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どうやら最強の女の子を恋に落とさないといけないらしい  作者: ラー油


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5.純愛過激派

 「あら?あれは……」

 訓練場を出ると近くに男子生徒がいることに気づく。

 目を凝らして見ると、かなりの美形でカッコイイ系の部類だ。

 そして別の意味でかなり印象深い人物だった。

 「同じクラスの榊真守さかきまもるだね」

 厳格名前と容姿から女子からの第一印象はかなり高かったが、発した一言目で一気に最底辺まで落ちることになった。

 「おはようございます。榊君」

 東雲が笑顔で挨拶をすると榊はこっちに気づくと奇麗な横顔を向ける。

 この一瞥で惚れてしまう女子もいる気がする。

 「これはこれは、東雲と七ノ瀬じゃないか。こんな朝早くに、こんな場所で何をしているのかな?」

 「お互いに早く教室にいたので、軽く学校の施設を紹介してたんです」

 「この純愛過激派の僕から見て、疑わしと言わざるおえないな」

 そう、この榊という男は開口一番に純愛過激派を自称したのだ。

 喋り方のオタクっぽさもあって話しかけにくくなった。

 「疑わしいもなにも、俺と東雲は会って二日目だぞ」

 「それにしては親しそうだと感じるがね」

 榊の言葉に俺と東雲は目を合わせる。

 昨晩のことが関係しているのだが、口にはできない。

 「東雲の性格的にそう感じるんじゃないか?」

 「それはお互い様だろう。二人とも尊重するような性格に見える」

 その言葉に俺は納得する。

 加えて印象よりも榊は鋭いというか、人を見ている。

 「それで、榊は何をしていたんだ?」

 「二人と同じでこの学園の探索をな、特に図書館は素晴らしかった」

 榊はそう言って一冊の小説を取り出す。

 どこか儚げな表紙にタイトルからは恋愛ものだということが分かる。

 「それは純愛ものってやつ?」

 「分からん」

 てっきり純愛ものしか見ないタイプかと思ったが、自信満々に否定される。

 「私はこのような小説には詳しくないんですが、この雰囲気で結ばれないことがあるんですか?」

 「結ばれるだけが純愛ではないのだよ。奇麗な姿だけを残すために自ら離れたり、結ばれずに見守ることだって純愛と言える」

 「な、なるほど」

 東雲は興味深そうに何度も頷く。

 その姿に嫌悪感といったものは含まれておらず、東雲はそういったものに触れてきていないことが分かる。

 「今度オススメを教えてやろう」

 「是非お願いしますね!」

 榊は東雲の反応に満足したのか嬉しそうに頷く。

 「それより、あの建物は何なのだ?僕の能力が通らないのだが」 

 「あれは外部からの能力を弾く素材で作られているんです。生徒証を求められる施設はそのような仕様になっています」

 「なるほど、所々能力が通らないのはそう言う事だったのか」

 「榊の能力は確か〈イメージの共有〉だよな?施設に弾かれるってどうゆうことだ?」

 純粋な興味からそう聞くと、榊は楽しそうに笑いながら答えてくれる。

 「僕の能力は指定した範囲の中にいる人に僕のイメージを共有するものなのだよ」

 榊はそう言うと煙色の円が広がっていく。

 円はかなりのスピードで広がり、止まる気配も榊がキツそうな気配も見せない。

 円は校舎に届かない位置で止まり、直径四十メートルといったところだ。

 「何のイメージがいいだろか?ここはやはり――」

 榊がそう言うと視界が暗くなり、木々に囲まれた人の気配がない展望台にいる。

 「これは?」

 東雲も俺と同じ景色が見えているらしく、辺りを見渡す。

 すると裏の方に二人の男女がお互いを見つめているのを発見する。

 頬が高揚し、瞳が色づいているのが分かる。

 直感的に告白の場面だと察した俺たちは隠れるようにしてその場面を見る。

 「俺さ!お前のことが好かで――」

 好きと言いかけたところで花火が上がり、声がかき消される。

 「ごめん、花火の音で聞こえなかったや。もう一回言ってもらえる?」

