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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第4章 パンとサーカス編
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第153話 コロネ、チョコ魔法の検証に入る

「ちなみに、今さっき出したチョコレートって、コロネが持っているので全部な、の?」


「はい。わたしが魔法で出したのと違って、形とか大きさはバラバラですけど」


 いざという時、使えるようにチョコレートは小さな小箱に入れて、ポケットに忍ばせているのだ。先程、手に入ったチョコレートもそこに入れている。

 さすがに、床に落ちてしまった分は、魔法用に分けてあるけど。


「うん、わかった、よ。それじゃあ、まずはコロネのチョコ魔法の検証か、な。ショコラがいる状態で、魔法が使えるかどうか、試してみて」


「はい、わかりました……『チョコ魔法!』って、うわ!?」


 いきなり、クラクラっと来た。

 これは、以前も感じた、使用限界に引っかかった状態だよね?

 あ、というか、今日はもうショコラを召喚するので、すべて使い切っちゃってるから、そもそも、もう使えないんだ。

 今頃、気付いたけど。


「あー……メイデンさん、今日はもうダメっぽいですね。ショコラを召喚したのも、今日ですもの。限界に引っかかって使えないのか、ショコラがいるから使えないのか、どっちなのかよくわかりませんよ」


「うん、そうかもしれないけど、改めてひとつひとつ試していくのが大事だから、ね。当たり前のこともやってみて、もし偶然、違うことにたどり着いたら、しめたものって思わないと、ね。こういうのは積み重ねが大事だ、よ」


 なるほど。

 検証って、面倒くさいんだね。

 まあ、ひとまず、コロネのチョコ魔法については棚上げだ。

 明日は、塔の営業があるから、訓練は中止なので、月の日に試す感じかな。

 いや、明日試しても、別にいいのか。その辺は状況次第ということで。


『ちなみに、そっちの欠片のチョコレートも喰えるのか?』


「はい。さっき味見してみました。味はほとんど同じチョコレートですね。あ、いや、少しは違いますかね。苦みとか、甘味のバランスとか。向こうのお店で出していたチョコレートのひとつではありますけど」


 ウーヴに説明しながら、ふと思う。

 そういえば、チョコ魔法って、レベルアップしていくと、種類や量が増えていくって、説明に書いてあったよね?

 何をもってレベルが上がったのか、よくわからないけど、コロネやショコラが頑張っていくと、他の種類のチョコレートとかも出せるようになるのかな。そのうち、カカオ豆とか出せないだろうか。

 今後はイメージとかも含めてチャレンジしてみよう。


「そうですね、わたしも食べましたし、こっちの新しいチョコの味見をしてみます? まあ、せっかくですし」


『いいのか? そういうことなら、喰わせてくれ。今度は不意打ちではないから、ゆっくり味わってみたいのだ』


「コロネ、わたしももらってもいいか、な? 微力ではあるけど、味見で協力できると思う、よ」


「わかりました。はい、どうぞ」


 少し大きめの欠片をウーヴの口に入れて、それとは別の欠片をメイデンに渡す。

 というか、ウーヴさん、物を食べている時はものすごい穏やかな顔になるよね。本当に狼としての迫力がなくなって、犬っぽくなっているというか。

 取り繕っているように見えるけど、尻尾の動きとか、あんまり見ちゃいけないんだろうね。さっきもそういう弄られ方は嫌がってたし。


『やはり、美味いな! 味わい深い。正直、俺に肉よりも美味いかも、と思わせるのは大したものだぞ。ふむ……やはり、二度目となると、はっきりとわかる。これはわずかだが、魔素を含んでいるな。量が小さいので何とも言い難いが、貴様ら人間なら、俺よりも魔力やその他の回復が見込めるのではないか?』


「あ、そうかも、ね。味に集中しているとわかりにくいけど、確かにそんな感じもするかも。コロネ、チョコレートって、そういうものなのか、な?」


「えーと、そもそもわたしの故郷ですと、魔法がほとんど発達してませんでしたから、向こうの場合はどうなんでしょうね? 滋養強壮効果はあったと思いますけど」


 いや、さすがに魔法食材は、向こうにはなかったと思うけど。

 まあ、コロネが知らないだけかもしれないけどね。

 こっちだと、ハーブ類やバニラが魔法食材に分類されているんだよね?

 それ以外にもあるのかな。

 ちょっと気になるので、メイデンに聞いてみた。


「ちなみに、こっちですと、どういうものが魔法食材になっているんですか? ハーブ類とか、そういう話くらいしかわからなくって」


「魔素によって生成される植物とかがそうか、な。どちらかと言えば、薬の材料とか、ポーションに使われる薬草、ね。油の中でも、アノイントとか、ゴマには、微量の魔素が含まれていたはずだ、よ」


 アノイントって、オリーブのことだよね。

 へえ、こっちだとオリーブオイルも魔法食材になるってことか。


『料理だの、食材だの、は人間の方が得意だから、俺も詳しくは知らんが、通常の土壌環境のみで生産が難しいものに、魔法食材が多いそうだ。魔素が一定量、存在する場所でなければ、育たない。定期的に、魔素を循環させないと花をつけない。そういうものらしいな』


 なるほど。

 自然に生えている場所はあっても、人工的に作り出すのが難しいとのこと。

 ほとんどが、その環境に左右されるのだそうだ。

 そう考えると、お茶とかもそうなるのかな。

 ドロシーもそんなこと言ってたし。

 さすがに魔法食材については、ウーヴもメイデンも専門ではないので、細かい種類については把握していないのだとか。


「でも、うーさんは『空虚の海』も行き来できたから、その中で食材っぽいものを見たことはなかった、の?」


『あるにはあるが……俺もどれが何なのかはわからんぞ。そもそも、植物は好んで喰わん。あの虚界も、本当に何もないからな。俺も闇魔法を使わんと、長時間は居られんし、いつも通過するだけだったからな』


