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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第6章 町の外への挑戦編
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第358話 コロネ、狼の女子会に顔見せする

「コロネ、お久しぶりね。最近、青空市には足を運んでくれないから、なかなか、直接会う機会もなかったものね」


「あ、エミールさん、いらっしゃいませ。それに、フェンちゃんとシャーリーさんも」


 孤児院のハチミツとか、売ってくれていたエミールさんだ。

 最近は、ハチミツの方は、ピーニャがパン工房用にまとめて仕入れてくれているので、そっちから融通してもらっているんだよね。

 うん。

 確かに、青空市にはあんまり顔を出してないし。

 その辺は、果物の購入ルートに果樹園とかが加わったりしたせいもあるのかな。

 いや、あの、何だかすみませんって感じなんだけど。


 とりあえず、その辺に関しては苦笑しつつ。

 その、エミールさんと食卓を囲んでいるメンバーがちょっとめずらしいかな。

 フェンちゃんと、そのお母さんのシャーリーさん、そして、たぶん、初対面の闇色の髪の女の子だ。

 どことなく、お淑やかな感じで微笑んでいる感じの子だね。

 服装もドレスみたいな雰囲気のもので、ちょっとした貴族のご令嬢? って印象もあるけど、それでも、どことなく、顔とかの表情とかがフェンちゃんとかと似ているのだ。

 ということが、この子がもしかして、ってね。


「はい! コロネさんも相変わらず、お忙しそうで。さっきもプリムさんとご一緒でしたものね」


「ふふ、今日は、エミールを誘って、女子会よ、女子会。というか、フェン、あんた、一応、プリム様には、様を付けなさい。ああ見えて、偉いんだから」


「えー、でも、お母さん。プリムさんから、そういうのは気にしなくていいって言われたけど?」


「そりゃあ、ここが一応、特区だからさ。確かにそこまでうるさ型じゃないし、あんたが子供だから許してくれてるってのもあるんだからね?」


 魔王都とかに行った時も、そんな態度で接してるんじゃないでしょうね? と、シャーリーさんがさすがにちょっと叱る感じで、フェンちゃんに注意する。

 そういう態度をすることで、周りからどう見られるか、って話だと。

 結果的に、プリムにも迷惑がかかるから、ってね。

 まあ、あのメイドさんの場合、ちょっと迫力を出すことで、周辺の空気とかもコントロールしちゃうから、その辺はうまいものらしいけど。

 なるほどね。


 ただ、まあ、このサイファートの町周辺なら、多少は緩くても大丈夫らしい。

 その辺は、先代魔王とウーヴさんとかとの間で、色々あったそうだ。

 とはいえ、その辺は、しつけないといけないとか何とか。

 いやあ、狼さんとはいえ、母親ってのは大変なんだね。

 いかにも、ウーヴさんとか、そういうの適当っぽいし。

 言ってる側から、フェンちゃん、『プリムさん』って言ってるし。


「あはは、まあ、それはそれとして、コロネさん、さっき、ピーニャさんにチケットを渡して、プリンと果物に交換してもらいましたよ。フェンたちが行った時には、もうフレンチトーストが終わっちゃってたみたいで。そうしたら、明日のパンの仕込みをやってたピーニャさんが、今日のプリン教室でも作った料理だって」


「あ、そうだったんだね」


 へえ、ピーニャがプリン・ア・ラ・モードを渡してくれたんだ。

 なるほど。

 あの後、クエスト報酬用のプリンをそういう風にしてくれたんだね。

 フェンちゃんの話だと、他にももらってた人もいたらしいけど。


「はい。おかげで、フェンと、お姉ちゃんで、それを頂きました。お姉ちゃん、まだ、プリン食べたことがないって言ってましたので」


「はい、美味しかったです、プリン」


 フェンちゃんの言葉ににっこり微笑む、横の女の子。

 うん、やっぱり、フェンちゃんのお姉ちゃんか。


「あ、そう言えば、コロネもフィオナと会うのが初めてよね? それじゃあ、紹介するよ、うちの子のフィオナだよ。四人兄妹の上から二番目の子だよ」


「フィオナです、どうぞよろしくお願い致します」


 お噂はかねがね、と穏やかに微笑むフィオナちゃん。

 一応、見た目はコロネよりちょっと年下か、下手をすると同じくらいに見られるかな。

 その割には、フェンちゃんとふたつか三つくらいしか離れてないらしいけど。

 というか、だ。

 随分とお淑やかな感じの雰囲気だよね。

 フェンちゃんとか、ウーヴさんとか、シャーリーさんもそうだけど、他の家族と比べても、しっかりしているって言ったら語弊があるけど、快活な感じよりも、楚々とした感じの印象の方が強いのだ。

 フェンちゃんほど、肌の色も黒っぽいというか、日に焼けた感じじゃないし。

 まあ、肌に関しては、シャーリーさんに似ているのかな?

 ほんとに、言われないと、狼さんだとはわからないよね。

 いや、人型のフェンちゃんも、あんまり狼っぽくはないけどさ。

 

「こちらこそ、よろしくね、フィオナちゃん」


「それと、今更だけど、フェンがいつもお世話になってて、ありがとうね。ふふ、この子ってば、コロネとの訓練の時は楽しそうなんだ。結局、うーちゃんが行こうとしたのを、無理やり奪ったりとかもしてたし」


「えっ!? そうなんですか?」


 いや、それは初耳なんですけど、こっちも。

 あー、それで、ウーヴさんも最初の一回きりだったのかな?

 というか、フェンちゃん、無理やり奪ったりとかできるんだ?

