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ちょこっと! ~異世界パティシエ交流記~  作者: 笹桔梗
第1章 はじめての異世界 ~食材探し奔走編
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プロローグ コロネ、異世界に来る

「ここが、ゲームの世界か~。最近のゲームってすごいんだね」


 須賀心音――コロネは感心したように言った。


 そこは森の中。

 辛うじて、一本のけもの道が通じている以外は、周りは木々で囲まれている場所だ。

 目が覚めると、いつの間にかこの場所へと飛ばされていたコロネはゆっくりと今の状況について噛みしめていた。


『ゲームの世界で働く料理人を探しているの』


『あなたは、いくつかの条件を満たしている』


『月々、相応の給料と、身体のサポートは保証するわ』


 一介のパティシエ見習いにとって、提示された金額は破格だった。

 特に今のコロネにとって、それに同意する以外の選択肢は存在しなかったこともあり、目の前に現れた女性の言葉にあっさりと頷いてしまった。

 

 パティシエ見習い。

 一流の菓子職人を目指して、コロネは見習いとして働いていた。

 だが、その見習いの文字が取れる前にコロネはパティシエールとしての夢を失わざるを得なくなっていたのだ。


 帰国寸前に起こった飛行機事故に巻き込まれたことで。


 その後のことはよく覚えていない。

 いつの間にか、真っ白い部屋におり、そこで、自分が辛うじて生き残ったことを知らされただけだ。

 もう菓子職人を続けることはできない。

 そう、漠然と考えていたコロネに対し、その病院の関係者であろう女性は先程の条件を示してきたのだ。


 答えは最初から決まっていた。

 結果として、まだ夢を追うことができる現状にコロネは感謝した。

 もっとも、女性からもう少し詳しい話を聞く前に、ゲーム内に飛ばされてしまったのは予想外だったのだが。


 仕事を受けるに当たって、簡単にゲームについての話は聞いた。



 この世界が『ツギハギだらけの異世界』と呼ばれていること。


 コロネはその中でひとりのプレイヤーとして生まれ変わること。


 プレイヤーがどういったもので、どういうことができるのかということ。



 そこまで聞いたところでゲームが始まってしまったのだ。

 そして、今、コロネはゲームの世界のどこか分からない森の中にいる。


「詳しいことはゲームを始めたら分かるって言ってたけど……」


 ゲームなんてしたことがないコロネにとって、すぐに慣れる、と言われても困ってしまう。お菓子職人としてとあるお店で働いてほしい、とは聞かされていたが、そのお店がどこにあるのか、そもそも、お店の名前すら聞いていない。


「条件はなかなか良かったから、引き受けたけど……わたし、ゲームってあんまりやったことないんだよね、大丈夫かな?」


 不安はある。

 そもそも、ひとり森の中に取り残されているのはあまり気分のよいものではない。

 まず、身体をひとしきり動かしてみる。

 病室では、感覚が曖昧なままで、ほとんど動かすことができなかった手足が、頭が、上半身が、下半身が、自分の意思通りに動くことを確認し、ホッと一息つく。

 事故に遭う前の身体が戻ってきたかのようだ。

 では次だ。

 先程教わった通りの言葉を口に出してみる。


「ステータスウインドウ、オープン」


 呪文と同時に、コロネの目の前にウィンドウが現れた。


「あ、すごい。ほんとにゲームの中なんだね」


 まず、自分のステータスというものを確認してみる。


名前:コロネ・スガ

年齢:19

レベル:1

スキル:『チョコ魔法』『自動翻訳』

装備:旅人の服


 ふむふむ、レベル1、と。

 まあ、ゲームが始まったばかりだもんね。

 それと……あれ?


「なんだろ? この『チョコ魔法』って」


 自動翻訳というのは何となくわかる。ゲームの世界の言葉に適応するためのスキルだろう。確か、さっきのお姉さんがそんなことを言っていたような気がするし。

 しかし、チョコ魔法というのは初耳だ。


 と、チョコ魔法という表示をよく見ると矢印がついていた。

 矢印のある項目は説明があるらしい。


★チョコ魔法

 魔力を消費することでチョコレートを生み出すことができる魔法。

 レベルが上がるにつれて、チョコレートの種類と量も増えてくる。


「???」


 それだけなのかな? 

 チョコレートを生み出す魔法って。


 それが何の役に立つのだろうか?

 まあ、とりあえず、やってみよう。

 手を前にかざして、力を込める。


「えい! チョコレート出ろ!」


 ぽん、という音とともに一口サイズのチョコレートが現れた。


 折角なので、食べてみる。甘味とほんのりとした苦みが混じった美味しいチョコレートだった。しかも、コロネにとっては馴染みのある味だ。


「……これ、お店のチョコレートと同じ味だ」


 つまりはそういうことなのだろうか。

 パティシエ見習いとしての経験とこのスキルがリンクしているのかもしれない。


「とりあえず、飢え死にしないでは済みそうだね」


 うん、と頷くとコロネは人気のありそうな場所を目指して、先へ進むことにした。



まったりペースで進めていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

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