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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第6章 町の外への挑戦編
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第337話 コロネ、プリン教室の参加者とあいさつする

「じゃあ、これで全部だね。会計の方は『プリンクラブ』で精算でいいんだね?」


「はい。そちらでお願いいたします、ペリー様。もちろん、精算書類の方もこちらまでお願いしますね」


「了解了解。なら、いつものところに回しておくよ。まいどあり」


 これからもご贔屓に、とペリーさんは豪快に笑って、去って行った。

 というか、窓からコロネたちも飛び立つのを見ていたんだけど、途中から、スピードをあげたかと思うと、突然、その大きなプテラノドンの姿が見えなくなってしまったのだ。

 あれは、ちょっとびっくりしたんだけど。


「うん、あれが、ペリーさんのスキル『光学迷彩』だね。一応、即配便に関しては、町の上の飛行ルートが決まっているからね。だから、姿を隠してもいいってことになってるんだよ。さすがに目立つしね」


「へえ、そうなんですか」


 アノンの説明にもびっくりだ。

 いや、『光学迷彩』って。

 まあ、光魔法でも同じようなことはできるらしいんだけど。

 そっちは、メイデンさんとかの方が詳しいかな。

 というか、姿が見えなくなるのもすごいけど、このサイファートの町って、空を飛ぶ時のルートとかもしっかり決まっているんだね。

 それは知らなかったよ。


「そりゃあね、好き勝手に飛行系のスキルを使ったら危ないじゃないの。この町で空を飛ぶためには免許がいるんだよ。商業用のルートとか、緊急時に空けないといけない空域とか、そっちをしっかり覚えて、って感じかな。後は、飛行能力のチェックで、どのくらい自在に動けるか、とかね。そういうのをクリアしてようやく、空を自由に飛べるようになるんだよ」


 なるほど。

 空の交通免許って感じなんだね。

 詳しくは、飛行系のスキルを覚えてからの話らしいけど。


「まあ、そもそも、この町って、結界より外には行けないからな。レーゼの婆様の樹の高さくらいが限度だぜ? 一応あれが基準だからな」


「いや、オサムさん。レーゼさんってかなり高いんですけど……」


 町の大きさを考えると、あのくらいの高さでも十分すぎると思うけどねえ。

 正直、コロネも前に、プリムに上空に連れていかれたけど、『浮遊』スキルとはいえ、やっぱり足場も何もない高いところってこわかったもの。

 あー、地面が落ち着くというか。

 うん。

 やっぱり、コロネは空の住人にはなれなさそうだ。


 閑話休題。


 ペリーさんのおかげで、追加の果物が届いたので、それを各テーブルごとに準備していくのだ。

 アキュレスさんは、まだお仕事が山積みらしくて、いつの間にか帰っちゃったけど、それ以外の、ここにいる人たちは、準備のお手伝いをしてくれている。

 リリックやマリィたちは言うに及ばず。

 特に、プリムさんのやる気っぷりには、ものすごいものがあったし。

 やっぱり、普段はクールビューティーって感じだけど、その仕事っぷりは歴戦のメイドさんって感じだよね。

 あっという間に、準備が整っちゃったし。


 そうこうしているうちに、順調にお客さんが、というか、今日のプリン教室の生徒さんたちが姿を現してきた。

 様子を見に来た、って、商業ギルドからボーマンさんとテトラさんが来てくれたし、うさぎ商隊さんからも、カレンデュラさん、マレインさん、リコリスさん、その他数名という感じで参加してくれている。

 一応、パン工房のアルバイトや小麦粉作りには参加していないメンバーが来てくれたらしい。

 冒険者ギルドのドラッケンさんは、ディーディーさんが怒っているから不参加。

 後は、果樹園組ではガーナとか、料理人のバーネットさんとかも来ているね。

 他にも、ドリアードさんっぽい人もいるから、もうちょっと関係者がいるのかも知れないね。

 いつの間にか、パン工房の取材に行ってたリッチーたちも戻って来てるし。

 後は、この町なら、お店の営業とか、ドムさんのお店とかで見かけた人も来ているから、たぶん、普通の冒険者の人とか、魔族の人とかもいるんだろう。


 すごいねえ。

 色々な人が『プリンクラブ』に参加してくれているんだね。

 コノミさんのお店で会った妖怪さんとかも来てるし。

 

