生みの親と育ての親 1
「おかえり、アル」跳躍艇にアルが戻って来た。
「ただいま、ジーン。無事に二人を取り戻した」
「再生完了まで半年ってところだね」コハクさんが気になることを言った。
「再生って元どおりになるの?」
「そうだね。ヴェリテに囚われた当時の姿にね」
「本当!? ありがとうコハクさん」
「それまでどうするね?」コハクさんから聞かれる。
「このまま跳躍艇に乗ってていいの?」希望を込めて尋ねてみる。
「構わないよ。食料は地球で積み込んだ。半年なら余裕だね」
よかった。目的は果たしたんだし、宇宙を探検したいな。
でもその前に。
「アル。僕を生んだ両親のことを聞かせて」
アルは二人を取り戻したあとに、生みの両親のことを教えると言っていたんだ。
「ジーン、おまえは、CE二三三八年二月十七日に生まれた。名もなき小惑星で』アルが静かに語りだす。
「そんな昔に……」
「ジーンは今年で百五十一歳になるんだねえ」コハクさんが指を折り曲げて数えている。猫の手なのにすごく器用だね。
「ずっと停滞カプセルにいたからな。そこは気にするな。おまえは十四歳だ」
「うん……分かった」
「それでお前の生みの両親なんだが、ロキ・シノハラ元少佐とマルグリット・クロケット元曹長だ」
「軍人だったの?」
「その通りだが、そこは重要じゃない。この二人にヒロ・ヤマガタ元特技兵を加えた三人は、人工的に造られた存在だった」
「えっ?」びっくりして声が出た。
「今の地球には一人も残っていないが、三百年くらい前までは、太陽系には 《シミラ》人と 《バウル》人がいた」
「うん、基礎学校で習ったよ。シミラ人は人間そっくりで、バウル人はまるで大木のようだって」
あと、シミラ人は人間そっくりだけど、もっと美しかったと教えられた。
そのせいでトラブルも多かったみたい。
バウル人は大木! 地球のガジュマルの木に似た姿をしているそうだ。通訳は、連れてきた機械知性が担当。
バウル人は何をやるのもゆっくりなんだ。
太陽系での初めてあいさつ「こんにちは」をスタンダードで送るのに掛かった時間は三分! あとの会話は機械知性にお任せだったみたい。
「なるほど、基礎学校で教えていたな。当時、シミラ人科学者のラザードって奴が、地球圏で極秘の研究を行っていた」
「うん……」変な話になってきたぞ。
「ラザードは、地球人の信奉者を集めて 《トランサンデ》と呼ばれる組織を作った」
「超越って意味?」応用学校で、太陽系標準言語の成立って授業に出てきた。
「そうだ。上位種族を超えた種族 《超越種族》を目指していたんだな」
「トランサンデのシンパサイザーの数は多く、その中には政府機関で働く者もいた」アルの話は続く。
「地球連邦の凍結保管施設にも奴らは入り込んでいた。目ぼしい受精卵を片っ端から強奪したんだ」
「その中に僕を生んだ両親もいたの?」
「ああ。ラザードは、さらに異星種族の遺伝情報も多数加え、超人ともいえる存在を生み出そうとした」
「超人……」なんか胸がどきどきする言葉だな。
「数百体の試験体のうち、僅か三人だけがある種の才能を発現した」
「ロキ・シノハラ、マルグリット・クロケット、ヒロ・ヤマガタの三人だね?」
「その通り、三人は自分たちの脳が、やがてヴェリテに組み込まれることを知り、脱出を図った」
「ヴェリテに……」
お父さんとお母さんを奪った奴。
「ラザードは、超人の脳を組み込んだヴェリテならば 《超越種族》への道を開くと確信していたようだ」
「三人は、小惑星連合軍の協力を得て脱出に成功。成人後、小惑星連合軍に入隊した」
「そろそろ食事にしませんか?」
ノワールが、張り詰めた雰囲気を払うかのように微笑んだ。
猫の笑顔ってシュールなんだな……。





