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地球の少年、星の遺児  作者: 津本ジオ


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12/33

孤狼の回想 1

二重回想(?)が入ります。少し読みにくいかも。

楽しんで書きますので、がんばって読んでください!

追憶(ついおく)があふれる。

ジーンが、ナルヴィとアリスの息子になったあの日。そして、二人を襲った悲劇……。


惑星系内シャトルでセレスへの航行中、俺たち乗員は気楽なものだった。レーザー推進の〇.〇一G加速でのんびりと進んでいたからだ。

「ナルヴィ、お前の番だ」

シャトルの狭いラウンジのなか、三人でカードに(きょう)じる。

自分のカードを見つめていた男がちらりと俺に笑みを向ける。

「自信ありげじゃないか、キース」

ひょろりと背が高く、肉付きの薄い身体に淡い灰髪(はいはつ)の男、ナルヴィ・タキザワが言った。

「どうだかな」俺は軽く受け流す。

「キースがこんな調子のときは用心した方がいいわよ、ナルヴィ」もう一人の乗員、アリス・タキザワが茶化す、そんな穏やかなひと時だった。


今回の調査任務の目的地は、準惑星都市セレスにある星間ゲート管理施設だ。

星間ゲート自体は太陽系外縁部にあるが、制御機構はセレスに集約されている。そのセレスとの通信が途絶したのだ。

セレスは、退去前に念入りに要塞化されている。許可を持たない者は接近すら困難だろう。

そして、セレス周辺の無人自動救難システムは正常に応答しているという()()()()な状態。

セレスに何が起こったのか? それを探るのが調査の目的だ。


減速フェイズが終盤に近づきセレスはもう目前だ。

現地調査直前のブリーフィングが終わり、三人は雑談にふけっていた。

「ジーンはもう五歳か」俺が話題を振る。

「そろそろ話さないといけない時期かな……」ナルヴィが沈んだ声で返事をする。

「ええ、勘のいい子だから遠からず気づくでしょうね」アリスの声も憂いを含んでいる。

ジーンの出自の件だ。


―― ジーンはノーザンエンドの北東約三百キロの地点にある、ポイント(Point)ズールー(Zulu)の地下で偶然発見された。

ノーザンエンドと通信塔を結ぶ経路に中継拠点(ハブ)はいくつかあるが、このポイント・ズールーはバンクーバー・シェルターの建設以前から存在する。

太陽系事変以前、知的種族共同体 《アウトノーマ》への加盟を目指していた地球連邦政府が、異星種族と共同で建設したものだ。

ジーンを発見したのは、ナルヴィ、アリス、それに俺を加えた三人。

ポイント・ズールーに定期点検のために訪れた俺たちは、地下貯蔵庫の点検を行っていた。


突然、警報音が鳴り響く。

『Emergency alert massive solar flare predicted. Evacuate immediately. (緊急警報、大規模な太陽フレアの発生を予測。速やかな避難を勧告)』壁面に警告文が表示される。

