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少年と宇宙  作者: 津本ジオ


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再びのセレス

「当たりですね。バウルを襲った侵略者の製造物でした」

ノワールさんの報告。甲虫の解析が終わったようだ。

「地球に侵略者の思考機械があるってことだよね」

「そうなるね。いつやって来たのかねえ」


「百五十年前のエッジが閉じる寸前のタイミングを狙ったのかもしれません」

『エッジが閉じたあと、シンパから報告がありました。エッジ観測ステーションは再建されずに、太陽プラズマ観測網で代用していたようですね』

「エッジが閉じる時期が確定している状態で、観測ステーション建造は負荷が大きかったんだろうね。エクソダス(大脱出)の真っ最中だったしね」

『太陽プラズマ観測網も退去の一年前には停止したそうです』

「空白の一年間を狙ったんだろうよ。内通者か密偵がいたのかもしれないね」


「甲虫にはLLM(大規模言語モデル)に似たライブラリが存在していました。簡単にいうと概念の関連度を示す分布数式群です」

「全然簡単じゃないぞ」

「そうですね。実例を挙げるなら、手段という概念に近接して減衰と感染を示す概念がありました」

「全く分からん」

(われ)がベクトル空間の解析を手伝った。平たく言うと、甲虫はフェイルノートの破壊による太陽光の減衰と、病原菌による集団感染(エンデミック)を攻撃手段として認識している」


「そういえば、ロサンゼルス・シェルターの集団感染(エンデミック)は変だったね。視神経を侵す感染症なんて今まで無かったよ」

「そうですそうです。私は侵略者の関与を疑っています」

「他にもやっていそうだな……」

「地球も調べないといけないだろうね」

「シガ・シェルターに行くの? 猫の姿のコハクさんとノワールさんは、見つかったらすぐに保護されるよ。機械狼のアルは身元がバレちゃうね」

「そうだな。ジーンとアステルに行ってもらうか……」


「では私たちは通信塔でサポートをしましょう」

「それしかないな」

「そうさせてもらうよ」

『私も異論ありません』

僕とアステルが、シガ・シェルターに潜入して調査することが決まった。


「ジーン、アステル。早速だが潜入調査の訓練をするぞ」

「分かった」

「とうとう地球に降りられる」

「どこで訓練するんだい?」

「セレスだな。大きな訓練施設がある。まだ動くはずだ。問題は重力だな」

「そこは私が何とかします。スラスターを改造して地球重力をエミュレートしましょう」

「さっそく向かうとするかね」

跳躍艇は金星L4を後にした。


「どんな訓練をするの?」

セレスに到着する前にアルに質問する。

「ジーン、お前は射撃訓練からだ。武器を渡しておこう。ノワール、あれを出してくれ」

「あれですね。了解です」

()()で通じるんだ……。

床が開いて小さなテーブルが現れる。テーブル上には大きなピストルが一丁。

「八ミリ口径の宇宙用無反動銃だ。地上でも問題なく使える」

手に取ってみる。ずっしりと重い。


「僕は未成年だから携行武器に触ったことはないよ。車載武器は訓練したけど」

「そうだったな。安全装置には触れるなよ。バースト射撃で三発まで無反動で撃てる」

「これで選ぶんだね」

銃の左側にセレクターがついている。今は三点バーストみたいだ。三発の弾丸が並ぶイラストが描かれている。

傭兵(CS)時代に使っていた特注の一点ものだ。信頼性は折り紙つきだ」

「ありがとう、アル。きちんと練習するよ」

「ああ、身を護れなければ何も始まらない」


「そうだ、アステルの武器は?」忘れていた。

「武器が必要なのか?」

逆に聞き返された。

「ノワールみたいにEMPを放射できる。レーザーも撃てる」

ノワールが僕の手の甲に指先を向ける。ほんのり温かい。

「赤外線レーザーかな」

「そう。波長と出力は自由に変えられる」

「武器いらないね……」


「もうじきセレスに到着だね。通信をつなぐよ」

「補助ユニット、キース・エヴァレットだ。入港したい。目的は重力下訓練施設の使用だ」

『照合クリア。四番サブポートへの着陸を推奨。現在、訓練施設は重力制御不能』

「分かっている。それ以外は機能するんだな?」

肯定(アファーム)。重力制御以外は正常に稼働可能』

「行くぞ」


跳躍艇がセレスに降りていく。

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激動への序章 ~来訪者~

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