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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第4章 パンとサーカス編
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第154話 コロネ、召喚獣の検証を試みる

「ちなみに、ショコラは今の状態でも、チョコレートを作ることができる、の?」


「どうなんでしょうね? ショコラ、できるかな?」


「ぷるるーん! ぷるるるっ!」


 メイデンとコロネ、ふたりに見つめられて、ちょっと困ったように、顔の部分だけ伸ばして、よくわからない、という感じで傾げるショコラ。

 うーん、ちょっと無理なのか、こっちの言っていることが通じていないのか、はっきりとはわからないね。

 というか、少しずつ、身体を使った表現が器用になってきている気がする。

 もしかして、ショコラって、こっちの反応とかも見てるのかな。


「……ちょっと、よくわかりませんね。さっきチョコを出してくれた時は、たまたま、意志疎通ができていただけって感じですかね?」


「そう……となると、少し別のアプローチから進めていこう、か。コロネ、さっき出したチョコレートはまだ、残ってるよ、ね?」


「はい。一応、チョコ箱にしまってますよ」


「うん、だったら、それをショコラに与えてみよう、か。それでどういう感じになるのか、チョコレートモンスターがチョコを食べるとどうなるか、そこから見ていこう、ね」


 あ、なるほど。

 メイデン曰く、食べ物を与えると、ショコラが大きくなるのか、それについてのチェックをしていくとのこと。何を食べてもいいのか、それとも、大きくなるのには何か条件があるのか。

 まあ、これについては、今だけじゃなくて、今後も同様のアプローチを続けていくって感じになりそうだけどね。


『ふむ、何というか、共食いだな』


 ウーヴの言葉に、コロネも何となく頷く。

 チョコレートでできたモンスターがチョコレートを食べるのって、何となく、変な感じがするよ。

 何だろう、この、エンドレスな感じは。

 上手く行ったら、チョコレートを出しては食べて、出しては食べて、延々と無限に続きそうで、ちょっと怖い。

 ともあれ、試してみない手はないので、メイデンの手のひらに載っているショコラの口元へとチョコレートを近づける。

 これ、食べるのかな?


「ぷるるっ! ぷるっ!」


 あ、食べた。

 何というか、見ている三人の気持ちとか、一切関係なく、ごく普通に食べるね。

 空気を読んでいるのか、読んでいないのか。

 少なくとも、ショコラが大物なのは、間違いなさそうだ。


「食べた……ね。あ、コロネ、ちょっと見てみて」


「あ、ほんとだ。すごいですね。あれ? フレンチトーストとか、他の物の時は、こんなにはっきり大きくなりましたっけ?」


 一口大のチョコをふたつ食べただけなのに、ごっくん、というか、飲み込んだのか消化したのか、よくわからない音と共に、ショコラのぷにぷにした身体が、ほんの少しだけ大きくなるのが、はっきりとわかった。

 あれ?

 さすがに、こういう反応があったら、気付いたと思うんだけど、おかしいな。

 パンとか、アイスを食べた時は、別に大きくなるって感じじゃなくて、後々でいつの間にか大きくなっていた、と言うか。

 いや、違うかも。単にコロネが気にしていなかっただけかも知れないけど。


「そうだ、ね。わたしは向かい側の席で、ドロシーがフレンチトーストを食べさせるのを見てたから、ね。うん、そういうことがあったら、さすがに気付いたと思う、よ?」


「やっぱり。ということは、これはちょっと特殊なケースってことですかね?」


 フレンチトーストやアイス、それらと、チョコレートそのものでは食べた時のショコラの反応に差があるってことも考えられる。

 そう言うと、メイデンも頷いて。


「うん、まず、考えられるのは、その一、『ショコラにとってチョコレートは特別な食べ物である』。その二、『単に、さっき食べた別のものがたまたま今消化されただけ』。つまり、さっきのフレンチトーストが原因である可能性、ね。その三、『これはショコラのスキルによるものである』。今さっき、わたしとコロネで能力を使うように促したから、それが原因で、ショコラが意識して発動させてしまった、か」


 ふむふむ。

 やっぱり、メイデンは視点が鋭いなあ。

 コロネみたいに、あっさり、チョコレートが原因って決めつけないものね。


「あと、その四、『それらとは一切関係なく、時間経過によって、チョコの量が回復する』。これは、コロネのチョコ魔法からの考察、ね。一日で使用限界がリセットされるのか、あるいは、ちょっとずつ回復していっているのか、それについては検証してなかったから、ね。その五、『今挙げたいずれのケースにも該当しない』。ひとまず、以上、ね」