「あ、ウーヴさん、『空虚の海』を通過できるんですか?」


 特殊なスキル持ち以外は、入ることすらできないんだよね。

 というか、何もない空間が広がっているのかと思ったら、『空虚の海』の中にも、植物があったりするんだ。

 そういう意味では、植物の適応能力ってたくましいなあ。


『ああ。さっきの移動法だ。と言っても、食べられそうな肉もないし、俺にとっては、大した場所ではなかったがな。そもそも、この辺り一帯は俺の一族が、魔王より、管理するように言われた場所でな。そうでなければ、こんな虚界ばっかりの場所、誰が好き好んで住みかに選ぶか』


「えっ!? そうなんですか?」


 なるほど、ダークウルフの縄張りっていうのはそういうことか。

 ということは、ウーヴも魔王側の人ってことだよね。

 ちょっと、驚きだ。

 ウーヴによれば、闇狼は『空虚の海』、いわゆる虚界を移動できるので、虚界が一番薄くなっていた、この辺りの管理を任されたのだという。いわゆる、勇者を名乗る冒険者を『魔王領』に近づけない番人。それがウーヴの一族なのだそうだ。


「つまり、ウーヴさんって、今も魔王側の人ってことですか?」


『立場はそうだが、正直、今の魔王はいけ好かん。もう従う義理はないというところだな。それに、先代より、自由にして構わないと賜っているしな。俺の家族も含めて、そういう立ち位置だ。それで、どうこうという話でもない。そもそも、人間のほとんどは俺よりも弱いからな、襲撃でもされれば容赦はせんが、いちいち俺の方から、襲い掛かることはないぞ。ふん、気に食わんやつも多いが、この町の連中は話せるやつも多い。食い物の件もあるしな』


「ふふ、うーさんもこの町の料理が気に入ったひとりだから、ね。そういう意味でも、この町を護ってくれている、の」


『勘違いするな。元々、この辺一帯は、俺の縄張りだ。それを荒らす連中を潰しているだけに過ぎん。いいか、コロネよ。俺が優しいとか思うんじゃないぞ。あくまでも美味い食い物のためだ。別に貴様らのためじゃない』


「ね? まあ、色々言ってるけど、食べ物がある限り、うーさんは信頼できる、よ。だから、コロネも余裕があったら、うーさんにお菓子を作ってあげて。何かあった時、助けてくれるから、ね」


『だから! 慣れ合うつもりはないと言ってるだろ! 貴様とは一度決着をつける必要がありそうだな、メイデンよ』


 うん、何というか、ふたりとも仲がいいね。

 それに、やっぱり話してみると、ウーヴのイメージが大分変わってきたかな。

 結構、とげとげしい部分もあるけど、本質的には優しいんだよね。


『ともあれ、食い物をもらった分の義理は果たす。そういうことだ、コロネよ』


 ほらね。こんなこと言ってるし。

 何だかんだで、町の外で危険な時は、助けてくれるかも、ということらしい。

 もちろん、最初からそれを期待してはいけないだろうけど、そう言ってもらえるだけでもありがたい。

 となると、今後も新しいお菓子を持ってきた方が良さそうだ。


「ありがとうございます、ウーヴさん。また、お菓子を作ったら、持ってきますね」


『ふん、貴様がそうするなら、止める理由はないな。町の外に出れるようになったら、うちにも挨拶に来るがいい。妻や子供に合わせてやろう。闇狼としては、幸いと言うべきか、残念と言うべきかは悩みどころだが、俺のガキ連中は、人と接するのに慣れている。この町のせいでな。だから、貴様とも話が合うだろう』


「そうだ、ね。うーさんの子供たちって、良い子ばっかりだもの、ね。良かったよ、こんな捻くれたうーさんの元で、まっすぐに育ってくれて」


『まったくだ、これも妻のおかげだな。俺の捻くれ加減が似ずに……って、メイデン! 貴様、本当にいい加減にしろよ! 誰が捻くれてるのだ! 誰が!』


 うん、十分、捻くれてるよね。

 メイデンも、突っ込まれながら、笑ってるし。

 何というか、話していると面白いよね、ウーヴさん。


「はい。ちなみに、ウーヴさんの家ってどの辺りあるんですか?」


『町から東に孤児院があるのは知っているな? その少し北側だ。木こりのバルツの家とも近いな。まあ、迷っているようなら、近くまで来たら、案内してやるから、心配するな』


「わかりました。まだもうちょっと先になりそうですけど、その時はよろしくお願いしますね」


『気にするな。それに俺自身も余裕があれば、貴様の訓練を見てやろう。対価はチョコレートだ。大きさは小さくても構わんがな』


「ふふ、良かったね、コロネ。普通、うーさんがこの手の話に付き合ってくれるって、よっぽどのことだもの、ね。それだけチョコレートが気に入ったってことか、な」


「はい。ありがとうございます」


 理由はどうあれ、訓練にウーヴが付き合ってくれるのはうれしい。

 というか、どういう訓練をするのか、まだ聞いていないんだけどね。

 まだ、今日のも始まってもいないし。


「それじゃあ、次は、ショコラの能力の検証か、な。どんどん、進めていこうか」


 口元は笑っていながらも、真剣な表情のメイデン。

 まだまだ、チョコ魔法の検証は続く。

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