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異世界で勇者になる  作者: 風美 佑
新米勇者編
14/26

Episode Ⅱ

しゃれにならないぞこれは


とりあえず脱ぎたてほやほやのパンツを履き、素裸から半裸に戻る


風呂の扉に背中をあずけて座り込む


確かに俺が風呂場に来たときは空の籠が一つあっただけだった


カルドスの仕業だろうが、なんという早業なのだろう。呆れるというかなんというか


しかし、裸を見てしまった


すでに俺の局部は年齢的に携帯変化できるようになっているため、昔にナナリーと入った時のように小さいままというわけではなく、超元気だ


「──綺麗だったな」


思わず呟く。カナリアの裸体は、エロいなんてものを飛び越えて、美しかった


「ほう、謝るより先にそんなことを言うとはいい度胸だな」


凍てつく氷のような冷たい声が扉越しに聞こえる


「いや、あれは事故というか不可抗力というか!」


「言い訳は聞かん。まったく、やはり中身は大人の男だったか。子供の皮を被った変態め」


聞く耳もたず、カナリアはぶつくさと文句を言っている


「本当なんだ、カルドスの仕業なんだっ!」


必死の弁明


「ん、カルドスのせいと言えば何とかなるなんて思うなよ、ソーヤ」


信じてくれない。どうしよう、旅立つ前日に多分人生最大のハプニングが到来してしまった


「…なあソーヤ、エルフの男女交際について話したことがあったな」


聞いたことあるな


「エルフは心を許した相手と一生添い遂げる、と教えたな?エルフの裸体は、心に決めた男にしか見せないんだよ」


「……す、すみませんでしたっ!」


ぱないの!どうしよう、取り返しつかないよ


「謝って済むような問題ではない。罪には罰を、だ。さて、どんな罰を与えてやろうか?」


なに?奴隷ですか、椅子役ですか、それとも死をもって償えとか?バッドエンドじゃん


できれば責任とって結婚とかがいいなぁ。あ、旅にでれないじゃん。いやいや待て待て、大好きなカナリアと夫婦ってのもいいのではないか?カナリアみたいな美人と結婚、いいな、それ


しかし男女交際もまともにしたことのない俺にとって、結婚なんか別次元のものだ


一度だけ、親の用意したお見合いに出たことがあるが


「あたし、イケメンでお金持ちがタイプなんだよねぇ」


と言われた。お金持ちがタイプってなんだよ、願望じゃん


そう、有名人でも顔が悪ければもてないのだ


「ぅ……」


過去の思い出が蘇り、精神に大ダメージを与える


これはキツイぜ。そもそも、罪を償えと迫られている時に結婚したい。とか思ってる時点で俺の頭はどうかしてしまったのかもしれない


「おい、急に黙り込むな。話はまだ、終わってないぞ」


「……カナリアと結婚、したいなぁ、第二の人生、幸せになりたい」


「なっ、ななにゃななな、にゃんだと?」


あれ、声に出てた?というか、今のプロポーズじゃ……


やってしまったぁぁぁ!もしかして、火に油を注いでしまったか?


「ソ、ソーヤ。もう一度言ってみりょっ……言ってみろ」


ええい、言ってしまえ!俺の気持ちをぶちまけてやる!もしだめなら、旅に出ればいいさ!今の俺は、どっちのルートでも後悔はしない!


