ランク分け
少しの時間そこで立っていると、彼女は奥から何かを手にして戻ってきた。
(あれは……水晶とカード?)
「お待たせしました」
そう言って彼女は両手に持っていたそれらをカウンターに優しく置いた。
「これは?」
「こちらは登録に用いる道具で、まずお客様にはこちらの水晶に手をかざしていただきます」
彼女は青く透き通る輝きを放つそれを指して言う。
「すると、こちらの水晶にお客様のお名前と生年月日の情報が記録されます」
「名前と生年月日……」
(つまり個人情報ってわけか。まあそのくらいの情報なら……大丈夫かな。そもそもこの世界に来た時点でたとえ住所とか、そう言ったものを知られても意味はなさないだろうし)
俺は一瞬顔を俯けて悩み、その後正面に向き直る。
「そして、その水晶にこちらのカードをこのように……」
彼女はそう言いながらカードをコツンと水晶に当てた。
「つけると、記録された情報がカードに写し出されるのです。まあ今はなんの情報も記録されていない状態になっているので、何も起こりませんけどね。ということでお願いします!」
俺は「分かりました」と言って言われた通り手をかざす。
ピカリ
淡くそれが光る。
数秒でそれは収まった。
すると彼女は「ありがとうございます!」と言って手元のカードをさっきの手本のように水晶に当てた。
(おお……! 本当にカードに文字が写し出されていく……あんな、何にも書かれていなかったただの薄黄色のカードに……)
俺が見入っていると、「はい!」と彼女は言って水晶からカードを離した。それはちょうどカードに文字が写し出されて終わったであろう時。
「終わりましたよ! これであなたの冒険者カードが完成、と同時に冒険者登録も完了です!」
「冒険者カード?」
俺は聞きなれない固有名詞の登場に首を傾げる。
ただ、名前的にそれがあのカードであるんだろうと、そう考える。
次の彼女の言葉がそれの答え合わせとなった。
「冒険者カードはこれのことです。お受け取りください」
そう言った彼女は文字が写し出されたカードを俺に差し出す。
俺は2本の指でそれをつまみ、受け取った。
(おお……! 本当に俺の個人情報、名前と生年月日が書いてある……それに加えて、これは……“E”? アルファベットじゃないか)
ふと目について疑問に思ったそれについて俺は彼女に問う。
「このEってのはなんですか?」
「ああ、そちらはランクですね。冒険者としての」
「ランク?」
「はい。冒険者は実力や実績に応じてランク分けがされるんですが、それの一番下がEです。ああ、安心してください。これは決してあなたが弱いとかではなく、登録したての冒険者は皆Eですよ!」
彼女は説明に加えて、特に考えていなかった点についてのフォローもしてくれる。
「それで、Eから順に、D、C、B、Aとランクが高くなっていき、最高のランクはSです」
「S……」
(Sが一番上か。元の世界でもたまにこんなランク分けを見た気がするな。それはこっちでも同じなのか)
「ランクが上がるごとに、受けることができるクエストや、得られる権利やサービスが増えたりするので、ぜひ上のランクを目指してくださいね!」
「なるほど。ちなみにランクを上げるのはどうすれば良いんですか?」
「基本的にはたくさんクエストをこなすのみです。その実績に応じてこちらが勝手にランクを上げさせていただきます。ランクが変われば、そちらの冒険者カードに書かれているランクも勝手に変化しますよ」
俺はカードを見直し、その勝手に変化するということに驚く。
(紙に書いてある文字が勝手に変化するのか……さすが異世界ってところか)
「とにもかくにも、これで冒険者登録はおしまいです。これからの冒険者ライフ、頑張ってくださいね」
俺はそう言われた後、しっかり冒険者ギルドの設備について説明を受けたのち、この街の地図を受け取ってそこから離れた。




