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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第3章 初めてのクエスト編
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第108話 コロネ、召喚の分類について聞く

「次は『召喚される存在に関する分類』について、ね」


「えーと、存在、ですか?」


 どういう意味なのだろうか。

 召喚されるものって、そんなに色々と種類があるのかな。


「そうね。これもコロネさんが想像しやすいように、この町での例をいくつかあげてみるわね。まず、ここにいるポン太の場合、元になる存在がはっきりしているの。妖怪種の茶釜たぬきとして、コトノハで生まれたって、そういう来歴ね。これがまずひとつ。どこかに生きている存在を召喚するケース。まあ、一番わかりやすいかしら。普通、召喚っていうと、そういうイメージだものね」


「うん。使役であれ、契約であれ、請願であれ、どういうケースであっても、この世に生を受けた相手を召喚する場合は、このケースだよ。要するに、一口に召喚術って言っても、色々なパターンがあり過ぎるから、いくつかの分類で、それぞれのケースを当てはめていくと、その召喚術の法則にたどり着けるって感じ。だから、姐さんも、面倒だけど、ひとつひとつの分類を説明してるってわけ」


 なるほどね。

 複数の分類から、その人の召喚術がどういうものなのか特定していくんだ。

 何だか、タイプ分けのフローチャートみたいな感じだね。

 でも、それが一番無難な方法なのだそうだ。


「じゃあ、続けるわね。次のケースは、生命として生まれていないものを召喚するケースね。これは、楽鬼や活鬼があてはまるわ。私が召喚しているふたりは、元々、この世に生を受けた存在ではないの。というか、式神っていうのは全般的にそういうものなのね」


「えっ!? そうなんですか?」


 つまり、二番目のケースは式神全般があてはまるのだとか。

 え、どう見ても、ふたりとも、自分の意志で動いているようにしか見えないんだけど。

 コロネが驚いていると、ふたりも追加で説明をしてくれる。


「ま、そういうことですわ。わしらには、元の身体っちゅうもんがありません。本来、式神というのは、使い手を反映して、その手足のごとく従う存在のことを指しておったんですわ。まあ、わしらのケースはちょっと特殊な使い方っちゅう感じですわな」


「ああ。大姐様、あの御方が開発した式神の使い方だ。本来は、忠実なしもべであるはずの自分の分身に、妖怪になりきれなかったものの意志を宿すことで、自由意志を与え、行動の可能性を広げさせてくれた。そういう意味では、俺も感謝の念に堪えん」


 コノミが式神についても教えてくれた。

 通常、式神というのは、小精霊や魔素を使って、疑似的な存在として操る技法を指すのだそうだ。要するに、魔女のドロシーが見せてくれたような、遠隔操作のほうきのような使い方らしい。

 もちろん、小精霊によって、生命に近い動きを再現することも可能だけど、それは結局、術師が人形を扱っているような感じになってしまうのが普通なのだとか。

 ああ、そういえば、ドロシーも似たようなことを言っていたっけ。


 そのため、人形のような疑似生命だけでなく、単なる炎や雷などの現象についても、それらを操る際は、名前を与えて、式神という風に定義しているのとのこと。

 向こうの世界の昔話とかで、式の書かれた紙を投げると、炎などが発生するのが、これにあたるらしい。

 なるほど。

 あくまでも、術師の分身として、操るものの総称が式神というわけだね。


「だから、式神の本体は、符や玉、箱とか、媒介となったアイテムであることがほとんどね。術師が常時召喚できない場合、普段はそういったアイテムとして眠っているのが、式神という存在なの。でも、お母さんはそういう式神の使い方をもっと、違うものにできないか考えて、今の方法へとたどり着いたって聞いているわ。自分の分身であるからこそ、物扱いするのではなく、パートナーとして、そういう存在として生まれ変わらせることができないものか。そういう考え方から生まれたのが、この子たちなの」


「要するに、わしらは妖怪種になりそこなったもんの意思と、姐さんのどっかは分からんけど、どっかに存在しとる、もうひとりの自分の性質が混ざってできたもんなんですわ」


「え、そうなんですか?」


 さすがに、目の前のコノミと式神のふたりでは、印象が違いすぎるんだけど。

 まあ、自分でも気づかない性格ってのは、どこかに隠れているかな。

 人間の心って、まっすぐなだけじゃないしね。


「ああ。俺が持つ強い者と戦いたいって欲求も、姐御の中のどこかには眠っているんだろう。普通は、意志とか、良心とかで抑えている部分が出てきたりするって話だ」


「ふふふ、そういうことなの。ちょっとだけ、自分の知りえない部分がさらされて恥ずかしいって感情がないわけじゃないけど、でも、この子たちも半分は私が元になっているわけだから、ね。子供とおんなじよ。それを受け入れて誇らしく思えないのなら、式神使いにはなれないの。そう、私は思っているわ」


 そっか、半分か。

 だから、コノミはふたりのことを私の子供って言っているんだね。


「だから、この子たちと対等な契約なのは当然の話なのよね。私の分身のようなものなのだしね。まあ、詳しい方法については、コロネさんが式神使いの適性があった場合に説明するわね。一応、これでも、コトノハでは秘中の秘みたいな扱いになっていることなの。同じ式神使いでなければ、教えることはできませんってね」


