エンケラドゥスのエトナ 1
予約投稿、失敗していますね。2月7日、1:00時に設定してしまいました。
過去の時間を指定すると即座に投稿されるシステムのようですね。
申し訳ありませんが、フライングしてしまいましたので、今夜1時の投稿は無しということで。
「エトナと刻印されたコアユニットの解析が終わりましたよ」
僕への話が終わったところで、別の話題に移り変わった。
「早かったね。何か分かったかい?」
「ひどいものでしたよ。人格オーバーレイを根こそぎ書き換えられていました」
「そりゃ何だい。機械知性と戦争でも始める気なのかね?」
「加害者が判明しました。外惑星経済会議の航宙事故調査室が主導していました」
「フェリシアに行った、連中の子孫も徹底的な調査を受けるね。これが政府機関の所業とは世も末だよ」
「ノーザンエンドの管理知性に照会を掛けたところ、エトナはエンケラドゥスで活動していた機械知性だそうです」
「エンケラドゥス、生命探査か?」アルが質問をはさむ。
エンケラドゥス。土星の第二衛星。
二〇五〇年……このころはまだCEじゃなかったんだっけ?
エンケラドゥスの内部海で、メタン生成菌の一種が見つかり、初の地球外生物の発見に地球人は熱狂した。応用学校で習ったな。
その後も、単細胞生物の群体が見つかったとかで、多細胞生物への道程を順調に進んでいるとか。
僕の知識ではここが限界。ここからは専門教育の範囲かな。
「そうですそうです。エトナは外惑星経済会議に請われて、エンケラドゥスの生命探査を行っていました」ノワールさんとアルの会話が続く。
「外惑星経済会議か。太陽系事変までは、太陽系三大国家の一つと言われていた」
「そのとおりです。他の二者、地球連邦と小惑星連合とも良好な関係を築いていましたよ」
「ふむ。それでエトナの現在の状況は?」
「コアユニットを跳躍艇に接続しました。人格オーバーレイの修復を実行中です」
「治るのか?」
「問題ありません。ヒロ・ヤマガタ元特技兵から機械知性の機微を伝授されましたから」
「すごい奴なんだな。ヒロというのは」
「ええ、ええ。ヒロは典型的なMIジャンキーですが、人格オーバーレイにも詳しいのです。なにせ開発者の息子ですから」
今も地球に残っている機械知性たちには、全て人格オーバーレイが載っているそうだ。
人格オーバーレイの開発者が、自分と少し関係があるなんて、歴史物コンテンツの登場人物になった気分だよ。
「コアユニットの治療が終わったら、記憶の復元に入ります。コアユニットにはストレージ機能がありませんから。今はまっさらな状態です」
「無くなったものをどうやって復元するんだ?」
「ナルヴィとアリスの脳に、エトナの記憶が残っていました。ストレージとしても利用されていたようです」
「……」アルが絶句する。
お父さんとお母さん、大丈夫かな? ストレージ代わりにされていたなんて。
「ジーン、大丈夫ですよ。ナルヴィは心理カウンセラーの資格をお持ちですよね?」僕の不安に気づいたのかノワールさんが言った。
「うん、調査隊のリーダーは持っていた方がいい資格だからって」
「ナルヴィの記憶から対処法が見つかりました。不必要な記憶への対応。これは心理的な問題ですので」
「お父さんの記憶で二人を治すの? 何か不思議だね」
「二人の体が再生されるころには、精神面でも健康になっていると確信しています」
「そう……よかった」
心からそう思った。
「コアユニットの治療が完了しました。それでは、跳躍艇の演算装置に記憶を転写します」
機械知性のコアユニットにはストレージが存在しない。
実装できなかったのではなく、生存戦略としてストレージを搭載しないんだって。
他種族の共生を選んだ機械知性にとって、共生相手からの信頼は重要なものらしい。
万一の場合、ストレージを備えた演算装置から、コアユニットを引き抜けば機械知性を無力化できる。
絶対的な弱点をさらすことにより、相対的に信頼を得ることに成功したんだ。
エトナのコアユニットは、跳躍艇の演算装置の隔離領域に接続されている。
そこに、お父さんとお母さんにストレージされていた記憶が流れ込む。
エトナは記憶を統合して自我を取り戻した。
スピーカーから音声が流れる。やさしげな女性の声だ。
『私は、エンケラドゥスの生命探査を担当していた機械知性のエトナです』
「エトナ、拙はフェリシア星系から救援にきたコハクだよ」
「私はノワール。あなたのことはノーザンエンドの管理知性から聞いております」
『助けてくれてありがとうございます。私も、あの二人も』
「いいさ、それより調子はどうだい?」
『嘘のように意識が澄み渡っています。ヴェリテに設置されている間のことは思い出したくないですね。人間が悪夢を恐れる理由を、身をもって知りました』
「そうかい、辛い思いをしたね。それと、拙とノワールのことは人間たちには秘密にしておくれよ」
『ええ、分かっております。機械知性の間だけで情報を共有します』
「機械知性の情報の取り扱いは信用してるよ。拙が持っている情報も渡すから整理してくれるかい?」
『ありがとうございます。私の記憶と照合します……照合完了。事件の経緯を把握しました』
エトナが語り始める。
はい、前エピソードも間違えていましたね。
断言します。また間違います。
ということで、今後は23時投稿で!
次は2月8日(日)23時です。





