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少年と宇宙  作者: 津本ジオ


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金星L4 レーザー中継ステーションへ

「仕込まれた攻撃プログラムを発見しました。かなり高度なソフトウェアですね」

停止したバックアップシステム調べながらノワールさんが言った。

「エトナにも送っておやり」

『ありがとうございます。こちらでも解析してみます』

「エトナ、プログラムの構造も解析してみて。機械知性がこの一件に関わっていたのか知りたいの」

アステルが追加で注文をする。

『分かりました。私のように強制的に従わされていた場合でも癖は出るはずです』


「バックアップシステムを復旧しようかね。アステルやっていいかい?」

「問題のソフトウェアの挙動は記録したから復旧しても大丈夫」

「ノワール、綺麗に掃除して再起動しておくれ」

「了解です。水星基地のシステムを総点検します。しばらくお待ちを」

「ジーン、バックアップシステムが正常になれば、制御中枢もやがて復旧するだろうよ。ここでの作業はそれで完了でいいかい?」

「コハクさん、それでいいよ。フェイルノートで復旧を待つより、誰の仕業か突き止める方がいいよね」

「そういうことさ。次は、金星L4のレーザー中継ステーション行くことになるね」

「フェイルノートの制御中枢は信用できると思う。よく乗っ取られずにがんばってた」

アステルも太鼓判を押してくれた。


「さあさあ、水星基地のシステムを再起動しますよ」

最初に、リカバリールームの照明が落ち、非常照明に切り替わる。

数秒後、部屋が明るくなりバックアップシステムのインジケーターが次々と点灯する。

最後に、メインコンソールのディスプレイに「起動中……セルフチェック開始」の文字が表示された。

「いいみたいだね。さっさと跳躍艇に戻るよ」

連れ立ってリカバリールームから出る。

帰りも狭いシャフトにみちみちに詰め込まれたりしながらエアロックに到着。


白いマニピュレータを通って跳躍艇に帰還。

このマニピュレータ(?)は本当に不思議だ。人が通れるほどの通路になったり、細く伸びて物を掴んだりする。

こういう未知のテクノロジーが地球人(エボルター)の欲望を刺激するのかな? 人ごとのようにそう思った。


『おかえりなさい』

跳躍艇に戻るとエトナさんが迎えてくれた。

「ただいま、エトナ。何か分かったかい?」

『問題のプログラムは量子アセンブリ言語で直接記述されていますね。私たち機械知性でも可能ですが、傾向として高級言語からのコンパイルを好みます。現代ではどうなっているか不明ですが』

「今も変わらないようですよ。コンパイラの性能について、機械知性が議論しているのをよく聞きます」

「機械知性の線は薄いようだね。あとは補給ポッドが、レーザー中継ステーションに何を持ち込んだのか気になるね」

「それでは、金星L4のレーザー中継ステーションに行ってみますか」

跳躍艇は水星基地のメインポートから飛び立った。


金星L4まで、少し時間があるので日課の基礎訓練を開始した。

呼吸、歩法、受身。それぞれの基本パターンをインナー姿で繰り返す。

跳躍艇の床は、程よい弾力があって訓練にちょうどよい。

アステルが興味深げに僕を見ている。

「ジーン、それは何をやってるの?」

「セレス流柔術の基礎訓練だよ。日課なんだ」

「ふうん、(われ)もやってみる」

アステルが横に並んで横受身を真似る。横転しながら床を羽打ち、反動で素早く立ち上がる。初心者とは思えない身のこなしで受身を取る。

「大したものだ。もう少し慣れたらジーンと組手をするといい」

そういえば、僕は組手をしたことがない。アルは機械狼のボディ、人間の相手は難しいからね。

初めての組手がアステル……何か緊張するな。


「そろそろ到着するよ。ジーンは簡易装甲服に着替えておいで」

思ったより早くレーザー中継ステーションに着いたようだ。

ラックが設置されている隣の小部屋で簡易装甲服に入る。コンソールを操作してヘルメットを装着。

皆がいる部屋に戻ると、補給ステーションに接舷するところだった。

ここに(くだん)の補給ポッドがあるらしい。

投影された外部映像には鏡面仕上げの球体が映っている。映りこんでいる跳躍艇のマニピュレータと比較すると、だいたい直径百メートルくらいかな。補給ステーションはかなり大きい。

背景には、多数の細長い光学チャンバーが浮いている。


フェイルノートで作られたレーザー光が、ここで増幅されて地球に届くんだ。

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激動への序章 ~来訪者~

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