「わかりました」


 そうだよね。

 コズエが開発したってことは、まだそれほど歴史があるわけじゃなさそうだし、そもそも式神使いの適性がなければ、知っていても役に立たないみたいだし。

 ちなみに、地下の門番であるところの封鬼も、同様の式神なのだそうだ。人の身体は持っていないけど、同じ方法で式神にされているらしい。


「まあ、狗神のアラちゃんはまた別なのよね。あの子の場合、そもそもが何かに宿るという性質持ちの妖怪だから、それがたまたまホムンクルスだったってだけかしら。狗神は妖怪種の中でも、どちらかと言えば、幽霊種に近い存在なの。ふわわちゃんに近い感じね。だから、この世に生は受けているけど、本体は霊体という感じね」


 一応は、この分類ではポン太と同じ最初のケースに分類されるとのこと。


「そして、今あげたふたつのケースとはさらに別なのが、そもそも、命を持たないものを召喚する場合ね。物質召喚とか、ね。一応は離れた場所にある武器や道具などを呼び出すものが、これにあたるかしらね」


 物質召喚、というところで、コロネも真剣さを取り戻す。

 チョコレートの場合、それが一番近そうだし。


「わたしのチョコレートを生み出す魔法もそれにあたるんですか?」


「うーん、残念ながら、まだ確信は持てないわね。仮にそれが召喚魔法だったとしても、また別の可能性があるの。というか、ミキから聞いたコロネさんの魔法の話から推測するに、思い当たる節がないでもないのよね」


「それは、何ですか?」


「ふふ、まだ慌てないで。説明が終わって、私からもいくつか質問があるから、それ次第ではすぐに特定できると思うから。ただ、それを知ってしまうと、不意に魔法が発動してしまうかもしれないから、もうちょっとだけ待ってほしいのね。できれば、もし暴走した時に対応しやすいに越したことがないから」


 魔法とはイメージが重要で、コロネの場合、ユニークスキルであるため、イメージが固まった瞬間に発動してしまう可能性がある、とのこと。

 だから、段階を踏む必要があるみたい。

 そういうことなら、仕方ないよね。

 うん。焦ってはいけないか。


「あと、今までの三つ以外のケースね。例えば、今まさに生命として生まれようとしている存在とか。今のところは生を受けていないから何もないけど、誕生と同時の召喚とか、ね。あと、それ以外でも説明ができないものもあるから、そういうものもまとめて、最後のケースになるわ。はい、これで二つ目の分類の説明はおしまいね」


 ここからは駆け足でいきましょうか、とコノミが続けて。


「では、あとひとつだけ、分類に触れさせてね。『発動の形についての分類』について、よ。これは術師がどういう状態で召喚を行なうか、それに関するものかしら」


 他にもいくつか分類法があるらしいが、今のコロネに関しては、ひとまずこの三つで十分だそうだ。後は、いくつかの質問で適正までたどり着けるとのこと。


「発動の形、ですか?」


「ええ。常時召喚型、一時召喚型、召喚固定型。大きく分けると、この三つね。まあ、たぶん、言葉の響きで何となくわかるでしょうけどね」


「つまり、常時召喚型は、一度召喚したらずっと召喚したままってことですよね」


「そうだよ。一度召喚したら、もう戻すことができないのが常時召喚型だね。これは実はあんまり例が少ないんじゃない? たぶん、コトノハのほとんどは、一時召喚型か召喚固定型だからね」


 あれ、ポン太の説明から、自分が少し勘違いしていたことに気付く。

 てっきり、楽鬼や活鬼も常時召喚型だと思っていたのだが、それは違うのだろうか。


「あれ、式神のおふたりは常時召喚型じゃないんですか?」


「いや、わしらは召喚固定型になりますわ。必要に応じて、召喚を解除できたり、もし何かの不備で存在を失っても、術師がおる限り、再度、召喚されることが可能なんですわ」


「ぼくも召喚固定型だよ。要するに、契約に則って、術師とのつながりを固定するやり方が召喚固定型って呼ばれるものなんだ」


「ええ。たぶん、その辺りが紛らわしいかもしれないわ。それじゃあ、先に一時召喚型について、説明しましょうか。これはそのままよね。必要に応じて、一時的に召喚して、すぐ帰ってもらう召喚のことなの」


 うん。一時召喚型については問題ないね。

 耳にした時のイメージがそのままだし。


「そして、常時召喚型についてだけど、この町だと、たぶん、ドロシーさんの使い魔のルナルさんがそれにあたるはずよ。もっとも、ルナルさんの場合、別の魔女さんから受け継いだそうだから、純粋な召喚術というのとは少し違うみたいだけど」


「えっ!? ルナルも!? あ、そうか。魔女って、幻獣召喚師でしたものね」


「ええ。たまごから召喚して、そのままずっと召喚したままになるケースが、常時召喚型と呼ばれるものなの。で、それ以外のケースは召喚固定型になるのね。コトノハの場合、ほとんどの召喚師が召喚固定型よ」


 つまり、常時召喚型というのは、たまごを召喚する術のことだそうだ。

 召喚というよりも、使い魔を生み出すというイメージが正しいらしい。

 だからこそ、その召喚された存在は、命を落とすと再度、たまごからの召喚になってしまうらしい。あるいは、二度と召喚できなくなってしまうか、である。そのため、コトノハでは、常時召喚型がほとんど行われていないそうだ。そもそも、適性を持つ者がほとんどいないとのこと。


「まあ、だからこそ、なのよね……コロネさん。いくつか質問させてもらってもいいかしら? たぶん、それで、適性を特定できると思うから」


「あ、これで分類についての説明は終わりですか」


「ええ。後は、特定と実践。それだけなの。それじゃあ、頑張っていきましょうか」


 そう言って、コノミが笑みを浮かべる。

 その表情からは、もうすでにコロネの魔法が何であるか、特定が済んでいる。

 何となく、そんな気がした。


 だから、コロネもゆっくりとコノミの言葉の続きを待った。

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