第2話
「博士、準備出来ました」
助手の高宮 夏姫が、報告にくる
「わかった。すぐに行こう」
俺の名前は鷹谷創也。天才科学者だ。2083年6月6日14時16分に誕生。血液型はB
本名は鷹谷宗也だったが、博士号を頂いたときに、市役所へ行って名前を変えた。もちろん、親の許可も得た
18歳のときに拾った、地面から数ミリだが浮いている謎の鉱物を発見したことをきっかけに反重力の研究を始め、21歳のときに、反重力システムを発明。フロートカーを開発した。ちなみに拾った鉱物は隕石の欠片だった
そいつを科学的に作り出したことにより、俺の人生は大きく変わる
反重力鉱(俺が命名した。鷹谷鉱にするか反重力鉱にするかでとても迷った)ノーベル物理学賞を頂いた。博士号もだ。
それから3年後、転移装置を開発したことにより、俺のノーベル賞が、隕石のおかげだとか言っていた馬鹿どもは静かになり、自分でも隕石のおかげなのかな?なんて思っていたが、自分の力に自信を持つことになった
転移装置から更に3年後、つまり現在
俺はついにタイムマシンを開発した
しかし、理論には少し穴があり、安全が保障されたわけではない
なので今からその実験をするのだ
タイムマシンのある倉庫へ向かう途中、高宮が聞いて来た
「本当に博士自身で実験を?」
「当たり前だ」
俺は応えた
「し、しかし、死ぬかもしれないんですよ?」
しつこいやつだ
「そうだ。まだ理論には穴がある。もしかしたら命を落とすことになるかもしれない──
」
言葉を区切る
死ぬかもしれない、か
「ならなんで!」
「いいか、高宮。俺は自分の発明で誰かを傷つけたくないんだ。浮遊自動車のときも、転移装置のときも、実験は俺自身が行った。それに──」
高宮の目を見つめる
「──それに、俺には、お前がいるからな」
高宮の目が大きく見開かれる
「今までずいぶんと助手を雇ってきたが、俺の研究について来られたのはお前だけだ」
高宮の頭にポンと手をのせる
「お前はまだ23だ。俺よりも4つ下なのに、俺の研究についてこれている。つまり、お前には俺以上の才能がある」
高宮はうつむいて言う
「そ、そんな、私なんて」
「そんなことはない。自分に自信を持て。夏姫」
そう言って、彼女の胸を揉む
おお、ファーストタッチおっぱいだ。柔らかい
「なっ、なっなっなにするんですか‼︎」
俺の手を振り払い、胸を押さえながら睨んでくる
「ふっ。お前に深刻そうな顔は似合わねーよ」
こう言うと、彼女の緊張をほぐしたかのように聞こえるが、実際はただのセクハラである
「さて、ついたな」
第3実験倉庫
中には、長さ3mほどの流線型の機械が置かれている
タイムマシンだ
「本当に、やるんですね」
「もちろんだ」
実験用のスーツに着替え、タイムマシンマシンの前にたつ
すると、開発チームのメンバーが集まってきた
「諸君。今までご苦労だった。君たちのおかげで、様々な発明品を世に送り出すことができた」
パチパチと拍手が起きる
「──さて、今回の実験は命の危険がともなう。成功すると思うが、もし、失敗し俺が死んだ時は、俺の貯金は君たちに平等に贈ることになっている」
ニヤッと俺は笑う
「是非、俺が死ぬことを祈ってくれ」
皮肉を言ったつもりだったが、彼らは口々に言う
「そんなことはない」
「博士と僕たちの発明には失敗なんかない」
「あんた、高宮ちゃんを泣かせるつもりかよ」
ん?最後の言葉の意味がわからない
高宮を見ると、なぜか赤くなっている。俺と目が合うと、慌てて目をそらす
あれ?胸を揉んだから嫌われた?ショック
「では、実験を始める」
そう締めくくり、タイムマシンに乗り込んだ
正方形の小さな窓から外を見ると、高宮と開発チームのメンバーが手を振っていた
手を振りかえし、操縦席に腰を深く落とす
操縦席と言っても、座っているだけなのだが
操作パネルで、設定を行う
そうだな、とりあえず俺のスタート地点、27年前にでもいこうかな
目標を27年前の6月6日14時00分に設定する
出現場所は高度20mにしておく
反重力システム内蔵さっ
さて、これでOK。もしこの研究所が27年前に民家だったとしても、この高さなら被害は出ない
あとは、発進スイッチを押すだけ
ポチッとな
窓の外が白い光に包まれる
機体が揺れ始め、飛行機の離着陸の時のような耳の痛みが訪れ───意識が飛んだ
目が覚めて辺りを見回すと、一面お花畑だった
「あいててて。実験には失敗したのか?ということは、ここは天国か?実在したのか……」
もう一度横たわる
高宮。あとは頼んだぜ
そんなことを考えていると、遠くから声がした
「ソーヤ!なにほっつき歩いてるの‼︎最近はこの辺にコボルトが出てるんだから、外に出るなって言ったじゃない」
鬼の形相で俺の元に、30くらいかな?金髪の女性がやってきた
──誰だ?
その女は両手を振り上げて──俺に抱きついてきた
「本当に心配したんだからっ。もう二度とこんなことしないのよ?わかったわね?」
まるで自分の子供に接する母親みたいだな
俺が訝しんでいると、その女は俺の目を見つめて言った
「返事は?」
「え、あ、はい」
ニッコリとその女は微笑んで
「よろしい。さぁ、帰りましょう」
といって、俺を抱き上げた
──えっ⁈俺、27…
自分の手を見ると、それはまるで子供のような、丸っこい手だった