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異世界で勇者になる  作者: 風美 佑
始まりと出会い編
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第1話

構えたバスターソードに、月の光が反射して淡く輝く


今狙っている獲物は、前方4m先をのそのそと歩いているワイルド・ボアだ


ワイルド・ボアは、肉と毛皮、牙がそこそこの値段で売れる。今夜の飯代にはなるだろう


気づかないように足音を殺しつつ走りより、攻撃のタイミングをはかる


───ここだッ


「うおらァッ」


俺の掛け声に反応して振り向いたヤツの眉間に、バスターソードを突き刺す。


グチュッと脳が潰れるような不快な音がしたが、聞こえない聞こえない


ワイルド・ボアはしばらく痙攣していたが、やがて力尽きた


こうして頭を潰した方が、素材となる毛皮をほとんど傷つけないで済むのだ


腰に差してある解体用のナイフで毛皮を剥ぎ取り、肉の食べられる部位と牙も回収する


ようやく狩りにも慣れてきた。


今日は計5匹のワイルド・ボアを倒した


では体験したことのない、死と隣り合わせの狩りというのは、ずいぶんと精神にも負担がかかるもので、俺は心身ともに疲弊しきっていた


疲れきった体を引きずり、俺、ソーヤ=ウィルシードは宿をとっているオルカ村へ帰る


オルカ村は人口500人ほどの小さな村で、とてものどかな所だ



門をくぐり村に入り、問屋へと向かいながら立ち並ぶ家々から漂ってくる夕飯の匂いを嗅いで、夕飯を当てる遊びを始める


「お、この匂い、シチューか。よし、今夜はシチューにしよう」


そうこうしている間に問屋につく


「こんばんは〜」


扉を開け中へ入ると、カウンターには4歳くらいの綺麗な赤髪の少女がいた。いや、幼女がいた


「いらっしゃませ!パパよんできましゅ!」


トーマスさんの愛娘、ミーリちゃんだ


とてとてと、カウンターの奥へ引っ込んでいった


夕食でもつくっているのかな?


しばらくして、問屋の主人のトーマスさんが出てきた


「いやあ、すまんな。またせてしまった」


トーマスさんが白髪混じりの頭を下げて謝ってくる


なにかあったのだろうか。元気がない


「いえいえ、頭を上げてください!こんな時間に訪ねた僕が悪いんですから!」


そんな僕を見て、トーマスさんが笑う


「ははは、トーマスさんジョークだよ。相変わらず君は礼儀正しいなあ」


あ、いつものトーマスさんだ


「もう、からかわないで下さいよ」


部屋の中に二人の笑い声が響く


「さて、今日は何かね。珍しい木の実でも拾ったのかい?」


ガハハと笑うトーマスさんの前に、ワイルド・ボアの毛皮と牙をだす


「ふむ、ずいぶんと綺麗に毛皮を剥ぎ取れるようになったな。お前の始めて持ってきた毛皮、覚えてるか?まるでボロ雑巾みたいな」


「もういいですから、換金お願いしますよ」


トーマスさんの話を遮り、換金を要求する


「ん?ワイルド・ボアを狩ったんなら、肉もあるはずだろう?」


「残念ながら、あれは僕の夕飯にするんで」


トーマスさんが食い下がる


「いやいや、5匹も狩ったんだから、少しくらい…」


夕飯につかうのは、1匹分の肉でいいので、残り4匹の肉は、干し肉にしようと思っていたのだが


「わかりましたよ、1匹分だけですよ」


と、1匹分の肉もだしてやる


「ありがてぇ。おおいミーリ!夕飯のおかずが、このお兄ちゃんのおかげで増えたぞ!肉だ!肉!」


とてとてと、満面の笑みを浮かべてミーリがやってくる


「うわあい!にくーにくー!おにいちゃん、あいがと!」


うわあ、可愛い。この娘のお腹が満たされるのなら、1匹分の肉くらい安いもんだ


「牙が10本、毛皮が5枚、あと肉だな」


「肉のお金はいいです」


「ほんとかよ!あんがとな。そいじゃあ、牙1本が1デリム、毛皮は今回は綺麗だから、1枚で2デリムにしといてやるか。デリム銅貨20枚と、ケトム銀貨2枚、どっちがいいか?」


「夕飯代で使うので、銀貨1枚と銅貨10枚で」


「よし、1ケトムと10デリムだ!もってけドロボー!」


「ちゃんと対価はらいました!」


ガハハ、と笑うトーマスの声を聞きながら、問屋を後にした




次に向かったのは村で唯一無二飲み食いのできる店、山猫食堂だ


店の前にくると、賑やかな声が聞こえてくる


中に入る。俺はここが好きだ。いつも笑い声に溢れている


カウンターから、バカ騒ぎしている客を微笑みながら見つめているテナーおばさんに話しかける


「あらソーヤちゃん。今日は何にする?」


「今日は材料があるので」


肉をカバンからだして言う


「この肉でシチューを」


「はいよ。待っててね」


テナーおばさんはすぐに料理を始めた


テナーおばさんは、茶髪で優しい目をした人で、ここ山猫食堂を旦那さんのホティおじさんと切り盛りしている


ホティおじさんは、いつも畑仕事で忙しいので、お店にいるのはだいたいテナーおばさんだけだ


しばらくすると、ミルクの濃厚な香りがテナーおばさんの鍋から漂ってくる


やべ、ヨダレが


「おまたせ。ワイルド・ボアのシチューだよ。値段は肉は出してもらったから、半額の2デリムでいいよ」


俺は代金を支払って、スプーンを手に取る


「いただきます」


一口食べる


うまい。とてもうまい。ミルクの濃厚なコクと、肉、野菜のダシが溶け込んだスープ。柔らかく煮込まれた肉と野菜は、口に入れると、溶けるようなかみごたえ?ダメだ。俺はグルメリポーターにはなれないな。いやあ、とにかく美味い


「とても美味しいです!」


「そうかい。それはよかった」


ニカッとテナーおばさんが笑った



シチューはあっという間になくなった


ごちそうさま、と言い残して宿へと向かう


ベットに寝転び、うんと背伸びをする。


あ、風呂に入ってないな。まあ、明日の朝に入るか


寝巻きへと着替え部屋の明かりのロウソクを吹き消し、ベットに入る


天井を見上げて、考える


「…こっちの暮らしにもずいぶんと慣れたなあ。あっちの俺はどうなったのかな。死んだのか、それとも意識不明になっているのか…はっ。考えるのもバカみたいだな」


ブツブツと独り言を呟く


今日の疲れが出たのか、あっという間に寝てしまった

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