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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第3章 初めてのクエスト編
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第125話 コロネ、制服作りを依頼する

「あ、ところで、お三方にお聞きしたいんですけど」


「うん? なに、なに?」


「聞きたいことー?」


「私たちのお仕事関係かしら?」


 預かった食材を倉庫の一角へと置いてきた後、新しいシスターの紹介などで話し込んでいた『あめつちの手』の三人に聞いてみた。

 なお、明日の料理については、お任せで大丈夫とのこと。

 甘い物関係なら、どんなものでもいいそうだ。


「はい。『あめつちの手』に、というか、ウルルさんに制服を作ってもらうのって、どのくらいかかるんですか?」


「それって、お金のこと? 時間のこと?」


「あ、どっちもです、アルルさん。ちなみに、この件はリリックさんの分ですね。ひとまず、後でオサムさんにも確認しますが、ここの給仕服と、前にわたしが作ってもらった、パティシエの衣装を色違いで作ってほしいんですよ」


 給仕服については、オサムに聞かないと何ともだけど、パティシエ系の衣装については頼んでおきたいかな。とりあえず、リリックの場合、氷菓子系からスタートなのと、本人のイメージも考慮して、デザインはおんなじで色だけ青系統という感じにお願いしたいんだけど。


「うーん、給仕服はオサムとの交渉かなー? だって、あれ、オサムのお店のでしょ? それなら、コロネが支払うのはおかしいもんねー」


「そうね。それに関しては、私たちの方から後でオサムを通しておくわ。だからそっちはちょっと待って。コロネと直接やり取りするのは、パティシエだったかしら、そっちの衣装について、ってところよね。今、リリックからも話は聞いたわ。コロネに弟子入りしたんですってね。だったら、確かに制服についてもコロネが用意した方がいいかもね。ちなみに、ウルル、リリックの寸法は覚えているわよね?」


「うん、そっちは大丈夫ー。さすがにびっくりしたから忘れようっても忘れられないよー。作るのは問題ないかなー。二日もあれば大丈夫ー。あ、でも、明日は太陽の日かー。コロネ、できれば三日ほしいかな」


「となると、後は報酬の問題よね。ちなみに、ふたりとも、何か要望ある?」


「「アイスー!」」


「まあ、そうよね。というわけで、コロネ、報酬に関しての相談ね。全部が金銭でもいいんだけど、もし可能なら、報酬をアイスにしてもらえない? 正直な話、オサムからのお仕事で、お金に関してはあんまり困っていないのよ」


「そうなんですか?」


 シモーヌが言うには、衣服の報酬は相場通りなのだが、調理器具関係の精霊鍛冶のお仕事での報酬がかなり上乗せされているらしいのだ。ちょっと、三人が引くくらいの金額らしい。アルルにしてみれば、自分のスキルで手軽に作れるため、さすがにもらい過ぎの感が否めないとのこと。

 ただ、相場、というか、精霊鍛冶の希少性から考えると桁外れというほどではないのだが、このスキルについては親しいもの相手でしか使わないので、逆に申し訳ないのだそうだ。


「別にね、美味しい料理もいっぱい食べさせてもらっているから、いいって言ってるんだけど、これに関してはオサムが譲らないの。そういうとこじゃ頭が固いよね」


「まあ、アルルにとってはそうかもしれないけど、たぶん、これで、このふたりにも現状を理解させようってことなんでしょうね。それくらいの価値があるってこと。ふたりとも、今ひとつ危機感に欠けているから、心配してくれてるんでしょ」


「失礼な! 誰の頭がお花畑よ!」


「アルルー、そんなこと、誰も言ってないよー」


「まあ、自分たちでわかってるみたいだから、いいけど。そんな感じよね」


「いや、シモーヌ、あんた否定しなさいよ!」「えーっ、わたしもお花畑なのー?」


 何だか、いつもの『あめつちの手』のノリだね。

 また、口論になってしまったよ。

 結局のところ、こちらとしては、アイスで支払えばいいのかな。


「それで、シモーヌさん。アイスで支払うのはいいんですけど、結局、どうすればいいんでしょうか? 一定期間、毎日渡すって感じですか?」


「そうね。現時点ではアイスの希少価値は高いから、少し高めに見積もっておくわね。もしくは、教会で販売するのとは別のアイスってことなら、それでも構わないしね。とりあえず、そうねえ……前に冗談で言っていた価格を基準にしましょうか。一個あたり金貨一枚。それを一日三個ずつで、十日間。そんなところかしら」


 ええと、つまり、この制服の相場は金貨三十枚か。

 向こうに換算すると三十万円。

 やっぱりけっこうな価値があるんだね、この制服って。

 でも、アイスを一日三個で十日間って聞くと、それほど高い気がしないので不思議だ。

 この辺は世界間での価値基準のずれって感じだよね。


「ほら、コロネにも着替え用も含めて二着渡してるじゃない。だから、それでって感じよね。後は、親しい人相手の相場ってところよ。一応、その制服とかを作るための素材って、けっこうかかるのよ」


