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どうやら最強の女の子を恋に落とさないといけないらしい  作者: ラー油


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4.主要な施設

 「ふぁー、眠い」

 日彗学院に入学して二日目、俺は始業の三十分前に教室についていた。早めに教室にいることで交友関係を広げろとのことだった。

 言われたことは正論だが、交友関係を広げられるかは分からない。

 緊張しつつ教室のドアを開ける。

 すると小麦色の髪が揺れ、口の前に小さな手を置いて白い息を吐く。

 するとほうきを持った兵士が現れて地面を掃除し始める。

 「あ、おはようございます七ノ瀬君」

 「おはよう東雲。随分と早いね」

 「はい、せっかくクラスが変わったので早く来てみました」

 「俺もそんな感じかな。それに高校から入ってきたわけだし」

 一人で誰かが来るまで待つことも覚悟していたが杞憂だったらしい。

 そして問題はここからで、何を話すかどう行動するかを試される。

 「それなら、せっかく時間もあることですし学校を見て回りませんか?」

 「もちろん、凄いありがたいや」

 「決まりですね。まずは図書室から行きましょうか」

 俺は東雲についていくように教室を出る。そして階段を降りて校舎を出る。

 「図書室はクラスで話し合う時に最も使われる場所です。どちらかと言えば会議室な側面が強いです」

 校舎を出てしばらく歩くと五階建てのガラス張りの建物につく。俺が想像していた図書室は校舎の中にあるイメージだったが、そこらにある市営のものよりも遥かに大きい。

 図書室の中に入るとゲートがあって学生証をかざすことで中に入ることが出来る。図書室は地下一階から五階までの計六階だ。

 一階はラウンジ的な側面が強く、係りの人がいたりだったり最近の本が並んでいる。

 「主に生徒が使うのは一階以外で、各階に防音の個室があるんです」 

 東雲はそう言って地下に降りる階段に向かう。地下への階段はかなりの段数があり、換算すれば地下二階ぐらいに位置するだろう。

 「うわ、広いな」

 「ふふ、地下には大中小それぞれの相談室が計十五部屋あります。印刷機やテレビプロジェクターといった機材もあるので頻繫に来ることになると思います」

 相談室や機材の使用にはネット上のポータルサイトで行い、どこからでも申請可能だ。

 二階から上は少人数で使える個室と、個人で使える勉強用の部屋がある。蔵書数は十五万を超えていて一生かけても読み切れないだろう。

 「図書室の次は訓練場に行きましょう」

 「訓練場?」

 「訓練場は体育館と違って能力を使う為の場所で、自由に能力を使うことができます。予約制の場所と当日使える場所が複数個あるので使えないことはないと思います」

 東雲が案内した訓練場当日制のもので学生証をかざすことで入ることができる。ただこの時間に訓練場を使用している生徒はいない。

 訓練士の中は体育館以上に広く、コンクリート製の障害物がいくつも置いてある。

 「俺には縁のなさそうな場所だけど、東雲はよく使うの?」

 「よく使ってましたね。主に必殺技ができるまでですが」

 「必殺技か、魅力的な響きだね」

 「見てみますか?」

 「それは是非」 

 楽しみな気持ちが芽生えた僕がそう答えると、東雲は例のケースを取り出し、ジッポライターとタバコを二本取り出し、ジッポライターとタバコを一本僕に手渡す。

 「この技には少し溜めがいるんです。普通の状態でもできるんですが、少し大変なので」

 「ますます必殺技らしくなってきた」

 俺は東雲から道具を受け取ると教えてもらいながらあるジッポライターを点火する。

 蓋を開け、ホイールを親指で回して火をつける。

 そしてタバコを咥え、先端に火をつける。どれぐらい火をつけるか分からず手こずったが、無事に点火され無味無臭の空気が口に入ってくる。

 一度タバコを口から離し、白い煙を吐き出す。

 そして東雲に視線を送ると目が合い、東雲はタバコを咥えて顎をつき出す。 

 火をつけて、という意味なのはすぐに理解したが悪いことしているような絵面にドキッとする。

 冷静になる為と片手を空ける為にタバコを咥えると、再びジッポライターに火をつけ、片手で火を隠すようにして東雲のタバコに火をつける。

 一回もやったことない動きでぎこちなかった。

 「さて、時間もありますし少し私の話を聞いてもらえますか?」

 僕は頷いて肯定すると東雲は話し始める。

 「今年の高校時編入の人は例年よりも多く、能力の強さも強いものばかりです。七ノ瀬君のように情報を得たり、一癖ある能力者が多いんです。シンプルな強さではなく、絡め手による強さが多いということです。これは負け癖のついた内部生に刺激を与えるためだと思います」