「うわ、やっぱり、けっこう参加者が多そうですね」


「はい、コロネ様。ですが、もう少し増えますよ? 少しずつではございますが、サイファートの町の外から参加頂いた方々もお見えになっておりますし」


「あ、ほんとですね。コボルドさんたちも来てますし」


 さっきも、翼人種さんたち……セイレーンさんだね。

 彼女たちから、コロネも直接あいさつされたのだ。

 セイレーンのカストリアさんとポーラックさん。

 それに、ヘヴンスワンと呼ばれる、白鳥みたいなモンスターのブリジットさんだ。

 ブリジットさんだけは、鳥型モンスターの姿のままだけど。

 今日は、面白そうだから、セイレーンさんたちにくっ付いて見学に来たのだとか。


『今日はよろしくお願いいたします、コロネさん』


『ポーラ、頑張るよー』


『ブリジットたちの町でも、ここの料理は興味深々なのだっぴ。だから、カスティとポーラと一緒に来たんだっぴ』


 一応、しっかり者なのが、カストリアさんで、ちょっとアホな子がポーラックさんで、『巣』一番の情報通がブリジットさんなのだとか。

 いや、アホな子って何って感じだろうけど。

 そう、自己紹介されたんだから仕方がない。

 歌の才能はすごいんだけど、それ以外はからっきしとか何とか、そんな感じらしい。

 まあ、よくわからないけど、プリンに興味があるなら、問題ないんだけどね。


 あと、コボルドさんたちに関しては、プリムさんからも紹介された。

 コボルドの合唱団にも所属しているリグルドさんとガルニさん。

 今日のところは、あんまり参加人数が多すぎてもまずいので、ふたりだけみたいだけど。

 いや、それはいいんだけど、むしろ問題なのが、コロネに対する態度だ。

 だってさ。


「今日はよろしくお願いします、コロネの姐御」


「希望者は多かったんですが、プリム様に注意されまして。リグルドと俺だけの参加となりましてね。コロネの姐御の料理でしたら、審査の時に食べられるってことですしね」


 それで、みんな我慢してますんで、とガルニが笑う。

 というか、だ。


「いや、姐御って……。なんですか、それは?」


 さすがに、どう見ても、年上っぽい感じ人に姐御って言われるのはちょっと抵抗があるんだけど。

 何で、こんなことになってるんだろう。

 いやまあ、コボルドさんたちの年齢とかわからないけど、雰囲気的に、だ。


「もちろん、プリム様を従えている御仁ですから。俺らにとっては、姐御です」


「いやあ、あの、プリム様が舎弟の身に甘んじておられるとは。ただただ、尊敬の一言ですよ。すごいなあ、って」


「ええ。わたくしは、コロネ様のプリンの奴隷ですから」


「いや、ですから、誤解を招く表現はやめてくださいよ、プリムさん!」


 いや、あの、その手の羨望の眼差しとか勘弁してください。

 というか、プリムさんも悪乗りしないで。

 今のノリを楽しんでるでしょ。

 意外と、このメイドさん。表情に出さないだけで、かなりノリがいいんだよね。

 ただ、それを額面通りに受け取る人もいるわけで。

 この辺で、やめさせておかないと、本当にシャレじゃ済まなくなりそうだ。


「はは、コロネ、コボルドって、上下関係が厳しい種族だからね。長のボルダより偉いプリムが、頭を下げてる以上は、そうなっちゃうんだよ。直接の上下関係はないんだけど、その辺は、どうしても、ね」


 楽しそうに、アノンが笑って。

 コボルドのふたりも、それに頷いて。


「ええ。自分の立ち位置をわきまえるってのが、コボルドの美徳でして」


「まあ、ご勘弁ください、って」


 まあ、あくまでも、コロネが偉いっていうよりも、プリムに対する敬意の方が強いんだろうけどね。

 犬頭の種族ってだけに、そういうのは厳しいのかな。

 どっちかって言えば、任侠って感じの雰囲気だけど。


 まあ、そんなこんなで、ふたりにもよろしくと、あいさつして。

 後はまあ、巨人種の人たちは、果樹園経由でいいって話みたいだし、『ドリファンランド』から小人種の人たちも来る予定だったんだけど、そっちは、急に入ったお仕事でいそがしくて、ダメになっちゃったんだって。

 うん。

 ちょっと残念だ。

 せっかくだから、会ってみたかったんだけど。

 前に見た小人さんって、大食い大会で司会をやってたピッケぐらいだし。


 後は、プリン教室とは関係ないんだけど、『竜の牙』の人たちが、プリンとか、オサムが作ったスープを取りに来てくれたことかな。


『今日は、スライムの村に行ってくるよ。プリンに関しては、コロネさんから買うから、今日のところは、そっちを優先するさ』


 アランさんがそう言っていた。

 プリンの作り方を習うより、しっかりとお客さんとして、買わせてもらうって。

 それに、コロネにとっても、スライムさんたちとの交渉は重要だしね。

 今朝作っていた『お試しメニュー』の方も何とか、固まったし。

 これで、『粘粉』イコール、ゼラチンで間違いないって感じだし。

 こうなった以上は、入手に関して、アランさんたち『竜の牙』の協力が不可欠なわけで。

 しっかりと、よろしくお願いしておいた。

 ふふ、うまく行くといいなあ。


「コロネ先生、そろそろ時間じゃないですか?」


「うん、そうだね。ちなみに、プリムさん、これで皆さん、大体揃いました?」


 リリックに頷きながら、周りを見渡すと、百人よりちょっと少ないかな、くらいの人たちが、それぞれ着替えて、案内されたテーブルへとスタンバイしているのが見えた。

 追加分の果物も、まだ余裕がある感じだね。


「そうですね。さすがに遅く来る方はいらっしゃらないと思いますので、もう、始められてもよろしいかと」


「わかりました」


 あんまり待ってもらうのも悪いしね。

 それじゃあ、プリン教室を始めようか。

 そんなこんなで、集まってくれたみんなの前に立つコロネなのだった。

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