補給ステーションの攻防、再び 2
『ササナミにサイボーグ技術者の情報を請求しました。豊穣の角の稼働記録もです。早ければ十五分程度が回答が来るはずです』
「助かる。ウルフパックはシガ・シェルターで作ったものだろう。ヨハンとやらのサイボーグ化もな」
「アルを手術したサイボーグ技術者がいましたね。どんな人でしたか?」
「最初は短期記憶テストの測定員として会ったな。あとで、俺の手術を担当した技術者だと知って驚いた。名前は知らん」
「ふむふむ。アルの脳保護システムを考案したのも彼でしょうか。気になります」
「さあな。黒猫のカフリンクスを愛用していたぞ。お前さんとは気が合うかもな」
「ところで、アステルに簡易装甲服は必要なの? 自分の姿を変えられるよね」
「自由に変えられるだろうね。だが、地球の技術レベルに見せかけるのは大変だと思うがね」コハクさんが言う。
「セレスでの訓練は地球重力下で自然に見えるようにリソースを割いていた。負担を減らすために人間化を試みている」
アステルは、食事をしたいから人間の体になりたいのかと思っていた。アルの食事に対する執着が、僕の中では基準になっていたのかな。
シガ・シェルター潜入時に、普通の少女に見えるようにと、アステルにも僕の知らない苦労があったんだ。
「宇宙空間では装備によって制限をかける方が楽だと思うね」
「たしかに。我もそう思う。時期が早まったけど銃はできてる?」
アステルが指で銃の形を作った。
「ダミーのレーザーガンはノワールが作っているね。そろそろできると思うよ」
「助かる。チャンバーの形状に要望を出した。銃口を向けた方向に照射できる」
「ジーンのスラスターも電磁プラズマ加速タイプに変更してるところだよ。宇宙空間で戦うとは想定外だったね」
『上位種族の関与を知られないことが最優先です。知った者は人類社会には戻せません』
それは怖いな。サイボーグになったヨハンという少年は、両親のように元の体に戻れるのだろうか。
地球の技術では無理だろうな……。彼は今後どうなるのだろう?
「全て用意ができました。ジーンは思考制御アプリケーションでスラスターを違和感なく使えると思います」
ノワールさんが部屋に入ってきた。
「早かったね。アステルの装備も準備できたのかい?」
「ええ、ええ。こんなこともあろうかと準備していましたから」
「ノワール、そのアプリケーションを私にも送って」
「どうぞどうぞ」
ノワールさんが右前足を上げると、アステルが腰を落として手のひらを上に向ける。ノワールさんがタッチ。
ああ、どこかのシェルターが配信していた、犬と遊ぶ少女の映像みたいだ。たしか少女は「お手」と言っていたかな。
「ありがとう。これであたしもスラスターを動かせる。ジーンのも」
「ジーンが危ないときはサポートしてやってくれ」
アルが依頼する。僕は頼りないからね……。
「お二人とも推進剤の残量には注意してください。全力稼働で二十分が限界です。装甲服は準備室にあります」
ノワールさんがラックが設置されている小部屋に入っていく。僕とアステルも続く。
準備室にはラックが一台増えていた。装甲服には大きなバックパックと、無数のスラスターが生えている。
『見た目は旧小惑星連合軍の重装甲服ですね』
「そうですそうです。相手もそう思うでしょう」
「二人とも装着してみろ」アルも準備室に入ってきた。
足から装甲服にすべり込む。自動で体にフィット。左腕のコンソールを操作。ヘルメットが組み上がり装着される。頭部が透明なシェルで守られる。
隣を見ると、アステルも装甲服を装着済みだ。ヘルメットはミラーコーティングされていて顔は見えない。
「今までのスラスターとの違いは、作動中は関節がロックされることです。銃を使うときは気をつけてください」
「ウルフパックは補給ステーションに全機入ったな。基本的にアルファだけを相手にすればいい」
「他の五頭は?」
「ああ。ウルフパックは戦闘能力は高いが、制御中枢には制限がかかっていて人間を攻撃できない。これは秘密だがな」
アルが言うには、ウルフパック型ロボットが開発された時代は、人を殺すロボットという考え方が嫌悪されていたそうだ。
要人警護用ロボットとして開発されたウルフパックに殺傷能力は無い。この情報だけでも大助かりだ。
「鋭い爪と牙は威嚇用だ。だが武器は狙われるぞ。それからアルファはサイボーグだ。制限は無い。殺しにくるぞ」
スラスターの作動方式を変更(2026/03/29)





