魔王を倒すという決意
「それでだ……そろそろ俺をこの空間に幽閉している理由を教えてくれ。俺としては本当に帰してほしいんだが、なんでか帰す気もないんだろう?」
俺はサクラちゃんが神であることをとりあえず信じ、その謎の答えを聞く。
「わかったわ。ちなみに言うけど、幽閉するつもりはないわよ? ここはあくまで中継地点だから」
「中継地点? どこまでのだ?」
「あなたにとっての、異世界よ。わたしの目的はあなたを異世界に送ることなの」
「な、なんだって……? 本当に何を言っているんだ!? それはどういうことなんだ!?」
俺は彼女から、異世界へ送る と告げられ、それの詳細がどういったものかと、聞く。
「あなたにはその身体で異世界に転移してもらうわ」
「そ、それはなぜ!?」
「えっと、それはねぇ……あなたにその世界にいる魔王を倒して欲しいからだよ」
彼女の口から出た言葉に俺は困惑する。
(魔王……だって? んな、ファンタジーみたいな……いや、本当にそこが異世界ならあり得るのか……?)
「と、とりあえず待ってくれ。まず俺がそれを拒否するのは許されないんだよな?」
「うん、そうだね。もしそれをしないなら一生をこの何にもない空間で終えてもらっちゃおうかな」
「……ッ!?」
サクラちゃんは笑顔を崩さないまま平然とそんな恐ろしいことを告げる。
「くそ! そんなの拒否できないじゃないか!」
「そうだねぇ。こっちは拒否させないために言ってるんだし」
「そ、それじゃあ次だ! 仮に俺がそこに行くとして、俺はそんな魔王だなんて倒せる力は持ってないぞ!」
それを言うと、彼女はにやり、とまるで子供が何かを企むようなやや幼い笑みを浮かべた。
「そうよね! だから用意したの。とっておきの、あなたが魔王を倒せるようになるかもしれない力を!」
「力……!? それを俺にくれるってことか……?」
「ふふっ、そういうこと。それじゃあ気になってるだろうし、その力の内容を教えてあげる。せっかくだからあなたが好きなものに寄せた力にしてあげたよ」
そう言って彼女は指を振る。
すると、突如俺の手元に謎の、片手サイズくらいの板が現れた。
(こ、これは……なんだ? サイズ的にはスマホくらいか?)
「それはあなたにこれから与える力の一部。まあ、スマートフォンみたいなものだね。使える機能はあれほほんの一部だけれど。名前はコンビューア。とにかく、これの説明よりも先にあなたに与える力の方を説明しないと」
そう言って彼女は語る。その力とやらの中身を。
「あなたに与える力は『ソーシャルゲーム』いわゆるソシャゲってものやつよ。あなたがしょっちゅうプレイしていたあのソシャゲに近づけて私が作ったソシャゲのシステムを、異世界で暮らすあなたにインストールさせるの」
「???」
(理解ができない。力がソーシャルゲームというのはかろうじて受け止めよう。その力が俺がよくプレイしていたソシャゲを真似たものである、と。そこまでも受け止めてやろう。んで、それを異世界で暮らす俺にインストールさせる……だと? インストールってなんだ? それをしたら俺はどうなる? 全てがわからない)
「わけがわからないって様子ね。まあ簡単に何ができるようになるかってところを教えてあげましょうか」
「それもそうだが、インストールってのもよくわからないんだけど……」
「そこはまあ雰囲気でお願いするわ。それじゃあ話すわよ」
サクラちゃんはそう適当に俺の質問に返して自分の話したいことを話し出す。
「ソーシャルゲームの力の中で特に注目したいのは『ガチャ』ね」
「……ガチャ? ガチャってあの?」
俺の頭に浮かぶガチャはゲーム内での報酬や課金をしたりで手に入る『ダイヤ』を使って引くと、主にキャラクター。それと基本ハズレ扱いになりがちだがさまざまな装備やアイテムが手に入るというものだ。
そしてそれからサクラちゃんが話したガチャの内容は……
「ええ、ダイヤを使って引くと色々キャラクターとかアイテムが手に入るあのガチャよ」
俺の頭に浮かぶガチャと同じであった。
「あのガチャだったか……それって、異世界でガチャを引けるのか?」
「ええ」
「でもって、引くとキャラクターとかが手に入るのか?」
「何が引けるかは実際に引いてみてからのお楽しみでお願いするわ」
「そうか」
もう何を言ってもこいつには無駄な気がしてきた俺は、異を呈しはしなかった。
「ちなみに、ガチャを引くのに必要なものは?」
「それはダイヤね。あなたがよくプレイしていたものと同じよ」
「やっぱりか……異世界でそのダイヤはどうやって手に入れるんだ?」
「デイリーミッションとか普通のミッションとか、異世界にいくつもある魔王によって生み出されたダンジョンを攻略したり、まあそういったことをすることで手に入るわよ」
サクラちゃんの語るダイヤの入手方法というのは、俺のプレイしているソシャゲとかなり似通っている。 彼女の作るシステムがそれに似せているというのは本当のようだ。
「どう? そろそろ異世界に送ってしまっても大丈夫かしら? 私、話していると早くあなたが異世界でどう魔王を倒すのがみたくなっちゃったから」
「そもそも俺は異世界に送られることすらイエスとして……いや、俺に拒否権はないのか……。あ、それとだ! なんでお前は俺に魔王を倒させようとする!? 俺にはお前がそうさせようとする理由がわからねえ……」
俺は彼女が魔王を倒して欲しいと、そう言ったその時から気になっていたことを聞く。
「それは……まあ気にしないでちょうだい。とにかくあなたの目的は魔王を倒すこと! そうね……ちゃんと魔王を倒してくれたらあなたを元の世界に帰してあげるわよ? ちゃんと、あなたをここに連れてきた時間のね」
サクラちゃんはとても適当にそれを秘匿する。
(くそ……答える気はないのか。それに、元の世界に帰してくれると、そう言われると魔王を倒さざるを得ないじゃないか……)
「……………………わかった。やる。やればいいんだろ! やってやるよ! 魔王を倒して元の世界に帰ってやる!!」
俺は決意した。異世界へ行き、魔王を倒すことを。
「……っ!! そう言ってくれるのを待っていたわ! 言ってくれなければ無理やり送ってたけれどね。ということで準備はいい? そのコンビューアは落とさないでちょうだいね」
サクラちゃんは跳ねるような勢いでこちらに近づいてくる。
そして指を振った。
「それじゃあ行ってらっしゃーい!」