「えー、俺と結婚してくれ、カナリア」


はっきりと、ゆっくりと、俺は言った


「そ、それは本心か?」


扉越しに聞こえてくるカナリアの声が、なんだか震えている気がする


「うん。本心だ」


「さっきの償いとかじゃないのだな?」


「違うよ。この告白の引き金になったのはその話だけど、結婚したいって気持ちは本心だ」


言ってしまった。もう後戻りはできない


というか、あってる?これであってる?初めて告白したよ。いや、プロポーズしたよ


「……勇者」


「はい?」


「ソーヤが勇者になったら。ソーヤの名前がこの大陸全土に知れ渡ったら、結婚して、も、いい」


カラッと不意に扉があき、支えを失った俺の体は仰向けに転げる


そこには、キチンと体にタオルを巻いたカナリアがいた。いや、いるのは当然だけども


カナリアはしゃがみ、俺の唇に自分の唇を重ねる


「ん──約束。待ってるから」


赤くなった彼女の顔には喜びの表情が浮かんでいた




♡ ♡ ♡


「マジかマジかマジかマジかよ」


俺は水面に映る自分に向かって話しかける


婚約してしまった。超絶美人のエルフと


今更思い返すと、とんでもない展開だったと思う


なにあれ?なんなのあの電撃展開。今時のラノベもあんなにメチャクチャじゃないよ


「うふ、うふふへへへへ」


ついつい笑がこぼれる


なんだかんだで、と締めくくっめても怒られない事だったが、俺は満足していた。すでにこの世界で元の世界の常識が通用しないのはわかっている


しかし、まさかカナリアがOKしてくれるとは


「やべー、勇者にならねーとな」


俺は風呂のなかでずっと笑っていた




風呂からあがると、なぜかテーブルの上にはケーキが置いてあった


すでにカルドスとナナリー、カナリアは席についている


「なんのケーキだ?」


「明日、旅立つお前のための御祝いするんだよ。それと」


ニヤッと、いつものあの笑い顔を浮かべカルドスは付け加える


「お前らの婚約記念ってことで」


「なっ⁉︎」


なぜ知っている⁉︎


「ふっ、なぜ知っているのかって?俺はお前の親だ。息子のことはお見通しだ」


カナリアのほうを見ると、彼女も驚きの表情を浮かべている


「まさかソーヤとカナリアちゃんがねぇ」


ナナリーは顔には両手を当ててヤンヤンブリブリしている。なぜあんたが照れるっ


「とにかく、さっさと切り分けて食おうぜ」


お行儀の悪いカルドス君は右手にフォーク、左手にビールの入った木製のジョッキを握っている


「今分けますよ」


ケーキが全員に行き渡ってから、カルドスが音頭を取る


「えー、おほん。ついに明日、私たちの息子のソーヤが旅に出ることとぉなりましたぁ!しかも!勇者となり大陸全土に自分の名前が知れ渡る時、カナリアと結婚するという婚約も交わされて──もういいか。乾杯!」


こいつ、もう飲んでるな。乾杯前から酔っていたカルドスによる適当すぎる音頭により、宴が始まる


四人で


ケーキのあとは、タンドリーチキンとかシチューとか、とにかく豪華な食事がでてきた


食事をしながら、最初はどこに行くのかとか、旅の資金はだしてやるとか、色々な話をした


とても楽しい夕食だったけど、俺とカナリアの間には気まずい空気が流れていた




夕食後、俺は部屋に戻りベッドに横になる


いやぁ、ラノベみたいな劇的な一日だった


一日を振り返ると誰かが部屋の扉を叩いた


ノックする音とともに「入るぞ?」とカナリアの声が聞こえた


どーぞ、と返事をするとカナリアが部屋に入ってきて


そのまま俺の横に寝転んだ


「⁉︎」


俺の寝巻きの裾をつまんで彼女は心細そうな声で俺にといかける


「ソーヤ、やはり、その、私と結婚したくないのではないか?」


上目遣いの潤んだ瞳で俺を見つめてくるカナリアには普段の凛々しさは無く、小動物のような愛らしさ、儚さがあった


「は?そんなわけないって!あれは本心だ」


「しかし、さっきは私からわざと顔をそらすし、話しかけてくれないし」


「あれはっ、あれはその、照れてしまって…」


「……本当か?」


寝返りを打ち後ろを見ると、カナリアがすがるような目で俺を見ていた


「……ああ、本当だ。すごく、綺麗だよ」


キスをした


婚約者だし、両想いなら、怒られないよね?


唇を放し、俺は起き上がる


「今のはその、俺の気持ちの証明、みたいな」


それより、と続ける


「カナリアはいいのか?本当に」


「もちろんだっ!」と彼女は間髪入れずに起き上がり答えた


「私たちエルフは、歳の差など気にしない。私は君との会話が、好きだ。たまによくわからないことを言ったりするところとか、恥ずかしくなると頬を赤くして目を逸らすところとか!……とにかく私は君が、ソーヤが好きだ」


とても嬉しかった飛び上がって叫びたいほどに嬉しかった


これがリア充っ!なんと素晴らしいっ!


「歳は気にしないんだが、その、ソーヤ」


なんだ?


「中身は、精神は特別で大人なのだろうが、ソーヤの体はただの人間なんだ」


そりゃ知ってるが、あ、なるほど。察しましたよ俺は


「そういうことか。確かに、種族の壁は越えられないな…」


もし俺が勇者になったとして、カナリアと結婚しても、彼女からしたら俺は圧倒的な早さで死を迎えることになる


「それで、だ。ソーヤ、エルフになるつもりはないか?」


「はぃ?」


「ソーヤの人間の血と、私のエルフの血を少し入れ替える」


マジか、なにそれ半バンパイアになる方法?ダ○ン・シャン?


