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少年と宇宙  作者: 津本ジオ


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太陽系周遊 出発の朝

昨日の祝宴は最高だった。

初めて食べた、桜鯛とアナゴの握りずしはもちろん、出てきた料理は今まで食べたことのない美味しさで、びっくりの連続だった。

特に、ラムの骨付きロース(フレンチラック)を塊のままローストして、一本ずつカットしたものが美味しかった。

これを、ひよこ豆のディップソース、フムスにつけて食べると、ラムの脂とクリーミーなフムスが合わさり、濃厚なコクが生まれて口の中が幸せで一杯だ。


それに、アルがとても嬉しそうなのが、僕にとっても幸せだったんだ。

アルと一緒に食事を楽しめるなんて。

いつも口数が少ないアルが、料理とお酒をほめまくっていたのが印象に残ったよ。

祝杯用にとくすねてきたノワールさんに「でかした!」とか称賛していたし。


最後には、跳躍艇の調理場の見学まで希望して、僕と一緒に見て回ったり。

調理場の設備は、少し思ったのとは違ったけれど、とても楽しかった。

「そうですね。ぽんと完成品を作ることもできますが、やはり料理人の技は再現が難しいです。それで調理ロボットで丁寧に作っているんですよ」ノワールさんが説明してくれる。

アルはうんうんとうなずいている。本当に上機嫌だ。


興奮したせいか、昨夜はなかなか寝付けなかったけれど、朝起きたら元気いっぱいだった。

「おはよう、昨日は眠れたかい」

コハクさんが部屋に入ってきてあいさつをした。

ここは、昨日みんなが集まっていた部屋だ。立派なキッチンがついてる部屋。

この部屋に僕とアルは泊まったんだ。立派なベッドで寝心地も最高だった。

「おはようございます、コハクさん。ぐっすり眠れたよ」

「おはよう、コハク。問題ない」

アルは、昨日の浮かれた様子が落ち着いたみたい。いつものアルに戻っている。

「そうかい。今日はいろいろ見て回るよ。シートに体を固定するといいよ」

「どこから行くの?」

床から現れたシートに座って、四点式のベルトで体を固定する。


「そうだね。まずは、木星から土星、ついでに、エンケラドゥスにも接近してみるかね」

コハクさんが床をぽんと叩くとコンソールがせり上がって来る。

ちょんちょんとコンソールにさわると、壁、床、天井が真っ黒になった。

「うわっ、何これ?」

目が慣れてくると、そこは星の海だった。

夜間行動訓練のとき、地上から見る星空とは全然違う。

瞬かない色とりどりの星々。そして圧倒的な量。後ろを向くと太陽がまぶしい。地球で夕暮れ時に見る太陽より明るいかも。


上を向くと、微細な粒からなる巨大な壁が迫ってくる。まるで点描画だ。

これは天の川?

川というよりこれは橋だ。映像記録(アーカイブ)で見た世界最大の半潜水式浮遊橋、ジブラルタル・ブリッジみたいだ。

星空にかかる複層構造のトラス橋。それが天の川なんだ。

うわあ、地球からここまで来るときにも、すごい星空だなって思ったけれど、視界全部が宇宙だとこんな風に見えるんだ。

感動。


星々が後ろに流れ始めた。

正面に青白く輝く星が集まってくる。

ふと、後ろを振り向くと太陽が暗いオレンジ色になっている。

やがて深い赤色になり……消えた。

慌てて前を見ると、中心部は真っ白に輝き、周りには星の粒が緩やかなグラデーションを描いていた。

美しい。

「補正しているからね。人間の目では違ったように見えるはずだよ。紫外線の波長域は見えないだろう? これは(せつ)が見ている光景さ」

コハクさんにはこんな光景が見えているんだ。

人間の目にはどう映るのかな? あとで見せてもらおう。


それより今はこの光景を楽しもう!


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激動への序章 ~来訪者~

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