 まあ、その辺は、シャーリーさんが間に入って、説得とかしたみたいだけど。

 そういえば、ウーヴさんのこと、『うーちゃん、うーちゃん』って言い出したのも、出所がシャーリーさんだって聞いたしね。

 今では、エミールさんはもとより、メイデンさんとか、その他色々なところまで広まってしまって困る、ってウーヴさんが愚痴ってたし。


「いや、だって、面白いんだよ、お母さん。コロネさんもそうだけど、ショコラがすごいんだから。さすがは、お父さんが褒めてただけのことはあるよ」


 もう、エレベーターも使えるようになったんだって、とフェンちゃんが朗らかに報告をしているね。

 うん、何だか、こういう雰囲気っていいね。

 仲の良さそうな家族って感じだし。

 フィオナちゃんも、フェンちゃんのことは優しそうに見てるしね。


「いえ、こちらこそ、フェンちゃんにはいつもお世話になってますよ。『影狼』でしたっけ? おかげで、大分、お肉をさばくのが慣れてきましたし」


 というか、あの訓練の後も、話を聞いたオサムさんに『だったら、ちょうどいいものがあるぞ』って、言われて、ちょっと上の方の階層に保管していたらしい、食材を相手に延々とさばくのを手伝わされたりもしたし。

 いや、ありがたかったけどね。

 ただ、この塔の上層階の方の貯蔵庫って、どういうものがあるのか、むしろ興味が出てしまったんだけど。

 さすがに変なものとかはないよね?

 コロネも行ける、下の階の保管庫って、お店ですぐ使える系のその手の食材が多いからねえ。

 たぶん、調味料系とか、熟成が必要なものとかは、上の階にあるんだろう。

 そういえば、一応、竜とか亜竜の素材とかもあるんだっけ?

 さすがに、そっちは話で聞いたことしかないけど。


 ともあれ。

 フェンちゃんの特訓と、オサムさんのお手伝いのおかげで、大分、こっちの世界に染まって来た感じはするよ?

 たぶん、向こうに帰っても、屠畜場とかでも働けるかも、だ。


「あー、それでしたら、コロネさん。お姉ちゃんはもっとすごいんですよ。フェンは闇狼形態の方が得意ですけど、お姉ちゃんは人型の方が得意ですから。『影狼』と言いますか、『影人狼』ですね」


「えっ!? そうなの!?」


 いや、それもびっくりだけど、それって……つまり、そういうことだよね?

 人型の『影』。

 思わず、フィオナちゃんの方を見ると、にっこりと微笑まれてしまった。


「いや、違う違う。フェン、あんた、言い方が悪いっての。フィオナも思わせぶりに微笑まないの。コロネがびっくりするでしょうが、まったく……心配しなくても、コロネ、別に、人間をさばくとかそういう話じゃないからね? 対人戦闘用の訓練って話だよ、まったく、この子たちと来たら」


 そういうところは、うーちゃんに似るんだから、とシャーリー。

 いや、ということは、ということですよね、シャーリーさん?

 あんまりフォローになってない気がするんですけど。


「ごめんなさい、お母さん」


「えー、でも、お母さん。人型の相手を倒すってのは慣れておいた方がいいと思うけど?」


「ええ、それはあたしも同感。だけど、それ以上は、元教会の者としては、許さないよ。相手が犯罪者でもなかったら、いや、犯罪者でもね。あっという間に、カードが真っ黒になるからさ」


 あれ、取り消すの大変なんだから、とシャーリーが真面目な顔で言う。

 あ、カードって、冒険者カードのことか。

 そういえば、前に冒険者ギルドでも、ディーディーさんに説明を受けたっけ。

 というか、シャーリーさんって、元教会の人なんだっけ。


「ふふ、本当よね。相手が襲ってきたら、そんなきれいごとは言ってられないんだけど、あんまり、人化できる相手を殺めたりはしない方がいいわ。その分、世界が狭くなるかも、だから」


 エミールさんがそう言って、苦笑する。

 ふうん、やっぱり、エミールさんも、そういう荒事は慣れている人なんだ?

 そうだよね。

 ひとりで、この町と孤児院とか行き来できるんだものね。

 というか、ちょっと気になったので聞いてみた。


「エミールさんとシャーリーさんって、仲がいいんですよね?」


「ええ、そうよ。シャーリーとは、昔なじみなの。私たち、ふたりとも出身地が同じだから」


「あ、そうなんですか?」


「そう。元はアニマルヴィレッジの出身だよ。あの、自由都市連合の中でも、自警部隊とか、そっち系を担ってた、人狼種の町の出身さ」


 えっ!? あれ? シャーリーさんは人狼種だったよね?

 ということは、エミールさんも?

 そう言えば、種族については聞いたことがなかった気がするけど。


「ふふ、そういうこと。私も人狼種よ。こう見えて、けっこう力持ちなのよ?」


 あー、そうだったんだね。

 だから、あの荷車を身体強化も使わずに軽々と、って感じだったのか。

 納得。


「あはは、ですから、エミールおばさんのうちとは家族ぐるみのお付き合いなんですよ。困った時とか、ごはんとか食べさせてくれますし」


「そうですね。おばさまの家の炭でお肉を焼くと美味しくなりますから」


 フェンちゃんとフィオナちゃんも笑顔で頷く。

 小さいころからお世話になっているおばさんって感じらしい。

 いや、エミールさん、見た目はかなり若いんだけど。

 というか、シャーリーさんも、コロネの一つ上くらいだよね?

 ほんと、狼さんってすごいねえ。

 そう、感心するコロネなのだった。

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