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少年と宇宙  作者: 津本ジオ


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ウルフパックとの戦闘

「ハイジャック犯のウルフパックはどんなスラスターを使ってるの?」

「こちらと同じく電磁プラズマスラスターを使っていますね。バックパックの大きさから稼働時間は全力で五~六分程度でしょう」

『私もノワールと同意見です。動きから推察するに推力はこちらの方が上だと思います』

「足場の多い補給ステーションにいるのが問題だ。特にアルファの脚力には注意だ。瞬間的に最大で二十Gに達する」

「宇宙空間に引きずりだせってこと?」

「できればな」


「作戦目標は、スペースプレーンの奪還、ウルフパックの無力化、乗員の確保かね」

「それでいい。手順はどうする?」

「まずは、補給ステーションのハッチ付近にジーンとアステルを配置。シェルター周波数でスペースプレーンに投降を呼びかけてください」

「分かった。俺がジーンの通信機経由で呼びかけよう」

「そうですね、通信塔の機械知性ノワールに応援を頼まれた、コメンデッド(公務資格)ソルジャー(戦闘員)と名のるといいでしょう。ノーザンエンドには根回しをしておきます」

「まあ嘘ではないな。お前に雇われるのは癪だがな」

CS詐称は重罪だ。アルは九年前にCSに復帰しているから問題ない。今はノーザンエンド評議会に、戦略・戦術アドバイザーとして雇われている。


「投降しなければウルフパックを無力化してください。バックパックを破壊すればスラスターが使用不能になります」

「ヨハンは投降しないだろう」

「そうなりますか。ではウルフパックを無力化。それからスペースプレーンに移乗、乗員の身柄を確保ですね」

「ジーン、アステル。分かったな?」

「うん、大丈夫だよ」

「分かった」


「ジーンはスタッフを持っていけ」

スタッフって何だっけ? と首を(かし)げる。

「すまん。昔のセレスでの呼び方だ。実戦用の長杖のことだ」

「そうだった。短杖をバトンっていうのは覚えていたけど、長杖の呼び名を忘れてたよ」

「ヨハンはサイボーグ初心者だ。動きが読めないところが怖い。護身用に持っていけ。銃より応用が利く」

「なるほど。近接戦闘は極力避けるよ」

「そうしろ」


『ササナミから情報が届きました。ウルフパックは、シガ・シェルターの豊穣の角(万能自動工場)で製造されたものでした。スラスターも同様です』

「予想どおりだね」

『監視システムにクラッキングの痕跡があったそうです。秘密裏に造ったのでしょうね』

『サイボーグ技術者の情報も受け取りました。脳保護システムの開発者でもあります。データを投影しますね』

映像と文字が表示される。

「ヨーゼフ・サトウか。顔に見覚えがある。この映像でも黒猫のカフリンクスをつけているな」

「ヨハンも脳保護システムを搭載していますね。スラスターで重量が増した分を差し引いても十八Gのキック力ですか。脅威です」

「ヨハンが耐衝撃訓練を受けていればな。一朝一夕(いっちょういっせき)では身につかない」


「ブリーフィングは終わったかい? そろそろ補給ステーションに接近するよ」

不可視の跳躍艇が補給ステーションに近づいていく。

ハッチ手前で停止。

「それじゃ、行っておいで」

僕とアステルは準備室を通って宇宙空間に出る。跳躍艇はすぐに離脱。


外に出たところで早速姿勢制御を試す。思考制御でハッチ脇の外壁に取りつく。

ロックされて体自体は動かせない。

なるほど、スラスターを作動させるとこうなるのか。思ったよりも不便は感じない。

全身に噴射口がついてるから関節を固定しないと大変なことになりそうだ。


「アステル、準備はいい?」

隣に浮いているアステルに確認する。

「いつでも」

「アル、位置についたよ」

『よし。投降を呼びかける。……スペースプレーンの乗員に告げる。ウルフパックを待機モードにして投降しろ。こちらはコメンデッド(公務資格)ソルジャー(戦闘員)だ。機械知性ノワールの依頼で動いている』


『何だ今の通信は。どこからだ?』

『ヨハン、少し待て。発信源を特定する』

ノワールさんがハイジャック犯の通信を回してくれている。状況が手に取るようにわかる。

『早くしろよ、おっさん』

『お前のいる補給ステーションからだ。誤差は……百メートル以上はあるな』

『じゃ、補給ステーションの外だな。ここには俺たちしかいねえぞ』

『スペースプレーンで精密探査は不可能だ……いやライダー(LiDAR)があるか。指示を待て』

『待てるかよ。ナンバー1と2。外を見てこい!』

『推進剤を無駄に使うな。ライダーに反応。ハッチ横に取りついている。二人だ』

『遅えよ!』


「見つかったね」

「見つかった」

僕は無反動銃のセーフティーを外す。アステルは(見た目だけの)レーザーガンを構える。

二頭の機械狼が飛び出してくる。アクティブ迷彩のせいで輪郭が分かりづらいが、アステルの目は捉えている。

すぐにアステルからの情報を共有。輪郭が強調表示される。

先行している方を僕が担当。アステルは後ろの奴だ。セレスでの訓練が生きている。


大きなバックパックを狙って二回トリガーを絞る。ダブルタップという射撃技術だ。二発とも命中。

銃の反動を待ち構えていると、スラスターが作動。固定された腕に軽い衝撃。

アルが言っていた「骨格で銃を支えろ」が実践できている。ちょっと嬉しい。

一瞬体が揺れるがすぐに補正された。さすがノワールさんが作ったアプリケーション。優秀だ。

アステルが狙った方を見ると、バックパックに二つの穴。火花が散っている。外すわけがないか。

二頭の機械狼は慣性のまま飛び去っていく。二頭無力化、残り四頭。

「思考制御アプリケーション。優秀」

『そうでしょう、そうでしょう。宇宙空間での銃の反動にも対応しました』


『ウルフパックが二頭落とされた。投降するしかない』

『馬鹿かてめえ。俺様がついてるだろっ! 絶対殺す』

『無理だ。CSが二人だ。かなうわけがない』

『やってやんよ。倒せばいんだろ!』

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激動への序章 ~来訪者~

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