初めての戦い
冷たい風に揺れるたくさんの新緑の葉。
それが日光を遮断しているためなかなか薄暗い。
そんな森の中を俺は単身進んでいく。
「……こんなに冷えた風を受けたせいか? トイレに行きたくなってきた。はあ、そもそもこんなナイフ一個でスライムとか、ゴブリンとか、そんなモンスターに俺が勝てるんだろうか。俺は幼少期からモンスターなんてのがいる環境で過ごしてきたわけじゃない、ここからすれば異世界の人間だ。肉体の強度とかが違うんじゃないだろうか」
急に不安になって俺はそんなことをつらつらと吐き出していく。
「……もう引き返してしまおうか」
そう、俺が思った瞬間だ。
ガサリ
「っ!?」
地面に重なる葉っぱが大きく動かされたような音が俺の耳に届いたため、そちらへ振り向く。
「う、わあ……!?」
緑の粘液のようなものが丸い形状で地面を這っている。
スライムが1匹現れた!
思わず俺は一歩後ずさる。
「こ、こいつがスライム! こいつがモンスター! 大きさはリュックサック二つ横に並べたくらいか!? ——っ、ままだ可愛げがあるじゃねぇか! い、いいぜ! やってやる!!」
俺は恐れ、足をカタカタ振るわせながらもそう啖呵をきった。
すると、スライムがズザザザ、とゴキブリのように素早い動きで地面を這って俺の方へ向かってきた。
思わず「うわあ!」と情けない声が出てしまう。
そしてスライムはビョンっと少し体を伸ばして俺に飛びついてきた。
「く、うおお!!」
恐怖で目を瞑りながらも俺はがむしゃらにブンブンナイフを振るう。
すると———
ザシュッ!
水中で勢いよく手を振ったような手応えがあった。
俺は目を開く。
地面には体に斬り込みが入ったスライムが。
「う、おおおお!!」
すかさず俺はそいつに飛びつき、地面ごと抉るようにナイフでそいつを何度も斬った。
「ふぅ、はあ……や、やった……!」
バクバクとなる心臓を落ち着かせながら、ついにスライムが動かなくなり、その場から消えたのを確認すると、俺はガッツポーズを浮かべて喜んだ。
「や、やれる! 俺はモンスターをやれるんだ!」
そう気づいた俺は森を突き進み、さらに二体のスライムを撃破した。
「ふう、これで三体。もうスライムと戦うのにも慣れてきたぜ……それと、三体だから多分——」
俺がそう言ってコンビューアを起動してみると、そこにはデイリーミッションのクリアを知らせる言葉。
に加え、『受け取る』というコマンド。
ワンタップすると、そのミッションの報酬である、ダイヤ×1とゴールド×500がコンピューアの表記に加算された。
「これで一つ目のデイリーミッションは達成か。ダイヤは一つ、十連を引くにはあの29個かあ。先は長い。んで、ゴールドの方だが、これ。取り出してこの世界のお店とかで使えるんだろうか。多分、この世界での通貨もこれだから、デイリーミッションで受け取ったこれを使えたらかなり嬉しいんだが……」
そんな考えで適当に、それらしい動作をコンビューアで行うと———
ポンっ!
茶色い袋に包まれた金貨がコンビューアからとびだした!
と、同時にコンビューアのゴールドの表記が0になる。
「おお! ちゃんと取り出せた! ってことはこれで買い物もできるかもだな。ようし、あとスライムとゴブリンを一体ずつ倒せばデイリーミッションもクエストも全て完了するし、やってやろう! やる気が出てきた!」
俺がそう言うと、ガザガサ。
また背後から物音がした。




