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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第6章 町の外への挑戦編
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第346話 コロネ、無事プリン教室を終わらせる

「スライムの国ですか? はい、ございますよ。一応、『魔王領』の中は全体統治という形ですので、便宜上は国ではなく、統治領のひとつになりますが」


 とは言え、プリムの話だと存在することは間違いないそうだ。

 東大陸の北東部にある、ゼルンベルル。

 それが、スライムがいっぱい住んでいる国の名前だそうだ。


「あそこは、クイーンスライムのゼラティーナが取り仕切っております。世界に多数、粘性種の集落はあれど、あそこほど多彩なスライムが見られる場所は他にありませんね」


「まあ、特殊能力の多彩さって意味では、この町のすぐ近くにある村もすごいけどね。ゼルンベルルに行けば、粘性種がれっきとした進化種族だってことがよくわかるよ。意志も思考も、種族としてもこだわりも、ね。そういうものをきちんと持っているって感じかな。単なるぷるぷるしているだけの種族じゃないからね」


「ぷるるーん!」


 あ、今のアノンの言葉に、横のテーブルにいたショコラも誇らしげに胸を張っているし。

 まあ、そうだよね。

 ショコラだって、コロネよりも早く、エレベーターの使い方を覚えちゃったしね。

 そういう意味では、飲み込みが早いって感じなんだよね。

 スライムだけに、吸収が得意なのかな?

 その辺はよくわからないけど。

 というか、相変わらず、ショコラがスライムなのかどうかもはっきりしないんだけど。

 自分では、そう思い込んでるみたいなんだよね、ショコラって。


 ともあれ。


「クイーンスライム、ですか。キングスライムじゃないんですね?」


「あ、コロネ様、そちらは、スライムの議会の名前です。『キング』とは、合議制のために、スライム同士が一時合体した時の総称みたいなものになります。ですので、今のところ、一番の特殊進化したのがクイーンスライムになるわけですね」


 まったく別物です、とプリムが教えてくれた。

 いやいや、スライムの議会なんてあるんだ?

 しかも、合議制って。

 あ、でも、前にピエロから聞いた時は、スライムって、接触による会話とかが主流なんだって言ってたものね。みんなで合体して、意見集約をしたあと、また分かれるってのが、スライムの議会らしい。

 その方が、直接、アイデアとかもやり取りできるし、会話よりも伝達が早いから時間短縮にもなるんだって。

 確かに、思考伝達の速度って、体内だとかなり早いみたいだしね。

 そのみんなで合体した状態が『キングスライム』か。

 なるほど、納得。

 けっこう、面白いね、スライムさんたちの生態って。


「うん、だから、たぶん、他の種族よりも、粘性種同士の意思統一って早いと思うよ。それこそ、一瞬で会議が終わっちゃうからね。まあ、だらだらと会議で意見をぶつけ合うのって時間の無駄だからねえ。そういう意味では、そっち系にも進化してるよね」


「はい。それに、いざという時は『キング』状態ですと、かなりの攻撃に対する耐性も獲得できておりますしね。そうなると、粘性種も強いですよ? 何せ、『魔王領』の中でも、かなり古くから続いております、伝統のあるエリアでもありますから」


「へえ、スライムさんってすごいんですね」


 一個体が長命かどうかは不明だけど、魔族の歴史上でも、かなりの古株になるそうだ。

 まあ、確かに、生命としてはシンプルだから、最初に生まれそうなイメージではあるよね、スライムさんたちって。

 いや、聞けば聞くほどに、興味深いよ。


 で、そんな感じで、アノンやプリムとスライムの話で盛り上がっている間にも、周りのみんなはプリン・ア・ラ・モードを作って、それぞれで、自由に試食して、楽しんでいたみたいだ。

 あらかた、食べ終わって、お皿の後片付けとかもしてくれているみたいだし。

 うん。

 今日のところは、これでお開きかな。

 後は、コロネたちも、片付けに参加しつつ、その間にも、プリンの作り方でよくわからなかった部分とかを聞いてきた人たちに、色々とコツみたいなものを説明して。

 改めて、持ち運びについてはアイテム袋を使用しないように、再確認して。

 そういうのを一通り終わらせて、だ。


「はい、皆さん、お疲れ様でした。以上で、本日のプリン教室は終了です。また、何か機会がありましたら、お菓子作りの教室を開きますので、その時はよろしくお願いします」


 コロネが締めのあいさつをして。

 参加してくれたみんなが、拍手してくれて。

 そんなこんなで、プリン教室はひと段落となったのだった。





「コロネさん、状況が許せるようになりましたら、『エルモの巣』にもいらしてくださいね。私たちがご案内しますので」


「それまでは、たまに、こっちにも遊びに来るからねー」


「まずは、このプリンを持ち帰って、神獣様に食べてもらうっぴ。話はそれからだっぴ」


 帰り際に、セイレーンさんたちがそう言ってくれた。

 いや、うれしいよね。

 その、神獣さまの許可が下りれば、西大陸にも行けるかもしれないものね。

 しかも、空に浮かぶ島だし。

 やっぱり、天空に浮かぶ島に行くのって、ちょっと憧れるんだよね。

 ちなみに、『エルモの巣』って、嵐の中にあったりしないよね?