 最強がいるこの学校だと二番手以降が確定している。

 だから勝ち方が難しい能力者を増やして刺激を増やす。

 もしかしたら日彗学院は改革を求めているのかもしれない。

 「近々、なんらかの大きな試験があると思います。例年通りなら多くの人と協力しないといけない試験ばかりで、相談と練習が必要になると思います」

 「そっか、その為に図書館と訓練場を案内してくれたのか」

 「……この二つの場所を知らないと出来ることが限られてしまいますから」

 東雲の経験則から教えてくれたのだろう。

 作戦を考えるにあたって学校の施設の説明から始まっていたらグダグダするところだっただろう。

 「ありがとう東雲。おかげで試験に困らなくて済みそうだよ」

 「気にしないでください。私が出来ることなんてこの程度ですから」

 「そんなに自分を下げる必要はないよ。十分助かってる」

 「それならよかったです」

 東雲はそう言って安心したような顔になる。

 「さて、そらそろ溜めも十分になったことですし、必殺技をお見せしましょう」

 東雲はそう言うとタバコを指で挟み、大きく息を吐き出す。周囲に充満していた白の空気が渦を巻き、東雲の後ろで天使の形をなす。

 すると東雲は頭に天使の輪ができ、白いヴェールに包まれる。その姿は神々しくて見惚れるほどだった。

 「これは大天使の加護と言って、周囲の索敵と身体能力の強化、そして攻撃を防ぐ効果があります」

 東雲はそう言うと付近にあったコンクリートの破片を拾って俺に手渡すと、自分の方に投げるように言う。

 その指示に従って破片を勢いよく投げつけると、見えない壁のようなものにぶつかって東雲の眼前で止まる。

 「そして加護をしている大天使を消費することで必殺技が出せます。この子はウリエルなので攻撃技ですね」

 東雲はそう言って腕を振るうと、後ろにいたウリエルが光を放ちながら咆哮する。

 「懺悔の刻(ざんげのこく)

 東雲がそう言うと暗い藍色の炎が唸りをあげながら放たれる。 

 目の前のコンクリート製のブロックを一瞬で焼きつくと訓練場は更地になる。

 「こんな感じですね」

 「そ、想像してたより遥かに広範囲で高火力だね。正直ここまでのは予想外だったよ」

 もう少し可愛いものかと思ったが、蓋を開けて見れば殺意の塊のような技が飛び出してきた。

 今まで黄金の能力は見たことがなかったがここまでとは思わなかった。

 「この炎は対象を焼き尽くすまで消えません。なので人に対して使ったことはないですし、ほとんどの人には見せたことがないんです」

 確かにこの技は見せるだけで人に対して恐怖を抱かせるにたるスペックだろう。

 無論人に使うなんて論外だ。

 「それでも七ノ瀬君にお見せしたのは、私の力をアピールするためです」

 東雲はそう言って右手の二の腕で力こぶをつくる。

 「私はこんなに強いんですよ!」

 東雲は声を上ずらせそう口にする。そのセリフが似合わなくて思わず笑ってしまう。

 「へ、変でしたか」

 東雲はそう言って恥ずかしそうな顔をすると肩を落とす。

 「ごめんごめん、そういう意味で笑ったわけじゃないんだ」

 俺がそう言うと東雲は少し拗ねたような顔をする。

 「どんな形であれ、東雲と知り合えたのはよかったよ」

 「ふふ、私も七ノ瀬君と知り合えてよかったです」

 東雲はそう言って可愛いらしい笑顔を向けた。


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