懐かしいな。何十年前の作品だろうか


「そんなことできるのか?」


「ああ。エルフの血によって、君の体は少しずつエルフのものに変わっていく。そうだな、大体5年ほどで完全なエルフになるだろう」


「すごいな。つまり俺の耳は5年後には尖っているのか?」


カナリアはこくりと頷く


「外見的には人間とエルフはかなり近いからな。見た目の変化は耳ぐらいだろう。あとは、細胞も進化してエルフのものになるわけだから、特殊体質スキルは受け継がれさらに強化されるだろうな」


なんと便利な。非科学万歳、ファンタジー万歳


「ただ、人間の血をエルフの血が侵食していき、体が変化している時はそれなりの痛みが伴う。成長痛みたいなものだ」


それくらいどうってことないな


「いいぜ、なってやるさエルフ。お前と長く一緒にいたいからな」


「う、うん」


照れて目を逸らすカナリア。可愛いっ!


「どうすればいいんだ?」


「顔、こっちに」


言われるがままに俺はカナリアに近づく


カナリアはどこからともなく取り出したナイフで俺の上唇と下唇を切った


赤い雫が滴る


そのあと自分の唇も切り俺の唇と重ね合わせた


不思議なことに俺の上唇の血はカナリアの上唇に、カナリアの下唇の血は俺の下唇に流れ込む


キスをすること1分ほどで、カナリアは俺から唇を離す


「早いな、もう終わったのか?」


「いや、君の特殊体質スキルで…」


唇に触れると、傷が塞がっていた


「ああ、自動回復オートヒーリングか」


「この調子だと、あと何回か繰り返すひつようがあるな」


すこし顔を赤くしながら、明るい声で言う


それから、計5回カナリアとキスをした


全て終わったあと、俺の魔法の練習も兼ねてカナリアの唇の傷を癒した


「ありがとう、すまないな」


俺はベッドに横になり、大きくあくびをする


「んんんっ!疲れた」


俺の隣にカナリアも横になる


「さすがに狭くないか?」


すると、カナリアは赤くなりながらほそぼそと声を紡ぐ


「重なれば、狭くない、と、思う」


マジですか、夜伽よとぎですか、初めての共同作業ですかっ!


俺は元気になる局部を無理やり抑え込み、カナリアの顔を見る


「それは、結婚してからだ。俺はちゃんと約束を守る。だから、な?」


うほほっ、リア充っ!リア充っ!


「……わかった」


「あの、カナリア。……俺、抱き合って寝たい。あ、絶対変なことはしないから!」


俺の中学生の頃の夢は彼女に抱きつくことだったのだが、残念ながら彼女なんかできなかったのだ


「自分で狭いって言っただろう」


「いやいや、大丈夫だよ」


そういってカナリアを抱きしめる。暖かい肌の温もり、シャンプーのいい香りが伝わってくる


「甘えん坊なのか?君は」


ふふっ、と笑いカナリアも俺を抱きしめる


思春期男子は面倒くさいのだ


思春期過ぎてるけど



* * *


翌日、俺は親父が仕立てたレザーアーマーを装備して門の前にたっていた。背中にはお下がりのロングソードを背負っている


「うむ、なかなかかっこいいな。俺には劣るが」


余計な一言をつけ、カルドスが感想を言う


「ソーヤ、無茶しちゃだめだからね?死ぬんじゃないよ」


ナナリーは涙を堪えている


「ソーヤ、これ」


カナリアが俺に丁寧に畳まれた布を手渡してくる


広げてみると、それはカナリアとお揃いのマントだった


「丈夫だし、寒さをしのげる。いくら夏だと言えど、夜はかなり冷えるからな」


「ありがとうな、カナリア」


礼をいい、マントを纏う


たとえ真夏の日差しが俺を襲おうとも、俺は昼もこのマントを抜いだりしない!


「目的地はオルカ村だったな?」


「うん。ここをまっすぐ行けばいいんだろ?」


カルドスが頷く


「カナリアはこれからどうするんだ?」


「私は森に戻るよ。我々エルフも魔物の凶暴化について色々調べているからな」


「そうか。なら、父さん、母さん、行ってきます」


カルドスは無言で俺の頭をわしゃわしゃとなで、ナナリーは俺の頬にキスをした


それから、俺はカナリアに向き合い、抱きしめてキスをした。少し背伸びして


「それじゃっ!待ってろよ、カナリア!」


惚けているカナリアに言い、俺はオルカ村を目指して走り出す


恋愛したことないんで、その辺の描写は我慢してください。


がんばって文章の練習します

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