってないのだそうだ。

 移動型トラップの一種を、動く歩道として設置しているって感じで。


 というか、今、ロンさんの商隊にいるの?

 世界中のあちこちを放浪しては、ちょうどいいところとかに、こっそりダンジョンを作っては、それが育つのを楽しみにしているのだとか。

 ダンジョンが育つ、って表現もすごいけど。


「まあな、面白半分で、そんなことをされても困るよな。入り口とかもわかりづらくしてるとこもあるらしくて、近くに住んでるやつもまったく知らないうちに、地下でどんどんダンジョンが育ってたりとかもあったんだと」


 その辺は、モスさん情報とのこと。

 なので、いよいよ迷惑をかけているとなると、たまにこっそりと幻獣さんが派遣されて、ダンジョンを取り壊したりもしてるらしい。

 真実を知る人はごく一部だけど、下手に露見すると、幻獣種へのイメージが悪くなるからって。


「自然発生型のダンジョンも多いから、ほとんど気付かれてはいないと思うがな。そもそも、ダンジョンが誰かの手で作れるって認識しているやつ自体が少ないだろう」


「ですが、ダンジョンのトラップの技術は素晴らしいですよ、はい。あちらを有効活用すれば、新しいことも色々とできますので」


 その多くは、魔素を循環させることで機能するのだとか。

 なので、この町でも、色々と試しているらしいね。

 その、迷宮作成師の人も、ふらっとどこかへ行っては、たまに、やってきて、しばらく、ロンさんの商隊宿舎に泊まっては、またどこかへ行ってしまうそうで、そういう意味では、滞在中は、手を借りたりとかもしているらしい。

 この町、なんだかんだ言っても、幻獣種の関係者がけっこういるみたいだし。


「まあ、それはそれとして、だ。さて、どっちから案内するか……そうだな、向こうからやって来たのは、モッコたちじゃないか?」


「羊飼」


 エドガーさんが見ている方向……、ここから南の方だね。

 そっちから、大通りをモッコさんがやってきた。

 周りを羊さんたちに囲まれながら。

 うわ、あれは、なかなかの大人数というか、すごい数というか。

 でも、周りの人たちは、ごく普通にしているということは、これもありふれた光景って感じなのかな。

 ちょっと小柄な感じのモッコさんが、羊の大群を引き連れているんだけど。

 まあ、道幅いっぱいに広がっているわけじゃないし、そういう意味では、統制がとれているというか、隊列がしっかりしている感じではあるけどね。


 そうこうしているうちに、声が届く範囲までモッコさんが近づいてきた。


「親方ー、こんなところにいたんだ? コロネ連れてくるって言ってたから、片付けて待ってたのに、いつまで経っても来ないんだもの。もう、羊ちゃんたちのお散歩の時間だから、こっち来ちゃったよ? なのに、なぜか、いるし」


「いや、こっちとしては、お前らの羊たちの世話がひと段落するのを見計らって行こうと思ったんだが。まあ、ちょうどいいと言えば、ちょうどいいか。モッコ、今から、放牧スペースまで行くんだな?」


「うん、そうだよ。毎日の日課だし。そうすることで、羊ちゃんたちも喜んでくれるのである。ねー?」


 そうモッコさんが言うと、周りの羊さんたちが一斉に、そうだそうだという感じで鳴きだした。

 すごいねえ、とっても、モッコさんに懐いているね、この羊さんたち。

 大きさとか、色合いとかも様々な羊さん。

 黒い羊さんとか、青系統の羊さんとかもいるね。種類とかも色々なのかな?


「よし、それじゃあ、俺たちも同行しよう。コロネにも、そっちの方から案内するぞ」


「今日は、農家連の上の方まで行かないけどね。地下でも太陽を浴びれる放牧用の牧場スペースだよ。そこなら、生えている草とかも自由に食べていいし」


「割と、この辺に住んでる、モンスター系の連中も、そこでまったりしたりしてるぞ。さすがに、人化できないやつらは、地上の方で、大っぴらに過ごしてはいけないことになってるからな」


 へえ、なるほどね。

 それじゃあ、行くか、というエドガーさんたちについて行く形で。

 その、放牧地へと向かうコロネなのだった。

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