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少年と宇宙  作者: 津本ジオ


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新たなる目標

倒れ伏している教祖ザルヴァに近寄り、無針注射器でマーカーを注入。人間用のこれがロボットに対して有効なのだろうかと考えつつ……。

このマーカーは、微細なアンテナと応答器を血管にばらまき、人体をトランスポンダーとして機能させる一種のアレイシステムだ。

再犯の懸念がある重度性犯罪加害者などに定期的に投与される。


「おつかれさま。ベイブ」

マーカーの注入が終わり、アステルをねぎらう。

「ありがとう、ベイブ。大丈夫、マーカーは応答している」

アステルに心を読まれているようだ。でもエトナさん以上に抵抗を感じないのはなぜだろう。

「本当に人間そっくりだ。よく気づいたね。ベイブ」

「生体アンドロイドみたい。体の構造が人間と違う」


二人で手分けして、終末の審問官の構成員と思われる三十二人の聴講者の拘束を終える。

「ちょっと待ってて。ザルヴァの表層記憶をダウンロードする」

ザルヴァの頭に両手をかざすアステル。

「了解、ベイブ」


N二四七のブロックの入口(接続部)に戻りササナミさんに報告。

「作戦終了。ザルヴァは無力化してマーカーを設置。その場にいた三十二人を拘束」

『おつかれさまー。お手柄よ、ジーンちゃん、アステルちゃん。回収斑を向かわせるねー』

「それとザルヴァは人間ではありません。ベイブによると生体アンドロイドだそうです」

『なるほど……それで神出鬼没だったのね』


倉庫街の一室、僕たちの待機場所に戻るために地下搬入路を進む。

「ベイブ、ザルヴァの記憶が一部解読できた。侵略者のエネルギープラントが見つかった」

ザルヴァの記憶の解析が終わったらしいアステルが話す。

「それはどこにあるの?」

「この下。上部マントル層にある」アステルが床を示す。

「シガ・シェルターの地下深く?」

「そう。思考機械もそれほど遠くない場所にあると思う」


待機場所で服を着替え、装備をバックパックに戻していると、ササナミさんが話しかけてきた。

『ザルヴァを確保したわよ-。違法サイボーグ用の重隔離室で監視中。下っ端連中は保安課の留置室行きね。きっと厳しい尋問になるわ』

「ササナミ。シガ・シェルターの地下深くに侵略者のエネルギープラントがある」

『え、嘘でしょ?』

「本当。ザルヴァの記憶を読んだ」

『精密スキャンで生体アンドロイドなのは確認したけど……アステルちゃん、記憶が読めるの? すごいね!』

ササナミさんがアステルの能力に興奮している。

「表層だけ。もっと調べるにはこの形態だと無理」

『ほかには何が分かったの?』

「ここ最近会った人物。それとヨハンの体の使い道」

『そのデータをちょうだい!』

「データを送る」


「ヨハンの体の使い道って?」

気になったのでアステルに質問。

「脳の代わりに制御装置を埋め込んで便利な道具にするつもり。中央公園で自爆させるとか考えてた」

夜のとばりのなか、たくさんの人でにぎわっていた中央公園。

クレープを焼いていたシロクマのようなおじさんを思い出す。気のいいシロクマさんを巻き添えにするつもりだったのか……。

「それで停滞カプセルにまで入れて保管していたんだ……。なぜヨハンの体をわざわざって思ってたよ」

「作戦が終わったら、ヨハンは自分の体に戻るつもりだったのかも」

やはり、最後まで使いきってから切り捨てる気だったんだ……。かわいそうなヨハン。


「ササナミさん。ザルヴァを捕縛したあと、隠れ家の方に動きはある?」

『保安課のエージェントに確認したわ。四名がひっそり潜伏しているみたい。停滞カプセルは変化無しだってー。とりあえずは大丈夫じゃないかな』

「ベイブ、先にエネルギープラントを押さえよう」

「分かった」

次の目標が決まった。


夜明けとともに待機室から地上に向かう。ドーム型の天蓋パネルが東部下端から明るくなっていく。夜明けの演出だ。

『ここから近いトラム乗り場は中央ブロック北よー。トラムを回しとくわね』

「ササナミさん、ありがとう。一旦仮眠室に戻って休憩します」

『あの部屋のお風呂、天然温泉なのよ。楽しんでねー』


それは楽しみだ。

毎日23時に更新中。


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激動への序章 ~来訪者~

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