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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第6章 町の外への挑戦編
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第345話 コロネ、プリン教室を見て回る

「おー、美味い美味い。やっぱりプリンは最高だぜ」


「バナナ美味しい! こっちのパイナップルって、初めて食べたけど、甘酸っぱくてとっても美味しいよ!」


「うわっ!? 誰この、チェリーばっかりのやつ?」


「あ、生クリームとプリンって、美味しいですねー」


「何か、色々と乗っけたら、プリンだか何なのかわかんなくなっちゃったなあ。味は美味いけど」


「ん。果物とプリンも良い」


「あれ? リディアさん、最初っからいましたっけ?」


「おー、このプリンアラモード、ですか? これもぐらうまーですねえ」


「うわっ!? 何、この社長の作ったやつ、すごいきれい!? っていうか、それお皿じゃなくて、大きめのコップみたいだけど」


「そりゃあ、コロネが本気出すとこんな感じじゃない? こういう器を使っても、プリン・ア・ラ・モードになるんだよ。ふふ、いっそのこと、モンスターの顔でも、果物でデコしてみよっか?」


「上手にできてうれしいですよ。コロネさん、こちら以外のプリンですが、『上』に持ち帰っても大丈夫ですかね?」


「あー、たぶん、と言いますか、むしろ、試して頂いて、後で教えてほしいくらいなんですけど。そういうことができないのでしたら、塔の営業日に来て頂かないと厳しいですしねえ」


「でも、すごいねえ。ちょっと飾りつけただけで、とっても豪華な感じだよねっ」


「ん、どこにでもいてどこにでも現れる。美味しいものがあるところなら」


「いや、それ、ミケ長老の売り文句ですよね」


「あっはっは。まあ、この天然に何を言っても無駄だって。こういうやつなんだから」


「残ったプリンはどうしようかなあ?」


「俺たちは、ここで食っちまいますよ。下手に持ち帰ると暴動になりますからね」


「そうそう。ンゴロンの町で内乱が起こっちまいます、って」


「あ、けっこう、ここで食べちゃう人が多いんだねえ。私も食べようかなあ?」


「冷蔵庫がうちにもあればいいんですけどね。そうすれば、後でゆっくりと少しずつ味わうことができるんですけど」


「あたしは、家に持って帰るけどね。うちの家族にも食べてもらいたいし」


「うふふ、やったですぅ。美味しく作れたのですぅ」


「そうそう、マリィ、お姉さまたちから伝言。お菓子作りを覚えたら、たまに町に帰って来て、お菓子を作りなさい、って。指令よ、指令」


「いや、あの、アンジュ姉さん。私まだ全然なんですけどぉ」


 ふむ、大分混沌としてきたねえ。

 まあ、みんなが楽しんでくれて何よりだよ。

 本当に、遠くから驚きの声が聞こえてきたけど、いつの間にかリディアもプリン教室に混じってるし。

 あの存在感だから、来たらわかりそうなもんなんだけど。

 気配とか消してたのかな?

 相変わらず、謎なお姉さんだよ。


「って、あれ? ピーニャもいたの?」


「なのです。パン工房が少し落ち着いてきたので、途中からこっそりと混じっていたのですよ」


 やっぱり、料理教室には興味があるのです、とピーニャが笑う。

 いや、それはいいんだけど、下から聞こえてくる声とか聞いていると、まだけっこう人が来てるみたいなんだけど、パン工房。

 本当に大丈夫なのかな?

 また、メイデンさんに怒られそうなんだけど。


「ちなみに、途中参加の方のためにも、わたくしの方で多めにプリンをお作りしておきましたので、そちらをお渡しして、参加して頂いております」


「いや、プリムさんのは自分のためのプリンですよね?」


 何せ、プリムが完成させたお皿には、五つのプリンが乗せられているわけだし。

 プリンタワーというか、何というか。

 四つのプリンを並べて、更にその上にもうひとつプリンを乗せた上で、周りをデコレーションしているというか。

 まあ、予算のほとんどがこのメイドさんのだから、別にいいんだけど。


「いえ、こちらは、あくまでも予備を作りすぎてしまったので、仕方なく、です。せっかくのプリンを残してしまってはもったいないですから」


 誤解しないでください、とプリムが注意してきた。

 いや、まあ、楽しんでもらえれば、どっちでもいいんですけど。

 五つのプリンに心なしか、嬉しそうにしているのが伝わってくるし。


 ともあれ。

 セイレーンさんたちとか、コボルドさんたちとか、遠くからわざわざ来てくれた人たちも喜んでくれたようで何よりだよ。

 一応、カスティには、プリンを『エルモの巣』に持って帰ってもらうようにお願いしてみた。

 それで問題なければ、完成品のお菓子なら、向こうで食べることができるってことになるわけだしね。

 あと、コボルドさんたちはコボルドさんたちで、果物系統が大好きだってことが、よくわかったし。

 道理で課題が果物になるわけだよ。

 さっきも、果物を手当たり次第に盛り付けようとして、それとなくプリムから警告を受けては、尻尾を強張らせていたし。


 と、コロネがそんなことを考えていると、アノンがやってきた。


「そうだ、コロネ。せっかくだから、ぷっちんってできるプリンの容器を作ったりとかはしないの?」


「え? アノンさん、それって、プラスチックの容器ってことですか?」


 ぷっちんってできる容器って、それだよね?

