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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第6章 町の外への挑戦編
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第340話 コロネ、西大陸の話を聞く

「ところで、皆さんが住まれているところって、どういうところなんですか?」


 頼んだとうめしのセットが届くまでの間、ちょっと浮遊群島について聞いてみた。

 いや、西大陸について、かな。

 やっぱり、噂でしか聞いたことがないけど、空に浮かぶ島々ってのは、夢があると思うんだよね。

 これぞ、違う世界って感じで。

 向こうでも、映画とかアニメの題材とかにはなったりするけどね。

 本当に空に島が浮いていて、そこで暮らしている人たちがいるってのは、本当にすごいと思うんだ。

 この町の空を見上げてても、それらしい島みたいなのは見えないし。


「ちなみに、コロネさんはどのくらい、西大陸について知っているのでしょうか?」


「すみません、ほとんど知らないですね。何せ、わたし、迷い人ですし、こっちにやって来てから、十日ぐらいしか経ってませんから」


「え!? 迷い人だったの!?」


「十日だっぴ!? 世界に馴染むユニークでも使ったんだっぴ?」


「いや、さすがにそういうのはありませんけど」


 何だか、三人に、特にポーラとブリのふたりには衝撃だったらしく、まじまじと見られてしまった。

 あ、どうでもいい話だけど、三人から愛称で呼んでもいいとは言われたので、カスティ、ポーラ、ブリって感じになっている。

 コロネ的にはブリっていうと、お魚のイメージだし、短縮形って確か、ビディのような気もするんだけど、その辺は、向こうとはちょっと違うって思った方がいいのかも知れないね。

 ま、あんまり深く考えてはいけません、ってね。


 さておき。

 やっぱり、何で、十日かそこそこで、世界規模でのプリン教室を開いているんだって話になったんだけど、いや、その辺は、この町とか、この町とか、この町のせいとか。

 後は、純粋に、本気になったプリムのせいなんだけど。

 元々は、ギルドに入ってくれた人というか、プリンが好きな人たちに喜んでもらえるように、って感じだったのに、どんどん話が大きくなっちゃったわけだし。

 うん。

 別にコロネがどうこうしたわけじゃないよね、これ。


「と言いますか、馴染むスキルなんてあるんですか?」


「聞いたことはないっぴが、洗脳系のスキルとかだっぴ?」


「いや、ブリ、それ、この町じゃ無理でしょ。害のあるスキルへの耐性の強い人ばっかりだもん」


「あー、それもそうだっぴね。いやあ、すごいだっぴね」


 何だか変に感心されてしまったけど。

 まあ、知らない町に行って馴染むのって、これが最初じゃないしね。ここだと、言葉が翻訳される分、まだまだ楽な方だと思うし。

 オサムさんとかもいたしね。


「ふふ、すごいですね。まあ、それはともかく、コロネさんは西大陸についての知識はほとんどないって思ってよろしいんですね?」


「はい。神界とか、浮遊群島とか、そういう単語ぐらいですね」


 一応、普通じゃちょっと行けない場所に神界があるってことぐらいかな。

 後は、サーカスの副団長のピースさんが今、そっちを巡っているとか。

 細かい地理とか、どういう種族が住んでいるのかはさっぱりだよ。

 いや、それに関しては、中央大陸も『魔王領』も南の『幻獣島』もおんなじだけどさ。

 そもそも、この町の周辺だって、最初に飛ばされてきた時以来、歩いたこともないしね。

 近くの地形とかどうなってるとかもさっぱりだ。

 うん。

 よくよく考えると、何にも知らないよね、コロネって。

 そう言うと、カスティが頷いて。


「わかりました。では、簡単に西大陸についてご説明しますね。まず、そもそも『西大陸』と呼ばれる名称ですが、これがそもそも俗称です。今は、西大陸には大きな大陸は存在しないと思ってください」


「え!? そうなんですか!?」


 いや、それは初めて聞いたよ。

 そっちの方には大陸がないの?


「はい。元々は大きな大陸が存在していたそうなのですが、今は、ちょっとした災害と言いますか、天変地異、ですか? それによって、かつてあった大きな大陸は海の底へと沈んでしまっております。今でも、その廃墟は海の底に残っているそうですよ」


「そうそう。だからね。中央大陸や『魔王領』みたいに、どーんと、大きな陸地があるんじゃなくて、『上』も『下』も大小さまざまな島ばっかりがあるの。それが、『西大陸』って呼ばれてるところかな」


「もっとも、『西大陸』って呼称も、この町がある大陸を基準に作られた俗称だっぴ。西大陸のさらに西側には、まだ現出したエリアがほとんどないので、そういう風に呼ばれているだけだっぴ」


「はい。ですから、私たち住むものにとっては、浮遊群島とか、そちらの名前の方が一般的ですね。私たちはサーカスなどで、他の大陸に顔を出す機会もありますので、西大陸という呼び名に慣れていますけど」


 なるほど。

 まあ、そうだよね。

 どこから見て西か、って話だものね。

 一応、その、現出というか、存在してつながっているエリアを基準にして、世界を把握しているせいか、そのため、暫定的に、この大陸が『中央』ってことになっているらしいけど、もしかすると、外側にも、別の大陸とかが広がっている可能性もある、と。

 今のところは行き来が難しいので、その辺は触れていないみたいだけど。


「一応、『上』と呼ばれているのが、浮遊群島ですね。それに対応して、陸にある島々を『下』と呼んでいますが、こちらは、島によって住む種族も、環境も様々ですので、ひとまとめでの呼び名がありませんね」


「ちなみに、神界も浮遊群島の中にあるんですか?」


 ちょっと興味があるので聞いてみた。

 神界は無限迷宮の『空中回廊』を通らないと行けないって話だしね。

 その響きから、空にあるってイメージだったんだけど。


「いえ、神界は、浮遊群島の更に『上』です。ですので、純粋に『神界』と呼ばれていますね。浮遊群島の中心にある浮島と神界を結ぶ、上に伸びたダンジョンが『空中回廊』です」


「へえ、そうなんですか」


 浮遊群島の中心、か。

 あれ?

