アジト潜入
中央公園をあとにして、反時計回りに中央ブロックを一周する。
陶芸店やアクセサリーショップを冷やかしながらアステルと散策する。
天蓋パネルの照明が落ちはじめ、未成年はそろそろ帰宅する時間。
僕たちはササナミさんから伝えられた待機場所に向かう。中央ブロック北側の倉庫街の一室、そこで準備を行う。
ロッカーにテーブルだけの殺風景な部屋。テーブルの上にはバックパックが二つ。僕とアステルの装備だ。
インナー、ホルスターつきのボディスーツ、コンバットブーツ、それぞれの銃、バトン、ロープ、懸垂昇降機、その他装備類……。
背中合わせで服を着替える。着ていた服はロッカーに収納。
銃を手に取る。セーフティーオン。マガジンを確認。二十発フル。チャンバーを開きエンプティを確認。
ホルスターに無反動銃とバトンを装着。バックパックを背負う。ゴーグルをつけてタクティカルモードに。アステルを見ると漆黒のゴーグルをつけていた。僕も同様に見えるはずだ。準備完了。
僕のインナーは異星技術のスラスターつきだ。人前で目立つ使い方はできない。
スラスターを作動。真上に飛び上がり天井の搬送レールを掴む。アステルに合図を送り手を放す。落下。接地寸前に急減速。膝を深く曲げながら着地のポーズ。
アステルはサムズアップでこちらを見ている。どうやら合格らしい。
『保安課から最新のデータが入ったわ。アステルちゃんに送っとくねー』
ゴーグルに映し出される基本ブロックの構造図を見ながら、アステルと侵入経路の最終確認。
保安課からの情報を加味して侵入経路を決定。
目標は四部屋をぶち抜いて作った集会所。ちょっとした講演会ならできそうだ。
今夜、教祖ザルヴァがここで講演をするらしい。
日付が変わったころ、首元のチョーカーから声がする。
『準備できたかなー。見張りを引き上げさせたわよ。成功しても失敗しても、ここに戻って来てねー』
相変わらず気の抜けるササナミさんの声に送り出され、地下搬送路を使い北ブロックへの移動を開始。
頭上を自走コンテナが走り抜ける搬送路を進むと、通路の色が変わる。北ブロックに入ったようだ。
北ブロックはオフィス街に設定されているブロックだ。
この時間帯、路上には人けが少ないが、地下搬送路は自走コンテナが活発に移動している。
N二四七のブロック表示。目標の基本ブロックだ。
アステルが罠のチェックを行う。
「警戒装置とスプーフィングユニットがある」
「警戒装置は無力化。ユニットは詳細情報をササナミさんに伝えて」
「了解」
『うわっ、こんなの使ってたんだ。見つけられないはずよね。終末の審問官のアジト、保安課のみんなが聞き込みで突き止めたのー。人間ってすごいよねー』
「同意。人間すごい」
「これからアジトに潜入します。通信切りますよ」
「はーい、がんばって」
非常階段を上る途中、設置されていた警報装置はアステルが無力化。
非常扉の前につくとアステルに肩を掴まれる。ハンドサイン。見張りがいると伝えている。
お互いのバックパックを開き、防毒マスクを取り出す。アステルには不要なはずだが、無力化ガスは嫌な臭いがするらしく着用するそうだ。
マスクを装着。ダークグレイのボディスーツ。マスクにゴーグル。うん、立派な不審者二人組の完成だ。
嘆息しながら腰のポーチから小さなボンベを取り出す。
扉の換気口から無力化ガスを噴霧。ドア越しに人が倒れる音がする。
素早く扉を開き、もがいていた少女の首筋にアステルが触れる。少女はぴくりと痙攣して気を失う。
「下部構成員かな。僕たちと同じ年ごろだ」
チョーカーに内蔵されたスロートマイクにささやく。
「たぶん。見張りに駆り出されるのが下積みの仕事」
廊下を進みトイレに入る。天井の点検口から侵入。
前傾姿勢で躯体構造の上を進み、集会所を目指す。
「着いた」アステルのささやき声。
手順どおりポーチから集音器を取り出して集会所の音を拾う。
「たくさん人がいるね」
深夜の集会なんていかにもな感じだ。
「撮影している。広報用かも」
アステルがあっさりカメラをハッキング。ゴーグルに演壇に立つ男が映る。
四十歳くらいの男。以前見たハブ・ジャッカーの拠点で演説している映像と同じ顔。
あれ、二十年前と同じ顔?
「あいつ人間じゃない」
「ベイブ。どういうこと?」
「たぶん侵略者のロボット」





