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実感する“死”

 「また来たか! ……っ!」

 それを聞いて振り向くと、そこには二足歩行で、深かあ緑色の細い胴体、縦に長い顔をしたモンスター。

 ゴブリンだ。

 

 「ギャオォ゛!!」

 「ちっ……こ、来い!!」

 俺は鉄のナイフを構える。


 「ギャオギャオオ゛!!」

 ゴブリンはその二足で地面を蹴り上げ、こちらへ駆けてくる。

 

 (いける! この程度の動きならスピードブーツがあれば全然俺の方が速い!)


 ズザ!

 俺は少し横にずれ、ゴブリンに当たらないようにして真っ直ぐ走り、すれ違いざまに斬った。

 

 ビッ! とゴブリンにできた切り口から青い液体が跳ねる。

 

 「グ……ギャオオオ!!!」

 先ほどよりも強く、勢いよく地面を蹴り上げたそいつは俺との距離を縮め、右腕を振りかぶる。

 「ひっ、くうう゛!?」

 それにびびって咄嗟に顔を両腕で覆ってしまうとゴブリンの右腕は強く俺を打った。

 

 「く、うう……!!」

 俺はその場に尻もちをつかされ、左手を地面につく。

 (こ、こいつ……スライムなんかよりも全然怖い! 自分と同じくらいの背丈の化け物が襲いかかってきてるんだ……そりゃ怖えよ……!)

 そんな姿勢のままゴブリンから逃げるように後ずさる。

 

 「ギャオア゛!!」

 「く、くる……!」

 俺は咄嗟になんとかしようと、ブンブンと鉄のナイフをスライムの時のように振り回す。

 が———


 バチィンっ!!


 「あ……」

 弾かれた。

 ナイフがゴブリンの手によって遠くに弾き飛ばされた。

 それに気づいた時、俺は言葉を発した。

 「お、終わった……」

 顔は青ざめ全身ガタガタ震えたその状態で俺は涙を浮かべる。あまりにも惨めだ。

 先ほどまで(いける!)と思っていた自信など、もうどこにもない。

 

 そんな状態の俺に振りかぶられるゴブリンの右腕。

 ヤツの視線は俺の顔面をしっかり映している。


 「ひ、うわああああああ!!!!」

 その腕が振るわれた瞬間、俺はそんな無様な叫び声をあげた。

 

 その瞬間だ。

 

 ズルリ———


 その右腕が、ヤツの肩からずれ、落ちる。

 

 ビチャリ


 周囲に青い液体が大量にとんだ。


 「ギャアア゛ア゛ア゛ァァァ!?!?」

 「え?」

 その状況を目にし、ゴブリンの耳が痛くなるような叫び声を聴いて俺はすっとんきょうな声を漏らした。

 

 そのままゴブリンの首も、目に追えない一閃によって斬り飛ばされた。


 「ヒギャアアアアアアアアアアアア———!!

 ゴブリンの断末魔が俺の鼓膜を激しく揺らす。


 「な、にが……」

 そんな状況に俺が顔を上げると、そこに立つのは細長い銀の剣を鞘に収める女性。

 

 森に漂う冷たい風が彼女の真っ赤な長髪をたなびかせる。

 

 そんな彼女を見た俺はつい(美人だ……)と状況にそぐわないことを思ってしまう。

 華奢な身体に長い脚。前の世界だとモデル体型などと呼ばれる体型だ。

 

 おまけに胸が大きい。

 彼女の身体と、彼女がつける鋼鉄の胸当てにわずかな隙間を作っている。胸当てに押しつぶされているのに、だ。

 状況的に、俺は彼女に助けてもらったのにも関わらず性欲にしたがってこんなことを思ってしまい、とてつもない罪悪感に駆られた。

 

 そんな彼女は髪と同じく真っ赤な瞳で俺を見下ろして言う。

 「大丈夫?」

 「あ、へ……す、すいません!」

 「????」

 罪悪感のままに俺はついそんなことを口走った。

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