 中心って、どういうことだろう?

 浮島が色々と浮かんでいる、それらをまとめて、浮遊群島でしょ?


「あ、コロネ。浮遊群島って、一か所にとどまっているわけじゃないの。一年かけて、とあるルートを回遊するっていうのかな。浮かんでいる場所がまったく変わらないのは、一部の島だけだよ」


「なので、回遊する島々をまとめて、浮遊群島って呼んでるんだっぴ。当然、その中央付近にある島は動きがゆっくりだっぴ。『空中回廊』はその、島々のど真ん中にあるんだっぴ」


「あ、なるほど」


 そっかそっか。

 地球の公転周期みたいなものか。

 太陽が『空中回廊』で、そこを中心に、周りの島がぐるぐると回っている感じなんだね。一応、一年で一回りって感じらしいけど、中には変な島とかもあって、ルートからはぐれたりしているのもあるらしい。

 詳しい理屈はよくわかっていないんだって。


「ええ。ですから、浮遊群島の地図、というものは存在しません。多くの島は常に位置を変えていますからね。私たちの住む『エルモの巣』は例外の島のひとつですが」


「例外、ですか?」


「そうだっぴ。神獣様の力で場所が固定されているんだっぴ。なので、『空中回廊』と並んで、浮遊群島の中では、目印みたいにもされてるんだっぴ」


「うん、後は、交易のお手伝いとかね。『ディーヴァ』が生まれたのも、サーカスが最初ってわけじゃなくて、色んな人が島までやってくるからってのもあるよ」


 娯楽娯楽、とポーラが笑う。

 セイレーンの歌姫たち。

 その、『エルモの巣』での、取引材料のひとつって感じらしい。

 ちなみに、浮遊群島の中でも、『エルモの巣』は他の島よりは、ちょっと高い位置にあるらしい。

 それで、島々の回遊の際、目印みたいになっているのかな。

 浮遊群島の中でも割と目立つ島って感じだね。


「まあ、元々は、と言いますか、今も、私たちは神獣様の巫女ですけどね。神獣様こそ、歌がお好きな方でしたので、それで、捧げもののひとつが歌だったわけです」


「へえ、歌が好きなんですね?」


「はい。私たちが『風の民』となったのも、かつて、沈んだ大陸で生き残ったご先祖様たちに、神獣様が手を差し伸べられたから、と聞いております。ご自分の能力の一部を、ご先祖様たちに分け与えてくださって、そのおかげで、飛行系のスキルが得意な種族となったそうです。ですから、私たち、セイレーンにとって、神獣様は命の恩人というわけですね」


「まあ、当時の話だと、神獣様も、気まぐれで人手が欲しかっただけ、って話も伝わっているんだっぴ。大陸が沈んだ時に、たまたま、近くにいた人間種を眷属化した、っていうだっぴか?」


 まあ、お仲間が増えてうれしいだっぴ、とブリがにこにこしている。

 どうも、神獣って響きからすごそうな感じだったけど、コロネが想像している以上に、人間臭いというか、気分屋って感じらしい。

 割と、セイレーンさんたちも、ヘブンスワンさんたちも振り回されているというか。


 ただ、当然、感謝はしているとのこと。

 なるほどね。

 人魚さんたちと違って、どうして、人間種から進化したのか、はっきりしているんだね、セイレーンさんたちって。

 元々は、本当の西大陸で暮らしていた人たちの生き残りってわけか。

 今は代を重ねて、すっかり、空の住人って感じらしいけど。


「ちなみに、ブリさんも眷属ということは、その神獣様という方は、神の鳥って感じの方なんですか?」


「細かい種族とかは知らないだっぴが、普段の見た目は真っ白くて大きな鳥だっぴ。もっとも、たまに人化とかもしてるので、それが本体かは不明だっぴが」


 その神獣様って、眷属にとっても謎が多いのだとか。

 そもそも、自分のことをあんまり教えてくれないようだし。


「ただ、すごいんだよ、神獣様。『あー、そろそろ、嵐が来るんで、結界封鎖ー』とか、『あと三日後に侵略者が来るんで、対策よろー。いざとなったら、出ていくけど、寝てるから起こさないでねー』とかね。普段は気分屋のダメな神獣様だけど、本気出せば、未来予知とか、治癒とかもできるし」


「えーと……なるほど」


 うん、そのポーラのものまねがどこまで似てるのかわからないけど、今までに思っていた神獣のイメージががらがらと崩れていくというか。

 能力自体はすごいらしいけど。

 なんか、それを聞いてると、この町に遊びに来る人たちに似てるなあ。

 能力はすごいんだけど、クセがある、というか。


 そんなこんなで、セイレーンさんたちの話は続く。

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