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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第6章 町の外への挑戦編
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第359話 コロネ、図書館の話を聞く

「ところで、今日って女子会なんですね?」


 見た感じ、女ばっかりだものね。

 エミールさんの旦那さんとかは来ないのかな? とか思ったんだけど。


「ふふ、うちの人は、今、炭作りの真っ最中だから。今日は、おみやげを買って帰るだけね」


 そもそも、シャーリーたちと一緒って話をしたら、ゆっくりしてくるといい、って言われたし、とエミールが笑う。

 そういうのには理解のある旦那さんらしい。

 なるほどね。

 確か、木こりさんなんだよね?

 バルツさんって言ったっけ。

 ドムさんのお店とかで使っている備長炭とかを作っているとは聞いているよ。

 後は、木を切ったり、木を植えたりしているって話だ。

 この町の木材って、レーゼさんのところの他は、そっちからも購入したりとかしているらしいし。

 薪とか炭関係は、バルツさんの方が得意なのかな。

 何だかんだで、この塔だと調理とかの設備が整っているけど、割と一般的な家庭の火力って、そっちがメインらしいし。

 この町だと、魔道具と半々くらいの比率だってのは、エミールさんの談だ。


「うーちゃんの場合は、そもそも、お店の営業日には来ないから。そのせいで、ほら、コロネも見てただろうけど、大食い大会のチケットね。あれ、使うのに、わざわざ予約とかしないといけないし。それで、今さっきオサムさんにも頼んできたんだけど」


「あ、そうだったんですね」


 そういえば、シャーリーさんって、大食い大会の時に準優勝して、オサムさんの特別チケットをもらってたっけ。

 家族全員まで使えますってやつ。

 何となく、コロネもオサムさんのフルコースって興味があるんだけど。

 前のコンソメスープといい、本人は定食屋のおやじだって謙遜してるけど、本気を出せば、かなりすごい料理も作れるんじゃないかな?

 だって、生パスタでのマカロニ作りとかも、かなり本格的だったし。

 普通の定食屋で、そこまでのことはしないと思うんだけど。

 実は、お菓子作りもやらないだけで、けっこう詳しいんじゃないのかな?

 とは、ちょっと疑っているんだけど。


 さておき。

 あんまり、ウーヴさんが同席してフルコースを食べてるイメージってわかないよね。

 もしかして、こっそり人化したりとかはしてるかな?


「え? うーちゃん、本当に人化しないけど? どっちかって言えば、手先が器用に使えるってのと、闇魔法とか使って、それで作法にしちゃうから。ふふ、それでうちの家とか、人型用のサイズよりもずっとずっと大きいし」


「玄関とかも、お父さんが入れるサイズですから。なので、人型ですと、ちょっと座りが悪かったりもするんですよね」


「私はあまり気になりませんけどね。フェンとは違って、狼の形態があんまり得意じゃありませんから、比率的にそちらで慣れてしまってますから」


 へえ、そうなんだ。

 つまり、ものすごく大きな家って感じなのかな?

 一応、自然にできていた、洞窟とセットになっている作りらしい。

 って、言われても、さすがに言葉だけだと想像しづらいんだけど。

 こればっかりは、行ってみないとわからないかな。


「それと、お兄ちゃんは相変わらず、孤児院の方に入り浸ってますよ。大分、サイナちゃんも孤児院に馴染んできたみたいで、エリさんのお手伝いが上手になってきましたし」


「ヴェルルお兄様もサイナさんにすっかりお熱ですから。ですが、好きになった方が迷い人というのは運命的ではありませんか? 私もそういうことには憧れます」


「あー、お姉ちゃんは、絵本の読み過ぎ。あ、でも、フェンもこの間、借りた絵本の話は好きだけど。ちょっと強引な方がドキドキするもん。やっぱり、相手にするなら、フェンより強い人じゃないと」


「私は、優しくされたいですけどね。ですが、あの絵本はどんな方が描かれているんでしょうね? お姫様などの心情とか、本当に繊細ですもの。絵のタッチもそうですが、おそらく女性の方なのでしょうが。気になります」


「あはは、お姉ちゃん、お姫さまが好きだものね」


 フェンちゃんの話だと、フィオナちゃんがこんな感じの性格なのも、絵本の影響なのだそうだ。

 魔王都とかで出回っている絵本を集めるのがフィオナの趣味なんだって。

 うん?

