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罪悪と愛情  作者: 暦海


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理不尽?

「――困るよ、古城ふるきくん。提出する前にちゃんと確認してくれないと。君はお気楽な立場で良いかもしれないけど、大変なのはこっちなんだからかね」

「……申し訳ありません、渡辺わたなべ主任。以後、気を付けます」



 それから、一週間ほど経て。

 オフィス内の大きなデスクにて、数枚の書類を手にした男性からお叱りを受ける僕。そして、そんな彼に頭を下げ謝る僕。お叱りの理由は、数日前に提出した書類の確認を怠ったことにより後ほど不備が見つかったとのことで……はい、申し訳ありません。


 ところで、それはそうと……お叱りの最中さなか、少し遠くからずっと刺すような視線がひしひしと……うん、どうしたものやら。





「――あんなの、おかしくないですか!? どう考えても主任の不注意なのに、なんで先輩のせいにされなきゃいけないんですか!」

「まあまあ、落ち着いてください降宮ふるみやさん。それに、僕にも責任がないわけでは――」

「ないですよ! 傍から見ても断言できますけど、少なくともこの件に関しては一つもないです!」



 それから、一時間ほど経た夜のこと。

 六畳間のお部屋にて、ハイボールを片手に鋭く言い放つ降宮さん。……うん、すっごいご立腹のご様子で。まあ、僕のために怒ってくれているので有り難いことではあるけども。


 さて、何のお話かと言うと……まあ、言わずもがなかもしれないけど今日の件――数日前に提出した書類の不備に関し、渡辺主任からお叱りを受けていた件についてで。 


 さて、その書類についてなんだけど――提出したというより、提出されてしまったという方が正確かもしれなくて。と言うのも、不備がないか後で確認すべくその書類をデスクに置いていたのだけど……お手洗いにて席を外している間に、僕のデスクの前を通りかかった主任が書類をさっと持っていってしまったようで。きっと、もう完成していると思ったんだろうね。


 そして、そんな事情など何も知らない僕がデスクに戻ると、どうしてか書類が無くなっていることに気付き周章狼狽――恐らくは真っ青になって探していたら、心配そうに声を掛けてくれたのは降宮さん。事情を尋ねる彼女に、主任に提出するための書類が無くなったので探していたと伝えると、それなら主任がさっき持っていきましたと答えが返ってきて。それで、無くなってなかったことに一瞬安堵はしたものの……いや、まだ見直してなかったんたけどね、書類あれ


 ともあれ、そういうわけで降宮さんも事の次第を把握していたので、今日のあの光景にたいそう怒ってくれていて……うん、ほんと申し訳ない。





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