 いや、そもそも、こっちの世界って、プラスチックとかってあるの?


「うん、そうそう。一応、プラスチックを作っている場所とかもあるんだよ。まあ、作っているっていうか、生み出しているっていうか。だから、どうかなって思って」


「え!? プラスチックを作れるんですか?」


 えーと、つっこみどころが色々とあるんだけど、まずそのことにびっくりだよ。

 へえ、ちょっと、いやかなり意外だ。

 こっちって、魔法文明って感じのイメージだったから。


「そうだよ。『魔王領』にある粘性種の国に手伝ってもらって、って感じだけど。コロネは『ドリフトパーツ』ってのは知ってるよね?」


「あ、はい。こっちの世界に流れ着くがらくたですよね?」


 前に、ワルツさんに見せてもらったがらくたが『ドリフトパーツ』だよね。

 たぶん、迷い人の物バージョンって感じだよね。

 こことは違う世界のものが色々と流れ着くって感じで。


「そうそう。だから、当然と言うか、プラスチックでできたものも流れ着いててね。それを粘性種の中でも、ゴミとか、そっち系が好みの種類のスライムたちに食べてもらって、ちょっとばかし、進化を促してみたんだよ。プラスチックの身体を持つスライム、名付けて、プラスライムってね」


 えええ。

 いや、そういうことできるの?

 一応、アノンが言うには、粘性種ってのは環境とかによる多彩進化が売りの種族ってことではあるらしいけど。

 果樹園にいる、樹になるタイプのスライムも、植物系の進化なんだっけ?

 というか、そもそも、スライムの国なんてあるんだね。

 そっちにもびっくりだけど。


「で、そのプラスライムが、プラスチックを生成できるんだよ。もちろん、プラスチックを食べることもできるから、ほらね。これで、リサイクル完了だよ」


「あ、それは便利ですね」


 いや、スライムさんに対して、便利ってのは失礼かもしれないけど。

 なるほどね。

 使い捨てはちょっともったいないかなあと思ったけど、それなら大丈夫かな?

 ただ、プリンを作るなら、もうひとつ問題点があるんだけど。


「でも、アノンさん。そのプラスチックって耐熱ですか? たぶん、そっちの容器を使うタイプのプリンって、ゼラチンとかゲル化剤とか、そっちを使って固めるタイプのものだと思うんですけど」


 今やってるプリンの作り方にはあんまり向かないんじゃないのかな。

 まあ、ゼラチンに関しては、ちょっとずつ前進しているから、もうちょっとで何とかなりそうではあるんだけど。


「あ、そっか。あっちのプリンってゼリーみたいなものなんだっけ」


「はい。あっちは普通のプリンとはちょっと作り方が違うんですよ」


 ケミカルプリンって感じのプリンだよね。

 プリン味のババロアって言いかえてもいいけど。

 まあ、メリットとしては量産がしやすいってところかな。

 味自体も工夫すれば美味しくなるみたいだしね。


「それじゃあ、しょうがないね。さっき周りを見てたら、うまく、プリンを取り出せずに崩れちゃったのも見かけたから、そっちはどうかなあって思っただけなんだけど」


 残念残念、とアノンが苦笑する。


「コロネ様、そのプリンは、今のプリンとは別のプリンなのでしょうか?」


「え? あ、はい。凝固剤って言いまして、固めるための食材を使う必要があるプリンですね。型に温めたプリン液を流し込んで、カラメルも流し込んで、後は冷蔵庫で冷やすだけですね。あんまり加熱しなくてもいいタイプのプリンです」


 厳密にいうと、プリンじゃないけどね。

 ただ、見た目も味もプリンっぽいというか、プリンの味だし。

 牛乳とたまごと砂糖を使ったお菓子の味というか。


「それでしたら、オーブンがなくてもプリンが作れるということですよね?」


「まあ、そうですね。ただ、プリムさん、その分、凝固剤が必要になってきますよ? 今、そちらの方は、ようやく、入手の可能性が見えてきたかも、ってレベルですので、すぐにいっぱい作るのは難しいと思いますけど」


「なるほど。でしたら仕方ありませんね。ちなみに、コロネ様。そちらのプリンの試作は行なうことができますか?」


「はあ、まあ、少しでしたら、何とかなりますかね」


 こっちは、チョコレートと違って、入手方法がある程度は見えているからね。

 そういう意味では、試作ぐらいなら、って感じだ。


「では、近いうちにお願いいたします。そのプリンの味次第では、わたくしからも、その、凝固剤、ですか? そちらの方も入手のお手伝いをいたしますので」


 あ、それはいいかも。

 今、アノンから『魔王領』にも、スライムの国があるって聞いたしね。

 そっち経由で話を進めることもできるかもしれないものね。

 うん。

 ちょっと面白そうだ。


「わかりました。早めに何とかしてみますね」


 そう、笑顔で返事をするコロネなのだった。

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