 魔王都で出回ってる絵本?

 あれあれ、何だか、嫌な予感しかしないんだけど。

 もしかして、作者って、地下に住んでる人じゃないの?

 もし、本当にそうだったら、少女の夢を壊しちゃうから、言わないけどさ。

 どうも、変なところで、その絵本が流行っているらしい。

 月に二冊くらいのペースで新しい絵本が出るらしくて、その刊行ペースからも人気が出ているんだって。

 絵本なのに、続きが気になるつくりになっているのだとか。

 うーん、ちょっとした隔週連載って感じだよね。

 やっぱり、門番って、普段は暇なのかな?


「あと、相変わらず、ヴリムはと言えば、噂ネットワークに入り浸ってるよ。たぶん、また、図書館ライブラリだと思うけど。まったく、あの子も変わってるからねえ。普通、狼種でインドア派なんて、あたしも聞いたことがないよ」


「ふふ、シャーリー、そもそも、家の中で遊ぶ娯楽が少ないじゃないの。でも、そっちもこの町ならではの話よね。それで、子供たちには噂ネットワークへの立ち入りを禁止するとかって話にもなったわけだし」


「あー。ダメダメ。うちの子の場合、道具なしでつなげちゃうから。そういうことばっかり上手になっちゃって。まあ、それはそれで得難い才能なのかも知れないけど」


 へえ。

 そのヴリムっていう男の子は、フィオナちゃんの下の子なんだって。

 何でも、闇魔法の中でも、ちょっと変わった使い方が得意なんだとか。

 どっちかと言えば、闇狼と言うよりも、プリムとかの使い方に近いらしい。

 気配を消したり、今の話のように、噂ネットワークと直でつながったり、とか。

 というか、コロネも噂ネットワークの詳細については、未だによくわからないんだけどね。

 ライブラリって、あの、図書館のことかな?


「あの、シャーリーさん、噂ネットワークには図書館があるんですか? この町にも図書館があるのでしたら、ちょっと興味があるんですけど」


「あ、ごめんね、コロネ。あたしも詳しくは知らないんだよ。図書館ライブラリってのは、そういう呼び名ってくらいでね。ヴリムの話だと、そういう場所があるってくらいかな。普通の書物とかが置いてある図書館とは少し違うってくらいしかね」


 ちょっと申し訳なさそうに言うシャーリーさん。

 どうも、シャーリーさん、アイテム音痴らしくて、魔道具とかそういうのを使うのは苦手らしい。

 変な使い方をしちゃうんだって。

 いや、変な使い方って何って話なんだけど。

 ただ、その噂ネットワークのライブラリってのは、そういう呼び名の場所ってことらしい。

 場所っていう表現もよくわからないけどね。

 相変わらず、謎だ。


「コロネさん、普通の図書館でしたら、魔王都の王立図書館が有名ですよ。それに、この町にも図書館はありますし」


「えっ!? そうなの、フィオナちゃん!?」


 この町に図書館があるの!?

 え、でも、それっぽい建物とか、あんまり見かけないよね?

 たぶん、コロネも大体の場所には足を運んだと思うんだけど。

 いや、さすがに細かい路地とかは入ってないけどさ。


「ふふ、コロネ。『夜の森』には入れるの? この町の図書館は『夜の森』にあるわよ。一応、メルとかの書いた本とかもあるから、そういう意味では、蔵書の種類についても、一部のジャンルについては、魔王立図書館よりもそろっているんだから」