「そうよ。色々な耐性素材を使っているわ。普通の旅人の服とは違うんだから」


「うんうん、オサムの基準がけっこう高いからねー。今、コロネが着ている給仕の制服だって、ちょっとした鎧より強いんだよー」


「えっ!? そうなんですか!?」


 思わず、まじまじと着ている服を見てしまう。

 あ、もしかしてそれで、コノミも召喚訓練で、この服で大丈夫って言ってたのかな。

 ただの布の服ではないらしい。

 いや、だから、そういうことは説明しておいてくれないかな。


「そ、諸経費については、初回なのと、この前もアイスをくれたり、プリンをくれたりしたから、そのお礼ってことでカットしておくわ。これからもギルド『あめつちの手』をご贔屓にって感じよね」


 要するに、本来の相場はもっと高いらしい。

 まあ、それもそうか。

 向こうでいうところの仕立て屋みたいなものだしね。

 職人が一着まるまる作り上げるとすれば、一着で二十万でも安いくらいだ。

 そのくらい、技術料ってのは侮れないのだ。

 うん、機械化ってすごいよね。

 ともあれ、このお礼は今後のお菓子で返していくとしよう。


「わかりました。そういうことでしたら、アイスでお支払いしますね。せっかくですので、毎日違う味を用意しますよ」


 しばらくはリリックに色々教える日々だし、ついでに味見もしてもらおう。

 となると、やっぱりフレーバーになりそうな素材を集めないといけないかな。

 近いうちに果樹園に行くのは確定だね。


「えっ!? アイスって色んな味があるの!?」


「この間のだけじゃないんだねー。すごいすごい!」


「そうですね。ここだけの話ということでお話ししますが、コロネさんから製法は教わりましたが、教会でもしばらくは基本のアイスのみの販売を予定しておりますね。ですから、違う味のアイスというのは貴重だと思いますよ」


「そうなの!? カウベル!? やったね、ちょっと得したね!」


「ところで、違う味ってどんな感じなのー?」


「果物とか、色々使う素材を変えれば、たくさんの種類が作れますよ。とりあえず、明日は、今日をお預かりしたサンベリーを使ったものをお出ししましょうかね」


「ふうん、なるほどね。サンベリーを使ってもアイスって作れるのね。良かったじゃない、ふたりとも。たぶん、オサムのお店の人以外で、味見できるのって、私たちが最初じゃないの?」


「うん! よかったよかった!」


「これでお仕事へのやる気も百万倍だよー!」


 まあ、ふたりとも喜んでくれて何よりだ。

 コロネもおまけしてもらっているから、むしろありがたいしね。

 こうなると、もっと喜んでもらえるよう頑張らないと。


「それじゃあ、今日のところはさっきの食材の件と、今のお仕事の件でおしまいって感じかしらね。あんまり、アイス作りを邪魔しちゃ悪いから、私たちは行きましょうか」


「そうだね。アイス作りの邪魔なんて万死に値するよ」


「うんうん、それじゃあ、コロネ、また明日ねー」


「はい、お待ちしておりますね」


 相変わらず、あっという間に三人は帰ってしまった。

 ほんと、にぎやかだよね。いなくなった後は嵐が去ったかのようだ。


「コロネ先生、あの……私のために制服、すみません」


「うん? リリックが気にすることはないよ。何と言ってもわたしのお弟子さんなんだから。ちょっとは先生らしいこともしないとね。ほら、わたしはアイスを味見してもらえてうれしい。三人はアイスが食べられてうれしい。困っている人はいないでしょ?」


 まあ、実際のところ、衣服の素材がいくらぐらいなのかわからないので、どのくらい、ウルルたちに負担をかけてしまっているのか、ちょっと怖いんだけどね。

 ただ、できるだけそうならないように、アイスの方には力を入れていこう。


「はい! ありがとうございます、コロネ先生!」


「うん、それじゃあ、ちょっと早いけど、二回目の混ぜ混ぜ作業に行こうかな。ちょうど、合間にお客さんが来てくれたから、時間も経ったしね」


「コロネさん、アイスを混ぜる作業はあと二回ですか?」


「そうだね。今を入れてあと二回かな。だから、何とか、午前中で完成まで持っていけるかな。そうすれば、カウベルさんたちも間に合うよね?」


 カウベルたちが教会を離れていられるのも、午前中までってことだしね。

 それには何とか間に合わせることができそうだ。

 良かった良かった。


「最後の混ぜ混ぜ作業が終わったら、ちょうどお昼だから、できたアイスを持ち帰ってもらって、みんなに味見してもらうって感じかな」


「そうですね。子供たちも喜ぶと思います」


「それじゃあ、頑張って、続きの作業と行こうか。いざ、保管庫へ、だよ」


 四人を連れて、再び保管庫の冷凍区画へと向かう。

 もうちょっとで、アイスができるかな。

 みんなの喜ぶ顔が見たい。そう思いながら。

 そんなこんなで、アイス作りは続いていくのであった。

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