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日仏村(ひふつむら)に到着

 ねっとりと絡みつく霧の中を手探りで歩く。不気味なのは無風で足音すら響かない。山の木々とは違うのに。

 トンネルは意外と短く、直ぐに外に出た。


「霧が薄くなった…」


 息を吐き、山伏式神は先程の立派な設備が施された国道ではなく、古い使われなくなった廃道だと理解した。散らかった枯れ枝や枯葉、崩落した道路を見やり、仕方なくガードレールを歩く。


「私はどこへ連れていかれるのかしら」

 荒れ野にしかいなかったせいか、あまり外の景色を知らない。どこからか鳥のさえずりや獣の気配がしてきた。


「知らない場所は好きじゃないわ」


「好きじゃないから出なかったワケだし」


「新しい住処も探してないし」


 何か看板があり、山伏式神はじっと見つめた。観光地だったのか何とも言えない雰囲気のキャラクターが錆び付いて、さらに異色さを増している。



『ようこそ。日仏村へ』



「あら…人間どもの文字が読めるなんて」

  謎の足を食べたせいだろうか。


「ひ、ぶつむら?聞いた事ない村だけど…新しくできた、とか?」


 人間の文化や土地の名称が変わるくらいは生きていたはずだが、このような名の村は聞いた事なかった。越久夜町からかなり遠いのだろうか。

 渋々進んでいくと、何やら湖が見える。淀みのある陰鬱とした、変哲もない水溜まり。


「だむ?って奴じゃなさそう」

 ダムとやらを作業着姿の人間らが話していたのを思い出す。それとはまた用途が異なるのか。


 人間どもが作る大きなため池とは様相は違い、まわりにちらほらと建物も見えた。

 これが例の日仏村のようだ。


「ん?」

 林の中から視線がして、山伏式神はチラリとそちらを見やる。


 手入れが放棄された荒れた林の合間から子供がなにかを訴えたそうにこちらを見ていた。生きているとは思えない──この世の者ではないようだ。


 しかし人や動物から生じた幽霊ならまだしも、その子供から気配や存在感すら漂ってこず、まるで背景に合成されているみたいだった。


 あの存在は"住む世界が違う"。


 山伏式神は困り果て、見なかった事にしようとした。

 人ならざる者であるのは分かるが、少女は一定の距離から近づこうとしない。

「あ〜…気味が悪い。ああいうの、たまにいるのよね」


 触らぬ神に祟りなし。早歩きでその場を去ると、今度は道の真ん中で死体に出くわした。ここが村の出入口であろうか?


 不自然にミイラ化した死体には杭が刺さっている。頭から串刺しにされ、断末魔を上げたかのように大口を開けている。先程の人ならざる者と関係ない、これは人だ。


「見せしめ?」

 かつて人間どもがやっていた公開処刑に似ている。

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