続けて合成音声のアナウンス。緊迫感を含んだ声が響く。今では使う者も少ない英語だ。

「大規模太陽フレアだと? 太陽活動が低下しているこの時代にか?」

「うーん、気象情報でも太陽に異常は無いって言ってたけど……」ナルヴィも否定的だ。

「ちょっと来て。この警報のことを説明したいの……」ずっと貯蔵庫脇の制御室にこもっていたアリスからの通信。

「この警報は何なの?」ナルヴィと共に制御室に入る。


そこにいたのは、目の覚めるような鮮やかな金髪の女性だ。

小柄ながら蠱惑(こわく)的な肢体。耐寒服のインナー姿だ。

「説明するわ。えっとね、朝からずっとここのシステムを調べてたの」

「どうして?」

「今度、ノーザンエンドの子供たちがここに見学に来るでしょう? 安全対策について、科学部長のドナルドさんに相談したの」

「ドナルド爺さんか。口うるさいけど頼りになるよね」ナルヴィに会話を任せて俺は聞き役に回るとしよう。

「そうしたら、ポイント・ズールーの機能を調べ直しなさいって。まだ不明な部分が多いから」

「そうなの? 評議会は安全を確認したと言ってたけど」

「表面的にはね。ドナルドさんはもっと徹底的に調査しろと要求したそうだけど」

「それでこの機会に調べ上げてこいって言われたの?」

「そうそう。それで入念に調べてみたら非常脱出装置が隠されていたのよ。これが動けばもっと安全かなって、脱出装置のシステムチェックを走らせてみたら……」

「脱出装置か……誘導灯も無いから気づかなかったよ」ナルヴィがたずねる。

「本当に 《アウトノーマ》的よね。非常事態にならないと扉すら見えないわ」


アリスがコンソールを操作した。

ディスプレイには貯蔵庫の構造図が表示され、貯蔵庫の四隅にある非常脱出装置が点滅している。

『System inspection in progress. (システム点検実行中)』のプログレスバーも出ている。

「これ以外にも脱出装置があるみたいなの」

表示が切り替わり『Access to the hidden chamber requires permission. (ヒドゥン・チェィンバーへのアクセスには許可が必要)』と表示される。

「私のアクセスレベルで実行したら……当然こうなったわ」アリスがログを表示する。

『Access Denied. (アクセス拒否)』に表示が変わった。


ヒドゥン(隠し)チェィンバー(部屋)なんて興味が湧くじゃない? ハックしようとしだんだけど、すんごく強固な防壁に阻まれて……」

「すんごく強固な防壁?」ナルヴィが繰り返す。

「私程度の力量では突破は無理ね。機械知性ならどうにでもできるんだろうけど……。攻撃的な行為(クラッキング)と判断したら絶対に手を貸さないし」

謙遜しているが、アリスは非常に優秀なシステムエンジニアだ。「北のウィザード(魔術師)」と呼ぶ者さえいる。


「その表情からすると……何とかなったんでしょ?」ナルヴィは微笑みながら聞く。

「もちろん! それがさっきの警報につながるんだけど 《アウトノーマ》の緊急避難システムはね、非常事態が起こるとアクセス制限が緩和されるの。たとえば火災とかの場合ね。それでねノワールに協力をお願いしたの」こいつだんだん早口になってきたぞ。

「ノワール? 《通信塔》を管理している機械知性の?」

「うん、最初は彼も渋ってたけど頑張って()()したわ! それで太陽フレア予告を出してもらったの。それもフレア強度X50相当の」

アリスのもう一つの異名は「MIジャンキー(機械知性狂い)」だ。

彼女は()()()と機械知性の友人が多い。世界各地のシェルター管理知性ともよく通信をしている。


「X50ってインフラが壊滅するレベルだね……。ノーザンエンドくらいの大深度なら大丈夫だろうけど」

「それで予告を受けたシステムが警報を鳴らしたの。それで、もう一度アクセスしてみたら」

その時のログを呼び出す。

すると、『Access Allowed due to Emergency. (緊急事態につきアクセス許可)』に表示が変わった。

アリスが操作すると、再び貯蔵庫の構造図が表示される。かなり縮尺が小さくなっている。

貯蔵庫の真下にも点滅している箇所があった。

「スケールからみて貯蔵庫の五〇メートルくらい下に小部屋があるね。そこにも非常脱出装置があるみたいだ」

「こんな部屋があるなんて聞いてないわよ」

「僕もだ。しかし、どうやって行くんだろうね、この部屋」

たしかに小部屋につながる通路が無い。電力・通信用と(おぼ)しき配管は表示されているが。

「脱出ポッド用のシャフトから行けると思う。保守通路が併設されてるみたい」

「ノーザンエンド評議会の怠慢だな。通信塔への重要な中継拠点(ハブ)を調査不足のまま放置するとはな。どうする?」俺も口をはさんだ。

「時間はまだあるね。調査しよう。僕たちは調査課員だからね。これも職務の範疇(はんちゅう)だ」チームリーダーであるナルヴィが決断を下す。

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激動への序章 ~来訪者~

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