 何となく、天空島って、そういうイメージがあるんだけど。


 まあ、それはそれとして、帰り際ついでに、コーヒーについても三人に聞いてみたんだけどね。


「コーヒー……『神々の豆』ですね? それでしたら、『空中回廊』の外周ダンジョンの方で採れるという話は聞いてますね。ですが、あの豆は、神族の方にとっては、特殊な効果がもたらされるということで、持ち出しには、神界側の許可が必要だと聞いておりますよ?」


「あ、そうなんですか?」


「うん、詳しい理由は……なんだったっけ?」


「ちょっと覚えてないっぴね。ただ、神族にとって大切な食べ物だとは聞いているっぴ。そもそも、『空中回廊』でも、外周ダンジョンの厄介なところに生えているって、神獣様も言ってたっぴ。今は、神族たちでも、自分たちでは採りに行けないんじゃないっぴか?」


 え!?

 今のブリの言葉はちょっと予想外だよ。

 神族の人でも『空中回廊』で行けない場所があるんだ?


「たぶん、少量でしたら、神界の方でも育てているとは思いますが……それで貴重品みたいになっていたと思います」


「あ、コロネ、コロネ、ボクからも補足ね。『空中回廊』は、外周と内周の大きく分けると二種類のダンジョンが合わさっているんだよ。で、神族が移動に使っているのは、内周ダンジョンの方ね。そっちだったら、厄介なモンスターとかも出ないし、認証さえクリアすれば、比較的簡単に、神界に行けるから。ボクがこっそり神界に行った時も、内周を使っているからね。一応、『無限迷宮』の冠は、外周に対してつけられたものだから」


「あ、そうなんですか」


 なるほど。

 そういえば、アノンも神界には行ったことがあったんだっけ。

 というか、こっそりって。

 相変わらず、この幽霊さんは、勝手気ままに生きているよねえ。

 ちなみに、神族で移動認証を持っている人に化けて、認証を突破したらしい。

 うん。

 そんなの、ドッペルゲンガーにしかできないからね。


「へえ! アノンは神界に行ったことがあるっぴ? それはすごいっぴね」


「うん、料理に興味を持ったあとで、世界中の色々な料理を食べてみたいなあって思ってね。片っ端から、あちこち行ったから。ふふ、一応、こっそりとだけど、エルモにも会ってきてるからね? 怠け者なのは相変わらずかな?」


 いや、さらっと言ってるけど、かなりすごいことだよね、それ。

 実際、アノンの場合、『模写』で、かなり色々なスキルとか使えるから、本気になれば、移動手段とかも、ある程度は自由に使えるそうだ。

 さすがに、プリムの転移とか、そっち系はそれ相応の制約があるみたいだけど。


「うん、いっつもぐーたらしてるよ。でも、すごいねえ。神獣様って、基本、外からのお客さんにはめんどくさがって、会おうともしないのに」


「ふふふ、まあ、オサムの料理を持って行ったしね。そのおかげかな。けっこう、喜んでくれたよ? というか、それがきっかけで、『ディーヴァ』のサーカス団入りが許可されたんじゃなかったっけ? ボクの前でそんなこと言ってたけど」


「そうだったのですか? いえ、そこまでは、神獣様からもお聞きしておりませんが。確か、突然、勅命が下りまして、それで、当時のメンバーがそのまま、『黄昏のサーカス団』の所属になったはずですが」


 何だか、意外な事実が判明しているような。

 こういう、アノンにとってはちょっとした部分で、色々と影響が出ちゃってるみたいだねえ。

 さすがは、危険生物認定の一歩手前なだけはある。

 このまま、好き勝手に行動させていると、どこまで行くのかわからないもの。

 というか、それって、プリムさんとかも一緒だよね。

 誰さ? この人たちの手綱を持つ人って。

 まったく、おっかないなあ。


「それでしたら、アノンさんからもコロネさんの件を、神獣様に言って頂けませんか? その方がすんなりと事が進むような気がしますよ?」


「あー、ダメダメ。せっかく、コロネが頑張ってるんだから、それじゃ面白くないでしょ。カスティたちにも言っておくけどね。ボクのモットーは『何となく』と『面白半分』だから。こういうのはね、コロネが縁を作って、今のカスティたちみたいに、ちょっと手を貸してもいいかな、って思うからこそ、面白くなるんだから。だから、ダメだよ」


 ありゃ、それは残念。

 今のカスティの言葉は、ちょっとコロネもおっ、って思ったんだけどね。

 アノンとしては、頑張っている人を見るのが好きなんだって。

 手を貸せる部分は貸すけど、手抜きをさせるためには手伝うつもりはない、ってはっきりと言われてしまった。


「それにいいじゃない。そのプリンを持ち帰ってみなって。話はそれからだよ。それでダメなら、コロネが次の方策を考えるといいんだよ。そういう過程が大事なんだから」


「はい、わかりました」


 何となく、今のアノンの言葉って、向こうの店長の言葉に似てるしね。

 やっぱりひとつひとつ頑張るしかないってことだ。

 それに、大分食材も集まって来たしねえ。

 そういう意味では、もっと頑張ろうって感じだし。


「ふふ、はい、アノンさん。でしたら、私たちもプリンを神獣様にお届けするのにとどめておきますね」


「それじゃあ、またね、コロネ」


「また、料理を食べに来るっぴよ」


「はい、本日はありがとうございました」


 そんなこんなで、セイレーンさんたちが帰るのを見送るコロネなのだった。

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