いざ異世界。そして10連ガチャ
瞬間、俺の視界には色づいた世界が映っていた。
さっきまでいた真っ白な空間ではない。緑の木々やさまざまな色の花、見上げれば青い空。
すぐに俺は気づく。
「ここが異世界……」
いつの間にやら緑の地面に座り込んでいたため、俺は立ち上がり、ケツについた土とか、そういうのをパッパッと払う。
その時俺は自身の右手に持たれていたものに気がついた。
「これは……ああ、あのコンビューアとかいうやつか。これが俺の力? の一部なんだよな」
まるでスマートフォンのような形のそれは、変な石に真っ暗な液晶がついていた。
「サクラちゃんのいう通り、これが本当にスマートフォンみたいなものであるのなら起動とか、することができると思うんだけど……」
俺はそれをくるくる回して見ていると、それの横側にボタンのようなものを見つけた。
とりあえず押してみようと、そんな精神で俺はそれをポチっと押し込むと、コンビューアの液晶が色を変えた。というより光った。
「これが電源ボタン的なものだったか。さて、これには一体なにが待っているのだろう」
俺はやや恐れつつも、好奇心のままにその画面が映すものを待つ。
「映った! ってこれ……」
瞬間、その画面に映し出されていたのは俺に馴染みのあるものだった。
「なるほど……サクラちゃんは俺がしょっちゅうプレイしてたゲームに似せて作ったとか言っていたな……。そういうことか」
画面に映されたものは、あのソシャゲの、プレイヤーの集めたキャラクターたちがたっている美しい世界。あれでは『マイワールド』と呼ばれていた。
とはいえ今コンビューアに映っているマイワールドらしきその世界にキャラクターは1人もいないようだ。
そんな状態のコンビューアを俺がさらにワンタップすると、こちらもまた見覚えのあるものが映る。
「ログインボーナス……これもあれと同じか」
一日一回もらえる報酬。それが画面に映されている。
「で、もらえるものは……ダイヤ三十個! あれと同じならガチャ10連分だぞ!」
いまもらったものが画面の右上、自身の持つゲーム内の通貨が表示される場所に“30”と、表示された。
ここはダイヤの個数が表示され、そしてその上には明らかに、もう一つのゲーム内通貨であるゴールドの所持数を表示されるであろう隙間が残されている。
「んでダイヤがあるんだから……この馴染みあるアイコンを押せば……やっぱガチャだよな!」
そのガチャの画面にはピックアップ、つまりそのガチャの目玉であるキャラクター、クリアデスという女性がドーンと映されている。
「見たことのないキャラクターだ……システムは似ているが、違うところはあるのか。んで天井、ピックアップが確定されるのは100連かあ。これはあれと同じみたいだな」
そう、システムを確認しながらも俺の指はガチャを10回連続で引くためのボタンに進んでいた。
「せっかく10連分、あるんだし引いちゃってもいいよな!」
瞬間、コンビューアは黄金の輝きを放った。いわゆるガチャ演出ってヤツだ。それが液晶に映されている。
そのようなものを見た俺は気分が……沈んでしまっていた。
なぜか。それは、俺の記憶のあれとこれが同じであれば、もうこの段階でほとんど確実に、ガチャの結果が非常に残念なものであると分かってしまったからだ。
「く、くそ……異世界初ガチャで爆死とかやめてくれよ……! この結果で俺が元の世界に帰れるかどうかとかに関わってくるかもなんだぞ! ま、マジで頼むから……ピックアップとか、高望みはしねぇからせめて最高レアだけでも……!!」
これのシステムがあのソシャゲと同じであれば、ガチャの演出で金色に光るのは最高レアである、“UR”が排出されることが確定していないということだ。URが確定する時は、虹色に光るのだ。
ちなみに俺がやっていたあのソシャゲでは、リリースから2年ほど経ったタイミングでURを超える最高レアの“LR”が実装されたのだが、このコンビューアのにはまだいないのか、今回のピックアップはURであった。
ともかく、現状ではURがこの10回連続ガチャから排出される可能性は低い。だがもしここで引いたものが俺が魔王を倒すための力となるのであれば、ここで引けなければ、少し悲しいことになってしまう。
だから俺は当たれ、と。そう願うのだが……結局このガチャでそれが出ることはなかった。