『ちなみに、メイデン、貴様はどの可能性を疑っているのだ?』


「うん、まあ、普通に考えると、一番だよ、ね。やっぱり、フードモンスターは、自分と同じ食べ物を食べると何か影響があるって考えるのが自然だ、よ」


 ショコラもしゃべれないし、今のだけだと情報が不足してるけど、とメイデン。

 まあ、そうだよね。

 さすがにこれ一回だけで、あっさり判明しそうにない。

 この件については、今後も食べ物を食べさせることで、保留かな。


「それじゃあ、ちょっと大きくなったわけだし、今の状態でもう一度、試してみよう、か。ショコラ、チョコレートを出すことってできる、の?」


「ぷるるーん! ぷるるっ!」


「あっ、すごい、ショコラ。さっきよりちょっと少ないけど、これ、チョコだよね」


 メイデンが促したのと、ほぼ同時に、ショコラが頷いて、足元の方が光ったかと思うと、ぺりぺりっとはがれて、チョコレートになった。

 はがれたのは、さっきとは別の部分だ。

 今度は、あんまり大きさは変わっていないかな。

 心もち、ちょっとだけ小さいかも、って感じだ。

 さすがに、ぷるぷると震える、形状の変わるお餅みたいなのの体積を、見た目で見極めるなんて、そう簡単にはいかないものね。

 冷静に考えると、大きさが違うって、何となく気付くには、けっこうな反応がないとわからないだろう。


「コロネ、これはさっきよりも少ない量な、の?」


「はい。補足すると、さっきは頭とお腹のところがはがれた感じでしたね。今は足元ですから、はがれ落ちたのは違う場所です」


「なるほど、ね。となると、今食べたチョコレートのせいなのか、ちょっと判断が難しいか、な。ちなみに、今出したチョコレートって食べられる、の?」


 そう聞きながら、メイデンがはがれたチョコレートの欠片をショコラに差し出す。

 あ、やっぱり食べた。

 だけど、今度はこれといって、はっきり大きくなったのか、わからなかった。

 というか、今ので、ショコラが「ぷるっ!』とゲップのようなものを出した。

 あー、これでお腹いっぱいってことかな。


「ショコラ、もうお腹いっぱい?」


「ぷるぷるっ!」


 コロネの問いかけに、うんうんと頷くショコラ。

 つまり、これ以上の検証は難しいってことだろう。


『ふん、どうやら、無限に食べて、出して、と繰り返せるようではないようだな。当たり前の話だが』


「ですね。そういえば、メイデンさん。ショコラってフレンチトーストをどのくらい食べたんですか?」


 コロネは直接食べているのを見てなかったから、量についてはわからないのだ。


「たぶん、四切れか五切れ分は食べてると思う、よ」


「つまり、ぐるぐるフレンチトーストの四分の三枚前後ってとこですか」


 いや、あれ、一枚あたりがけっこう大きかったよ。

 ショコラの身体だと、自分の大きさに近い量を食べちゃったってことか。

 うん、それは食べ過ぎだね。


『おい。さっきから気になっていたのだが、その、ふれんちとーすと、というのは何だ? それも新しい食い物なのか?』


「うん、コロネが今日試作した、白パンを使った料理、ね。白パンの内側を使ったのと、パンの耳だけの二種類があって、どっちも美味しい、よ」


『な!? おい! このちびすけはそれをそんなに食べたのか!? というか、店で売り尽くしたのではないのか? だったら、俺にも、もう少し、白パンの料理を持ってこい!』


「いや、うーさん、白パンのサンドイッチも食べたでしょう、に。それに、今残っている分は、コロネが明日、オサムさんのお店で出す用だ、よ。今日のはあくまで味見程度の試作品で、本当は作るのに一日必要なんだって。どうしても、って言うなら、明日まで我慢だ、よ。ね? コロネ」


 そもそも、今チョコレートももらったでしょ、とメイデン。

 まあ、一応は倉庫に行けば、さっき漬けたぐるぐるフレンチトーストの残りがあるから、そっちは焼けるんだけど、暗にメイデンが、今戻ると訓練ができないと、こっちを見ているのだ。

 仕方ない。

 今日のところは、我慢してもらうしかないよね。


「すみません、ウーヴさん。次の訓練の時は、フレンチトーストをいっぱい用意しますので、それで許してもらえますか? 一応、明日お店に来て頂ければ、お出しすることも可能なんですけど」


 言いながら、さすがにウーヴが来店できるかと言われると正直、よくわからない。

 その辺りはどうなんだろうか。


『ふん、わかった。ここは貴様の顔を立てておこう。次の訓練の時で構わんぞ。正直、オサムの飯は美味いが、店の営業には顔を出したくはないのだ。会いたくもない奴が何人かいるからな』


「そういえば、うーさん、いつも、ジルバさんに料理を届けてもらってるもの、ね。本当はお店の方が、できたてを提供できるって、オサムさんも言ってた、よ?」


『だが、それはなし、だ。俺が来店すると、色々と迷惑がかかる。これでも、俺も闇狼の誇りというものがあるのでな』


 何だか、よくわからないけど、ウーヴにもお店に来店できない事情が色々とあるのだそうだ。

 まあ、確かに、その姿で来店となると、他のお客さんもびっくりしちゃうかな。

 いや? メイデンを見てるとそうは思えないんだけど。

 やっぱり、別の理由があるのかな。


『おい、今は俺の話より、そのちびすけの話だろ。ひとまず、検証はこれで中断ということでいいのか? メイデンよ』


「うん、そうだ、ね。ショコラもまだ生まれたてだし、いきなりだとかわいそうだから、このぐらいにしておこう、か。まだまだ不明なことが多いってところだ、ね。ふふ、それじゃあ、コロネ、覚悟の方はいいか、な? 今日の訓練を始めるよ。うーさんもいるし、昨日よりちょっとハードだけど、ね」


「はい! よろしくお願いします」


 うわ、メイデンがちょっと楽しそうだ。

 返事とは裏腹に、実はかなり緊張しているんだよね。

 何とか、無事に訓練を終えることができますように。

 そう、願うコロネなのだった。

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