魔物としての生き様
宇宙人は存在する。
「んゅあ?」
視界が、脳がぐにゃりと歪む。
人、とは限らないか。
そう、知識を与えた人はいう。白銀の毛並みの物見遊山が大好きな奴が肯定する。
──俺だって宇宙人さ。山伏式神、早く、山の女神を呼ぶんだ。
(だからアンタ誰よ?!てか山の女神?何故?)
その答えはない。あれだけサイケデリックだった視界が瞬く間に現実へ引き戻される。
「宇宙から来た者は誰かに寄生しないと生きられないの」
「ど、どうして、部外者にそこまであけすけに話す訳?」
確かに自らは彼女の半身だったかもしれない。けれどルシャからすれば無造作に取り込んでしまえば良いだけの話であり、丁寧に打ち明ける必要が無い。
「貴方は無知なのよ」
うら若き少女の如くせせら笑っていた顔が無になる。
「ま、まあ…無知かもね」
「…私たちは本来一つだった。けれど人間らが怖いがために胎児を割ってしまった。おまけに母君を侮辱した。知っている?」
「なるほど。憎悪を植え付けたいのね」
「ええ。人間は取るに足らない、馬鹿げた生き物!徹底的に侮辱し、踏みにじる必要がある」
「…。私に由来とか、母親とか必要ない」
きっぱりと言い放ち、ルシャを面食らわした。
「は?」
「魔物は魔物らしく、その日暮らししてる方が楽しいじゃない。快楽に流されてその日の気分だけで生きるの。血に縛られたりするのは人間の分野でしょ?」
彼女は首を傾げる。理解できない、と。
「それはそんじょそこらにいる魔の考えでしょう?」
そんじょそこらに居た魔たちが脳裏によみがえる。
巫女式神。童子式神。奴らは普通の魔の考えではなかったが、ひどく苦しんでいるように思えた。
血に縛られてはいないが、その日暮らしも許されない身分の魔物たちがいる。だからルシャの軽々しい決めつけが癪に触った。
「私は苦しいとか、憎らしいとか、そういうのに囚われたくない」
「そう。確かにそうかもね」
ルシャには分からないかもしれないです。




