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山伏式神の出生の真相とは

 下段にノートとフォトアルバム、また調査報告書の資料がでてきた。するとムヅミが仏間にあったであろうメモ用紙に、鉛筆を走らせる。


『貴方はルシャと同じ魂を持っている。日仏村には貴方の母体となった石がある』


「え?!私が、い、石から生まれたのを知っているの?」

『知っていてこの地にやってきた』

「本当の目的は?」

 ムヅミの手が止まる。


「…いいえ、聞くのはよしとくわ。お互いのために」



 山伏式神なる魔、荒れ野の暴食魔神は己の発生原因(・・・・)を式神として使役された時代に聞かされていた。

 山伏式神──は荒れ野にある自然物に宿り、やがて魔神と呼ばれ、しまいには原因とされた石に封じられていた。それがこの地域にある岩石であり、秩父地方や関東の一部では『秩父青石(ちちぶあおいし)』と呼ばれたものだった。



『その資料を読めば、貴方の由来がわかるはず』


 固唾を呑んで紙の束に手を伸ばそうとした。だが、迷いが生じた。


(魔が出生に縛られるの?神霊ならわかるけど、私は…)


 暴食魔神と恐れられた、それだけの存在──だったら何も怖くない。

 岩に宿っただけのエネルギー。


 無知でいるのはある意味、怖いもの知らずでいられる免罪符である。ルールにも、何にも縛られない。何にも。

 それは何より強く、傲慢でいられる。魔とはそんなモノである。


(私には荷が重い。ダメだ…)


 タンスの抽斗を閉じ、ムヅミを見た。

「ごめんなさい。知りたくない。私は今のままでいい」

 信じられないと目を見開き、メモに走り書きをした。


『このままルシャに食べられて死んでもいいの?』

「それは嫌よ。私はね、越久夜町に帰るのだから。また何千年とあの場所で過ごして、たまに人を食う。いつか消えて、忘れられてオシマイ」

秩父青石、響きが良いです。

関東地方の板碑に使われた石なんです。私も小さい頃は知らなかったのですが埼玉県は板碑が多い県でもあるんですよ。

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