 この町限定の本とかもいっぱいあるから、とエミールが笑う。

 なるほど。

 『夜の森』に図書館があったのか。

 そういえば、あの森に関しては、中を歩き回った記憶がないしね。

 一応、ドロシーから鍵はもらったけど、それを使って入ったこともないし。


「何でも、ドロシーの管轄でもあるから、『夜の森』の中だったら、魔女の持っている書物とかも置けるらしいのね。それで、図書館の場所がそこに決まったみたいなの」


「あ、なるほど。そういうことだったんですね」


 何だかんだ言って、こっちの世界だと、その手の書物に関しては、魔女さんたちに一日の長があるのだとか。

 幻獣種の集めた資料とか、彼らの話とかを書物にしたものとか。

 そもそも、『学園』の側にあるわけで、そっちの内容とかも更新できるらしいし。

 でも、いざという時に対処ができないとまずいので、それで、ドロシーの管轄下で、ルナルの異界の中に図書館を設置して。

 もちろん、司書さんとか、図書館を管理しているのは、ドロシーじゃなくて、別の人たちらしいけど、いよいよまずいことになったら、そのまま、中の書物を『幻獣島』に転送して、終了って感じらしい。

 いや、転送って。

 サニュエルさんの『トワイライトサーカス』も大概だったけど、やっぱり、幻獣種ってすごいんだね。

 まあ、数少ない、転移とか召喚系が得意な種族らしいし。


 何にせよ。

 図書館の存在が知れたのはうれしいね。

 まだ、この世界の地図とかも見たことなかったし、あと、アランさんたちが作っているモンスター図鑑とかもね。

 そういうのも、蔵書としてありそうだし。


「まあ、図書館の方じゃなくて、噂ネットワークのことでしたら、小兄ちゃんもかなり詳しいみたいですよ? フェンはまだ、使用禁止ですので、見たことはありませんが、ナビさんとか、天使さんでしたっけ? そういう人たちとも仲がいいって言ってましたし」


「そうですね。おそらく、ヴリムは天使さんに興味があると思いますよ。そういう話が話題にあがったりしますし」


「天使さん、ですか?」


 ナビさんもそうだけど、天使さんって何? って感じなんだけど。

 全然、噂ネットワークのイメージがわかないよ。

 ピーニャとかの話だと、検索エンジンとか、ネットの掲示板とか、そういうものの、こっちの世界バージョンだとばっかり思っていたんだけど。

 え? 中に人とかいるの?

 もしかして、そっち系の種族とかもいるのかな?

 電脳の妖精みたいな感じで。


「ま、コロネも自分で見てみた方がいいよ。ここにいるのは、あんまりそっち系は詳しくないのばっかりなんだし。というか、お仕事大丈夫?」


 呼び止めておいてなんだけど、とシャーリーさんが苦笑する。

 あ、そうだそうだ。

 給仕のお仕事の途中だったよ。

 まあ、実演の後は、大分お客さんの流れが落ち着いてきたから、今は意外と余裕があるんだけど、話ばっかりしてると、コロネだけさぼってる感じだものね。

 失敗失敗。


「ふふ、そういうことなら、何か注文しないとね。ちなみに、コロネ。今日はメニューに載ってないけど、アイスとかは置いてないの?」


「あ、一応ありますよ。もう、そろそろ、チケットと交換に来る人も今日の分は締め切りますので、メニューに載せようかなとか思ってましたので」


 今日はパスタがメインだったのと、クエスト報酬との交換に備えていたからね。

 アイスに関しては、プリンよりも日持ちはするけど、やっぱり、あんまり残しておいても味が落ちちゃうからね。

 その辺は、オサムさんとも相談して、デザートメニューを追加する予定だったのだ。

 すっかり日が暮れた後なら、もう大丈夫だし。


「あ、そういうことなら、全員分のアイスを頼むわ。というか、メニューに載せるなら、早い方がいいかもね? 他のお客さんが騒ぎ出しちゃうから」


「そうですね。わかりました、すぐ対応します。アイスの方は少々お待ちください」


 一応、それぞれ、希望のアイスの味を聞き取って。

 そんなこんなで、厨房までアイスを取りに戻るコロネなのだった。

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