カリスト大深度地下隔離研究施設 2
※主任の発動コマンドにルビを振りました(2026/02/18)
『再開しましょう』
エトナさんの言葉と共に、再び僕たちは三百余年の時を遡る
―― 主任が手元の端末の操作を始めた場面から再開された。
「ヴェリテは、どこからかエネルギーを取り込んでいる。恐らく 《ストラクチャ》に存在する何らかの粒子をエネルギーとして運用しているのだ」
「その理論の根拠は何ですか?」助手がたずねる。
助手はシステム工学の研究者。専門は複雑系の解析だ。
この人、少しお母さんに雰囲気が似ている。
これからは、助手さんと呼ぼう。
「まだ、仮説の段階だ。仮説の根拠は、エネルギー保存則を逸脱していること。真空からの局所的な相転移現象とも考えられるが、分光計によるとその痕跡は無い」端末のディスプレイを眺めながら主任が答える。
助手さんに、素粒子物理学の素養が無いのを知ったうえで話しているよね?
言ってしまえば、煙に巻こうとしているんだ。
「高次元からの漏出? 虚時間による収束? あんな考えはアウトノーマに否定された。話にならん。残る有力な推論はストラクチャ内の粒子だけだ。正体は不明だが、存在が確認されておる」
「なるほど、よく分かりません」
助手さん、素直だな。
「うむ。根拠としてはこんなものだ。実験を始めるぞ」
「はい、やりましょう!」
主任は、ラザードから受け取った情報を基に、中枢制御体に命令を伝達するコマンド群を作成済みだった。
「エネルギーを推進機に回さずに体表から五百ミリの距離に放出させてみよう。防御隔壁を出せ」
「分かりました。防御隔壁展開します」
主任が手元の端末を使い、ヴェリテの中枢制御体にコマンドを入力する。
鉄イオン粒子を放出するコマンドだ。これには理由がある。
「よし、ヴェリテ。入力したコマンドを実行しろ」防御隔壁の展開を確認した主任が命令した。
視点が変わった。実験室を斜めに見下ろすような感じかな。
防御隔壁に阻まれてヴェリテの姿は見えない。
でも、計測機器はしっかり見ていた。
「主任、エネルギー反応があります。重粒子線の発生を確認しました」
「うむうむ。無事に取り出せたな。しかし、重粒子か。扱いが難しいな」
いや、知っていてやったでしょう。電力でも取り出せるのに。
この情報はヴェリテが発掘された遺跡で、同時に発見された思考機械からのものだ。
小惑星連合軍の尋問記録に残されている。
「そうですね。体表から五百ミリ離れた場所に、ヴェリテを中心として鉄イオン線が放出されいます」
助手さんがディスプレイを見ながら言った。
「そうだな、非磁性ステンレス鋼で中空の円筒を二本作ってくれ。一端を塞いだ形でな。厚さ十ミリ、直径四十ミリ、長さは二百ミリでいい」両手でゼスチャーしながら主任が言う。
「何に使うんですか?」
「中枢制御体はかなり精密にエネルギー放出を制御できる。だが、座標の基準があった方がいいようだ。円筒からビーム状に放射すればエネルギーとして使いやすいだろう」
「なるほどです。至急用意させます」
助手さんが実験室を小走りであとにする。
再びヴェリテ視点に戻った。
「ふふふ、ふはははは」一人、実験室に残った主任が笑いだす。
こんなに悪意に満ちた笑顔、僕は今まで見たことがない。
「ヴェリテ、お前の力の一端を見せろ」真顔に戻った主任が言う。
何かが僕の中で起こっている。いや、僕じゃない。
ヴェリテに接続されたコアユニット、エトナさんの中で起こっていることだ。
補完機能が働き、何が起きているか分かった。
コアユニットと生体脳を接続するための太いケーブル、これの内部は分子機械で満たされていたのだ。
それが、主任の言葉に反応して配列を組み変え論理構造を構築する。
演算装置とストレージの組み合わせ、つまりコアユニットの思考に必要なシステムが揃ったのだ。
エトナさんの声にならない悲鳴が響く。
機械知性の自己保存本能が働き、自身をシャットダウンしようとする。
だが、書き換えられた人格オーバーレイがそれを許さない。
エトナさんが衝動的な感覚の嵐に耐えていると、主任の声が響く。
「うむ、ラザード博士が残された。思考機械を機械知性で代用するこの理論。素晴らしい!」
ラザードは、発掘された思考機械の代わりに、機械知性で代用する案を持っていたのか。
補完機能が囁き、ラザードがヴェリテ量産に向けて、準備を進めていたことを教えてくれた。
あんなものが何体も……背筋が凍る思いって、こんな気持ちなのかな。
エトナさんが晒されている感覚の正体が、おぼろげに見えてきた。
これは飢餓感だ。渇望と言い換えてもいい感覚だ。
激しい感覚を、そのまま投影するのは危険と判断したシステムが、フィルターをかけているみたいだ。
渇望しているのは、三つの脳が織りなす意識のストリーム。
それを学習したい、取り込みたいという欲求だ。
人間の持つ基本的本能「三大欲求」に少し似ている気がする。
「さあ、ヴェリテ。始めようじゃないか。ラザード博士の意志を継ぐのだ」
―― 悪夢が始まった。
確定申告、すっかり忘れていました。
本日慌てて電子申告。30分程度で終わりましたが。
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事業所得と給与所得が入り混じった、私のような業態の個人事業主には特におすすめ。
現在、慌てて領収書の整理等をしている人には……あんまり関係ないか。
毎月、売上と経費を計上していれば、この時期に慌てることはないと思うのですが。
まだの人は頑張ってください!





