表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/39

友情と邪推

 ルシャはガッシリと顔を固定させると、瞳を覗き込む。互いの赤い禍々しい色が反射する。

 魔物特有の薄ぼんやりとした光。魔物を客観視する。


 美しい光だ。霧の中に灯るネオンみたいだ。


(…あれは、光っているのか。目()()()()())


「取り込んで自壊したくないの。同じ思想になってちょうだい」

 体が金縛りにあい、直感的に生命の危機を感ずる。


(精神干渉するつもり…?!)


(どうしよう…あのレベルに適う防御力がないわ。…考えなきゃ)


 考えるのは苦手だった。思考停止しして生きてきた。

 人間のように生活する必要がないから。

 今になってそんな仕返しを食らうとは。

 考えろ。


 山伏式神はやはり故郷を懐かしがる。あの荒れ野の景色が嫌でもこびりついて離れない。

 赤い瞳を輝かした奇妙な式神と、それを見やる呆れた──


(そうだった。ここで食われたら…童子式神との約束、破っちゃう…)


 今更、思い出してしまった。彼と約束したのを。


(別に、私の中で特別な存在でもないのに。今、思い出すなんて)


 主従関係でも、契約を交わした仲でもない。でもいつだか、窮地に陥った彼を励ました気がする。

 または違う世界で役割がなく、手持ち無沙汰だったかもしれない。


(アイツは、ズルい奴だった。だって世界の中心にいるみたいな顔をしていたもの)



「何笑っているのよ」


(ま、そんなものよね。魔物の一生なんて)



 食うか食われるかの狭い世の中で何も知らずに一生を終える。理想の人生だった。

 世界の中心であるべきなのだ。魔は。それを打ち破られずに生きていけるのはひと握り。


(童子式神)



 ──なんですか?

 ふいに奴の声音がした。気配を探ってもどこにも居ない。

 ──ハア、やっと魂をくれる気になりましたか?


(ええ)


 ──ええと、どちらが山伏式神なんでしょう?

 山伏式神は邪推してしまった。



(私は…)


 まだ死ぬ気は無い。ならこの境遇を利用するだけだ。



(私は上にいる個体よ!)



 ──なるほど。

「ルシャ様!」お堂の外で待機していたのか、リスが乱入してきた。

「なあに?」

「誰だっ!我らの異界に干渉する者は!」

「そんな奴いるの?」


「いるわよ!私の友だち!」

 素早く印を組み、結界を貼ろうとした。今だ!

 ルシャを突き飛ばし、脱兎のごとく走り出す。四つん這いになり獣そのもので疾走した。


「ばぁ〜か!」

 童子式神に言ったのか、はたまたルシャたちを罵倒したのか。捨て台詞を吐き捨て森に逃げ込む。

久しぶりになりました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ツギクルバナー

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