冒険者登録
(お、おお……! なんて賑やかさ! 元の世界ではあまり見たことのない雰囲気だ!)
そこに入った瞬間、このような感想を俺は抱いた。
武具を装備したまさに剣士といった人やら、ローブや杖を手にした魔法使いのような人たちが大勢いる。
ほんとにファンタジーの世界のようだ。
(あっちの方は飲食ができるみたいだな。で、あっちは雑貨店的な店かな。こちらもファンタジーらしいアイテムが売っている。で、正面奥の方に見えるのがカウンター……とりあえずあそこに行ってみよう。特に人が集まっているし、他の場所にはまだ大したようはない気もするしな)
そのように決めて俺は真っ直ぐ足を進める。
(あれは……掲示板か?)
カウンターの両脇に大きいのが二つずつ、合計で四つか。結構、いや相当なサイズだが、それを埋め尽くすほどにたくさん紙が貼られている。一枚一枚が大きいとかじゃなく、普通の書類程度のサイズ。
(何が書いてあるんだろう)
気になって俺はその掲示板に近寄った。
『スライム4匹の討伐——ゴールド×200』
『ゴブリン1匹の討伐——ゴールド×300』
そんな感じの内容が紙一枚に一つ。書かれている。
俺はその内容を見て疑問をいくつか頭に浮かべる。
(これはクエストか……? にしても、ゴールドってありゃソシャゲの、コンビューアで使える通貨じゃなかったのか? ここに書いてあるってことは、この世界でもゴールドが通貨として使われている? とするとコンビューアの、たとえばデイリーミッションとかで獲得したゴールドももしかしたらこちらで通貨として使うことができたり……?
んでそのうえだ。このゴールドがコンビューアのゴールドと同一の価値なんだとしたら、デイリーミッションの報酬、破格じゃないか!? だってあれの報酬、たとえばスライム3匹の討伐でゴールド×500だとか、ゴブリン1匹の討伐でゴールド×1000だとか、そのおまけにダイヤも手に入るし……)
俺はそのように考えるのと同時に、“デイリーミッションは絶対にやるようにしよう”と思った。
(さて、ぼちぼちカウンターの方も見に行こう)
俺は隣の方へ足を進める。
そしてカウンターを見る。
カウンターの向こうには何人かの女性が主に緑と白色の制服を着て、そこに用があるのであろう人たちの対応をしている。
俺も空いている女性の前に赴いた。
「すみません」
俺がそう言うと、彼女は「はい。どのような用ですか?」と俺に聞いた。
「用……というか、ここで何ができるのかがわからなくて、教えていただけないかな……と」
「ここで——というのは冒険者ギルドで——ということでよろしいですか?」
「はい。大丈夫でしょうか」
「もちろん大丈夫ですよ! それでは説明いたしますね」
俺が「お願いします」と言うと、彼女による説明が始まった。
「冒険者ギルドは、クエストと呼ばれる多様な仕事をこなし、金銭を稼ぐ冒険者のための施設です。クエストはあちらの掲示板にたくさん張り出されています」
そう言う彼女の指がさすのは先ほど俺が確認をしたものだった。
「そして、クエストを受ける冒険者はあそこから受けるものを選び、取ります。そうしたものをこちらのカウンターに持ってきて手続きをすることでクエストを受けることができます」
(確かにその冒険者らしき人たちがそのような動きをしているな)
「こちらのカウンターはそのような作業や、今のようにお客様の質問に答える仕事をになっております」
彼女はその言葉に、「それに……」と言葉を付け加える。
「もう一つ、ここが担う大切な仕事が、冒険者登録です」
「登録?」
「はい!」
俺の問いに彼女が元気に答えた。
「冒険者登録。文字通り、冒険者に登録することです。簡単な段階を踏むことで、どなたでも冒険者になっていただくことができます!」
「どなたでもって、それは犯罪者とか、身分の証明が難しいような人でもですか!?」
俺は自身がここからみたら異世界から来た、後者の立場にあるためそんな問いをする。
「ええ、そうですね。冒険者は人々にとって必要不可欠ですから。なんせ人々を襲うモンスターの討伐が主な仕事ですからね。そうでないクエストもありますけど。人員が必要なんです。だから身分問わず、実力があるものなら働ける。それが冒険者です。ああ、ただ一つ……」
彼女がそのように言うため俺は「なんですか?」と聞き返す。
「ほかの職業と違い、冒険者のクエストの中で大きな怪我や、もし死亡したりしてしまっても特別な場合を除き、ギルドは一切の責任を負いません。これ以外にもほぼあらゆることで自己責任となっています」
「……なるほど」
こんな冒険者に関しての説明を聞いた俺は検討する。
冒険者になるかどうかを。
(自己責任、か。万が一があるとやっぱり怖い。ただこの世界でなんの身分も持たない俺が他の職に就くのは難しそうだ……うん。決めた)
「登録してもいいですか? 俺も冒険者に」
「……! もちろんですよ! 早速手続きいたしますか?」
「はい」
「分かりました! 少々お待ちください!」
そう言って彼女は奥の方へ入って行った。




