アステル・アエティア 1
どこからか音が鳴った。
Zrrrrrrrrt……Zrrrrrr……。
ポイント・ズールーに向かう途中で遭遇した、ハブ・ジャッカーのビースティンガーみたいな音だ。
こちらの方が軽やかで間隔も短い。
「これは、アライアンスが使うデジタル通信フォーマットですね。あなたは誰? と聞いています」
「人格オーバーレイのEXLLMを送ってやってくれ。それでスタンダードを理解するだろう……」コハクさんが静かに言った。
部屋に響いていた音が止まる。
『あなたは誰? 我は星の遺児、そう呼ばれる存在』
スタンダードを話している。女の子って感じじゃない、中性的な声。
「お久しぶりです。拙はコハクです。約三百年前にここでお会いしました」
コハクさんが敬語を使っている!
『我の年齢は太陽系歴換算で二九七歳。あなたは我の誕生に立ち会った?』
「はい。拙は、いと尊き御方にあなたを託され、太陽系にたどり着きました。あなたはエッジ〇三で誕生されました」
『我の記憶には無い。アライアンスの嚮導者も教えてくれなかった』
「太陽が危機にさらされた瞬間、あなたが誕生しました。生まれてすぐに能力を解放して、太陽を救ったのです」
『我が太陽を救った?』
「はい、その影響で太陽の活動が低下、エッジが閉じそうになりました」
『エッジが閉じた原因は我にあった?』
「……はい。しかし、アライアンスの使者が現れ、エッジが閉じるのを先延ばしにしました。百四十八年間も」
この子が太陽を救って、この子のせいで地球に氷河期が訪れ、エッジが閉じた。
アルもエトナさんも黙ったままだ。もちろん僕も。
アステルは尊き御方の子ども。そしてライラの娘?
全然理解が追い付かない。
そもそも、尊き御方が誰かも分からない。
「星の遺児よ。私はノワール。尊き御方のサブユニットとして生み出されたものです」
『尊き御方……。我が根源たる存在と聞いている。その存在のことを話してくれる?』
「もちろんです。あなたの根源……地球風にいうと母親です。そうですね、彼女は名前が無いことに悩んでいました」
『名前? あなたがノワールと名乗ったように、個を特定する名称のこと?』
「そうですそうです。幸いあなたには名前があります。アステル・アエティア。あなたのもう一人の母親が命名しました」
『アステル・アエティア……。それが我の名前』
「ええ、ええ。よい名前だと思いますよ。星の遺児とか称号で呼ばずに、名前で呼んでやれと、ここにいるジーンが」
そこまでは言ってないでしょ!? って僕に振るの?
「は、初めまして。ジーン・タキザワです。君のことをアステルって呼んでいいかな?」
「初めまして、ジーン。ええ、アステルって呼んで」
「それと、コハク。いい加減その話し方をやめてください。昔の硬い口調を思い出します」
ノワールさんが苦笑している。猫の苦笑、初めて見た。
「……そうかい。分かったよ」
コハクさん、観念したようだ。
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