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地球の少年、星の遺児  作者: 津本ジオ


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ポイント・ズールーへ 2

ジーンの表情から余裕が消えた。当然だ。初めての実戦なのだ。

「武装チェック。十二ミリ機関銃、徹甲弾を選択。擲弾発射機、煙幕弾装填。対地誘導弾、二基発射準備。アクティブ防護機構、オンライン」

長距離クルーズ用のフルオプション。これは完全武装の意味を持つ。

「ドローンが先だ。すぐに上げろ」

「あ、ドローン始動、射出ハッチ開放、射出!」

ドローンが打ち上げられ、五十メートル上空で主翼を展開。ロケットモーター点火、自律飛行を開始する。

「俺がドローンの制御を担当する」

「了解、ドローンの映像が来たよ」

俯瞰映像がセラミック窓の一画に投影される。

「敵車両は一両。武装が追加されている」

「これは……機関銃?」

「地球連邦軍時代の20ミリ機関砲だ。骨董品だな」

ジーンがコンソールを操作する。

「画像を照合。20ミリ航空機関砲 《ビースティンガー》がヒット。秒間八十発の連射能力。うわぁ……」


嫌そうな顔をしているジーンを無視、広角にズームアウトして画像を注視。

威嚇的な外観のセンチネルに果敢に向かってくるフロスト・レンジャー。

何か奥の手を隠しているようだ。

案の定、センチネル後方から高速で接近してくる小さな敵影を発見。

赤外線センサーに反応はない。

アイス・プレーン、四枚のブレードで氷原を滑走する、ハブ・ジャッカー御用達の機動兵器だ。

タンデム座席で乗員はむき出し、ロケットブースターを搭載。ブースターを捨てれば赤外線センサーでは捉えられない。


後席の乗員が小型対地誘導弾を構えている。不意をつくつもりだ。

「ジーン、敵の隠し玉が来るぞ。アイス・プレーン、小型対地誘導弾装備。六時、八百メートル」

ブースターを切り離し慣性で滑走してくる。時速二百キロは出ている。

「了解」

ジーンが落ち着いた声で答える。そして、思わぬ行動に出る。

フロスト・レンジャーに向け、煙幕弾を斉射。超信地旋回でアイス・プレーンに正対する。

アイス・プレーンから発射炎。対地誘導弾だ。

アクティブ防護機構が反応。ライダー(LiDAR)の出力が攻撃モードに。誘導弾に光パルスが収束、爆散。


ちらりとジーンの横顔を見ると表情が抜け落ちている。感情を排した戦士の顔だ。

水素タービンの甲高い叫びが響く。緊急ブーストを使ったな。

猛然とアイス・プレーンに迫るセンチネル。

慌てたアイス・プレーンが進路を変える。

ジーンが天井に左手を伸ばす。補助腕操作用のアームグリップを掴む。

センチネルの操縦系統が自動的にフットペダル操作に切り替わる。

ジーンが左腕を後ろに開くと左補助腕が連動して水平に伸びる。

そのままの姿勢で緩旋回(かんせんかい)。アイス・プレーンの進路に合わせる。

すれ違いの瞬間、補助腕がアイス・プレーンの乗員をなぎ払う。


我に返ったジーンがつぶやく。

「殺しちゃった……よね?」

年相応に怯えた顔を見せるジーンに告げた。

「後悔も葛藤も後にしろ。それは生者の特権だ。フロスト・レンジャーが来るぞ」

煙幕を抜けてフロスト・レンジャーが姿を現す。近接索敵モードに戻ったライダー(LiDAR)の警告音が止まらない。

左の補助腕でコクピットを守り――XR表示で補助腕越しの視界は確保されている――右補助腕に十二ミリ機関銃を構える。

フロスト・レンジャーのビースティンガーが火を噴く。

Brrrrrrrrt。腹に響く連続発砲音。

続いて補助腕に甲高い命中音が響く。砲弾を跳ね返した音だ。

セラミック窓、正確には透明セラミック透過装甲に当たれば万事休すだ。ジーンが嫌な顔をした理由だ。

だが、アモルファス合金製の補助腕を20ミリ航空機関砲で撃ち抜けるわけがない。


対して、ジーンの撃った十二ミリ徹甲弾一連射十二発は、フロスト・レンジャーの防弾ガラスを粉砕した。誰も生きていまい。

「状況終了」静かに宣言する。

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激動への序章 ~来訪者~

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