 お約束のような言葉に男の子は間髪いれずに口を開く。

 「好きです!」

 「ん?ごめんもう一回」

 俺や東雲にも聞こえるぐらいの声量だが、女の子はもう一度と催促する。

 四回ほどこのやり取りを繰り返した後、女の子は男の子に抱きつく。

 「私も大好き!」

 満面の笑顔でそう口にする姿は純愛と言える。

 そんな事を考えていると、視界が元に戻る。

 隠れるような姿勢をとっていたせいで、東雲との距離が近くドキッとするが、東雲は違うようだった。

 東雲は顔が真っ赤でフリーズしている。

 それは俺との距離が近かったからではなく、さっきまで見えていた告白のシーンによるものだとわかる。

 どう声をかけるか迷っていると、大きな拍手が鳴り、東雲はビクッと身体を反応させて立ち上がる。

 「素晴らしい!素晴らしい話だった!」

 榊は感動の涙を流している。

 自分の世界に入っているようだったので、先に東雲と話す。

 「内容は内容だけに判断しづらいけど、強い能力だよね」

 「そ、そうですね、あの速度で円を広げられると逃げるのは難しいです。防ぐ方法がない人にとっては厳しい相手だと思います」

 榊は赤色の能力だが、かなり強い部類になりそうだ。

 「ところで、二人のタイプは何だ?もちろん同性でも人じゃなくても構わない」

 榊から答えるのに恥じらいのある問が投げかけられ、東雲の方を見ると少し困っているようだった。

 ただ榊は答えて当然だという表情をしているので答えないわけにもいかないだろう。

 「俺は強く誇り高い人かな」

 俺は任務のこと抜きで思ったことを口にする。

 「強く誇り高い人か、分かるぞ。僕も強いわけではないから、守ってくれる人は惹かれるぞ」

 榊はそう言って力強く頷く。

 俺も共感したので頷く。

 「東雲はどうなのだ?」

 「わ、私は……対等な人でしょうか?」

 東雲の解答に榊は俺の肩を掴む。

 「脈無しだな」

 「お互いにな」

 「そんなつもりはないのですが……」

 俺たちは軽口を言い合ったつもりだったが、東雲の表情はかなり暗かった。

 俺と榊は笑い飛ばせるような雰囲気ではないこと察する。

 「まあ、なんだ、対等と言っても強さだけではないからな」

 「そうだな、勉強でもスポーツでも色々あるしな」

 俺と榊はそう言って会話を打ち切る。

 「おっと、もうこんな時間か。そろそろ教室に戻るか」

 「そうですね、遅れてしまったら本末転倒ですから」

 俺と榊は頷くと教室に向かって歩き始める。

 「そういえば、榊の能力ってどこまで届くんだ?」

 「学園全体には届くぞ。ただ遠い人には精度が落ちるし、一度に発動できる人数は限られるがな」

 「人がどこにいるか認識できるの?」

 「それはできるぞ、遠くだろうが認識できないことはない」

 榊の言葉に俺と東雲は目を合わせる。

 索敵という面では反則なぐらい強い。

 「……強いね」

 「まあ、出力的にこんなものだろう」

 「そうなのか?正直言って赤色の能力なら相当強いんじゃないか?」

 あまり能力に触れてきたわけではないので分からないが、東雲も頷いて肯定していることから間違ってなさそうだ。

 ただ当の本人は気の抜けた顔をしている。

 「ふっふっふ、そうか僕は強かったのか。これはモテてしまうかもしれんな」

 榊は決め顔でそう口にする。

 「榊はモテたいのか?」

 「モテたいが、やたらとモテたいわけではない。純愛としてモテたいのだ」

 「特定の一人でいいってことか」

 「そういうことだ」

 そんなことを話していると教室に着く。

 「案内してくれてありがとう東雲」

 「いえ、私も凄く楽しかったですよ」

 最後に東雲にお礼を言うとチャイムが鳴る。

 「おはよう東野」

 「おはよう七ノ瀬。それより東雲と随分と仲がよさそうじゃないか」

 「誰かと話せたらと思って早く学校に来たら東雲がいて、学校を案内してもらってたんだ」

 「な、なるほど、俺は早起きが苦手だからなー」

 そう言って悔しそうにする東野だった。


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