コハク
なんかランクインしたって表示が出ました。
読んでくれてありがとう!
早朝、アルに起こされる。
「おはよう、ジーン。朝食を食べたらセンチネルの整備、点検をするぞ」
「……おはよう、アル。今起きるよ」
昨夜、ベッドに入る前に、死んだハブ・ジャッカーたちの冥福を祈った。
そのおかげか、悪夢を見るようなことは無かった。
顔を洗い歯を磨き、ダイニングテーブルにつくと携行食のパッケージがテーブルに載っていた。アルが用意してくれたみたいだ。
パッケージごと電磁調理器に入れてスイッチを入れる。
二十秒で「ピピン」と軽快なチャイムが鳴った。
テーブルに戻ってパッケージを開けると、ポタージュスープ、ベーコンエッグ、温野菜のサラダ、ふわふわのロールパン、紅茶が現れた。
調査課支給の携行食はとても美味しい。素直に嬉しい。
携行食に付属しているプラスチックのカトラリーで朝食を楽しむ。
アルはもう食べ物を必要としなくなった。
脳に栄養を補給する小さなカートリッジだけで生きていける。
機械狼の動力は超小型のリアクターだしね。半永久的に動ける。
便利だけど、美味しいものが食べられないのは少し切ないな。
アルと一緒にわいわい食事を楽しみたかったよ……。
朝食を食べ終わり、紅茶を楽しみながらアルに話しかける。
「ねえねえ、アル。ドナルドさんが言ってたセンチネルのデータバンクに入ってる資料は見た?」
宇宙に出る許可をもらったことは出発前夜にアルに伝えてある。
「ああ、確認した。セレスの異常に関しては、データに載って無いことも俺は知っている。そのことは道中話そうと思っていた」アルの様子が変だな。
ポイント・ズールーに来てから何となく落ち着きが無い。
「ふーん、分かった。じゃあ、センチネルのところに行こう」
休憩室のエアロックで簡易耐寒服を着て、三番格納庫に向かう。
格納庫に入った瞬間、アルが前に出る。
「気を付けろ。暖房が効いている……誰だ、出てこい!」アルが叫ぶ。
僕は簡易耐寒服を着ているから気づかなかった。暖房がはいっていたんだ。
「おやおや。ごあいさつだねえ」
そんな言葉とともに現れたのは……。
猫? まぎれもなく猫だ。
背中はグレー、お腹は真っ白、顔もグレーと白で上下に分かれている。
顔はグレーのお面をつけているようにも見える。
印象的なのは、アンバーの瞳。
ふかふかの毛皮でちょっと太ましい。
なんで太っていると分かるかだって? ノーザンエンドにも猫がいるんだ。二匹の親猫と三匹の子猫。
その猫の家族は、みんなシュッとしてスマート。
目の前の猫は、二割増しで大きく、五割増しで太い……。
「猫。太った猫だ」思わず口に出しちゃった。
「おい、小僧。レディに対してなんてセリフだい」猫がしゃべった。
ちょっとハスキーな大人の女性の声で。
基礎学校の担任のおばちゃん先生に話し方がちょっと似ている。
いたずらをしてはがみがみと叱られた。懐かしい。
「……猫のお嬢さん、一つお聞きしたいんだが、いいか?」アルが心なしか萎れた声で質問する。
「好きにしな」
「あんた、ひょっとして……ノワールが言っていた援軍か?」
「勘のいい犬っころだね。その通り。お前さんを助けるために駆けつけたのさ」
「ねえ、アル。この猫さんのこと知ってるの? それにノワールって僕たちが向かってる通信塔の……」
「たぶんな……」
機械狼に表情は無いが、嫌そうな顔をしている雰囲気。
「自己紹介でもするかね。拙の名はコハク。フェリシア星系からはるばる来たんだよ」
フェリシア星系って 《大脱出》の移住先じゃないか! たしか猫に似た知的種族が住む星だったはず。
「……俺はアルファ、アルと呼んで構わない」
「僕はジーン。ジーン・タキザワ。ノーザンエンドから来たんだ」
「お前さん、ジーンかい……。こんなにも立派に育って」この猫、涙ぐんでる。器用だね。
それに、僕のことを知っているみたいだ。意味が分かんない。
「盛り上がっているところを悪いが、こいつの整備がある。あとにしてくれないか」センチネルをこつこつと叩きながらアルが言った。
「なんだい、感動の再会の邪魔をしなさんな。そんなものは放っておきな。もう必要ないよ」
アルとコハクさんが話しているが、全然頭に入ってこない。
だって、僕は重大なことに気がついたんだ。
三百年前の太陽系事変。その影響で 《エッジ》が閉じたのは百五十年前。
それ以降、超光速航行が不可能になって……。
コハクさんはフェリシア星系から来たと言った。
どうやって?





