再戦。そして勝利
「ふう……目を離さない、立ち向かう勇気かぁ」
俺はお尻についた泥のような湿った土を手で落としながら、アストラさんの言葉を思い返していた。
ゴブリンを一瞬で倒した。という視覚情報以外に、俺はなんとなく雰囲気で彼女は強者だと感じた。
圧倒的な強者感。
ソシャゲなら確実に最高レアの《UR》に位置しているだろう。雰囲気だけだと。
「魔王を倒すならきっと彼女よりも、この世界の誰よりも強くならなきゃだ。よし……ゴブリンなんて、ぶっ飛ばしてやる!!」
最終目標を再確認し、鉄のナイフを強く握って覚悟を決める。
そうしてまた歩き出した。
森の中を歩いて、ゴブリンを探すうちにもう一体スライムを倒した。
これでスライムに関するクエストは終わりだ。
そんなこんなで——
「ギャオォ!!」
「!!」
ついにお出ましだ。
「ふう……今度はもうお前から目は離さねえ。倒してやる!」
「グギャオオ!!」
俺が意気込んだ瞬間、ゴブリンはこちらは飛び込んできた。
じっとその動きを見て、俺は少し横にずれる。
「な、なるほど……! 目を離さないってのはこういうことか! これなら!」
瞬間、俺は再度振り向いてこちらに飛びついてくるゴブリンの攻撃を回避。
そして、ザシュッ!
「ギギャア!?」
「反撃もできる!」
俺はナイフでゴブリンの左腕を切り飛ばした。
「アストラさんの言っていた通りだ! このナイフなら簡単にゴブリンを斬れる!」
ゴブリンは左腕の切り口を押さえ、苦しんでいる。
今がチャンスだ。
俺はめいいっぱい地面を蹴り、そのブーツで実現できる最高スピードでゴブリンに接近。
「うおおおおお!!!!」
そのままゴブリンの首を斬り飛ばした。
ビチャリ。
ゴブリンの血液が俺の顔に跳ねる。
その冷たさが「はあ、はあ……」と少し興奮状態にあった俺を落ち着かせた。
「やっ、たか……?」
俺はゴブリンから目を離さず、じっと見ているとそいつはサァァァ……と静かに灰となって消えた。
その光景を見て、一度ゴクリと息を飲む。
そして少しの硬直ののち俺は両手の拳を強く握りしめて叫ぶ。
「———ッ!! 勝ったぁぁぁ!!!!」
まだまだ低ランクのモンスター。
だが俺にとっては一度負けて、怯えた相手だ。だがそんなヤツにこうして勝てたことがとても嬉しかったのだ。
それか少し時間をかけて高鳴る気分を落ち着かせた時、俺はコロリとその場に落ちているものを発見した。
「これは……爪?」
俺はそれを拾って確認すると、それは白い尖った爪。
「特に気にしてなかったけど、倒したモンスターは身体の全てが灰になって消えていた。こいつだってスライムだって、アストラさんに倒されたゴブリンだってそうだった。それがこの世界のシステムなんだろう。けど今回はこの爪のみがなぜか残っている……なんでだ?」
俺はくるくるとそれを回しながら眺め、考えて、結論を出した。
「まあ、ここは異世界だ。元の世界の常識で考えちゃいけないだろ。冒険者ギルドで聞いてみようか。とにかく! これで受けていたクエストも、デイリーミッションも全部達成だ!」
俺はコンビューアを取り出し、デイリーミッションの報酬を受け取った。
「1000ゴールドとダイヤが二つ。スライムの方の報酬も合わせたら1500ゴールドとダイヤが三つか。……デイリーミッション一日分でダイヤはガチャ1回分。10連には程遠い、か……明日のログインボーナスでたくさんもらえたら嬉しいけど、どうだろう」
ガチャを10回、つまり10連を引くにはダイヤが30個必要だ。今の俺の所持数は3個。
別に単発(一回だけ)で引くことはできるけど、それは少し損をしてしまうかもしれない。
なぜならこのガチャは、10連を引くとSR以上が少なくとも一つは確定で手に入るから。
単発で10回引く場合だと、Rしかでない可能性だってある。
どうしてもすぐに何かアイテムが欲しい時以外は10連で引こう。
俺はそう決めているのだ。




