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地球の少年、星の遺児  作者: 津本ジオ


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ヴェリテとの戦い 2

幅、高さともに十メートルはありそうな搬出入通路に視線を向ける。

整備区画と格納庫をつなぐ通路だ。

格納庫までの距離は五百メートル。ヴェリテの射撃間隔四・二秒の間に走破できる。


格納庫は発着場も兼ねているため、整備区画よりも規模が大きい。

罠を仕掛けた待ち伏せ地点(アンブッシュサイト)はこの格納庫だ。

実行前にノワールに確認を取る。

返信は「Good to go(いつでもどうぞ)」だ。

こいつ、やたらと太陽系標準言語(スタンダード)に詳しいな。元は英語のスラングだぞ、この表現。


行動手順はこうだ。

―― ヴェリテの荷電粒子ガン発射と同時に通路に飛び込む。

通路を抜け、格納庫に入り十時方向に転進。

そこにはノワールが罠と共に待ち受けている。


通路の前に位置取ると、ヴェリテが荷電粒子ガンを発射。カウント開始。

通路に飛び込む。ヴェリテが追ってきた。

ときおり壁を蹴りヴェリテとの距離を維持。

二秒経過。通路を半分ほど進んだ。


二・六秒経過。速度は時速九百キロを超える。

そのとき、ヴェリテが持つ荷電粒子ガンの先端が光る。

臀部の光学センサーが捉えた。

まだリチャージ中のはずだ。

はっと気づく。アリスにしてやられたのか。


アリスが前に言っていた「ハッキングは心理戦よ」という言葉が脳裏(のうり)をよぎる。

―― 相手にこちらの能力を誤認させて、油断を誘う。

もう大丈夫と相手が安心した瞬間に侵入を成功させるそうだ。

そのために、荷電粒子ガンの射撃間隔を抑えていたのか。

片方の荷電粒子ガンを犠牲にしてまで。すごい忍耐力だ。


だが、(だま)していたのは俺も同じだ。

ヴェリテが奥の手を隠し持っていることは想定していた。

俺は今まで、荷電粒子ガンを向けられた瞬間から回避を開始していた。

鉄イオン粒子が放出されたら、それを避けることは不可能だからだ。

光速に近い速度、おそらく0・九九c程度だろうとノワールが言っていた。


だが、ほぼ光速で飛んでくる粒子は避けられなくれも、荷電粒子ガンには前駆発光という制約がある。

前駆発光から〇・二秒後に鉄イオン粒子束が放出される。

〇・二秒のタイムラグは粒子束の形成にかかる時間だ。

形成を開始する瞬間、莫大な電位差により発光するのだ。


俺は補助電子脳に、危険回避のための自立行動を許可していた。

今までは、俺の先読み回避で出番が無かっただけだ。

小脳に組み込まれた補助電子脳の性能は(すさ)まじい。

知覚から行動に移るまでの反応時間は〇・〇二秒。速い。

俺は、回避行動が終わったあとに状況を認識しているに過ぎない。


補助電子脳の指令により、隊長機(アルファ)の瞬間最大出力二十Gを解放して床を蹴る。

腹部スラスターが連動して作動、八Gを加算。

体の下を鉄粒子線が通り抜ける。

百八十度ローリングで天井に着地。

ここまで全て補助電子脳が行った。


すばやく天井を蹴り、残りの距離を消化、通路終端の壁を蹴りノワールが待つ位置を目指して転進。

格納庫に突入。

正面にノワール。呑気に手を振っている。足元から太い砲身がこちらを睨む。

事前の打ち合わせどおり、俺は上昇してノワールとすれ違う。

上から砲身を眺める形になった。長い。三十メートルはありそうだ。


そして、ヴェリテが格納庫に入った瞬間、視界にノイズが入る。

ノワールがニードルキャノンを発射したのだ。

長大な砲身に比して、発射されたのは直径三ミリ、長さ五センチの細い針。

それが正確にヴェリテを貫く。人間でいうとへその辺りか。

いつのまにか宙に浮いていたノワールが、ヴェリテにちょんとタッチ。

僅かにベクトルを変えられたヴェリテが砲身の脇を通り過ぎる。

その先にあったのは巨大な緩衝材のかたまり。ヴェリテが突っ込む。

スラスターで速度を殺しきれなかった俺も同様に緩衝材に包まれる。


「お見事」ノワールに賛辞を贈る。

「無事に伝導装置だけを破壊できましたね」


俺はヴェリテの回収に向かった。


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激動への序章 ~来訪者~

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