ツバメ
今日は月曜! 月曜真っ黒シリーズです!
昨日、離任式を終えたその足でこの街へ戻って来た。
そう!引っ越したのだ!
しかも4年前と同じ『松風アパート102号室』へ。
私が引っ越した後のこの部屋に住人が居たのかどうか不明だが、部屋に染みついたニオイは昔のままで……さすが『事故物件』だけの事はある。
でも、私にとってそんな事はどうでもいい。
この部屋は……“勝手知ったる”街の安い物件で……
何よりも“あの人”のすぐ近くなのだから。
どうせ数か月間の事だから“巣作り”は、ベッド以外は至って簡便にした。
食器だって、100均で取り揃えたし……
この殺風景な部屋に“あの人”を呼び込む手段はただ一つ!
お金の匂いだ!
昼はパートを掛け持ち、夜はスナックでオヤジ共に媚びを売る。
そうやって働き詰めに働いて稼いで行けば……
いずれ“あの人”はやって来る。
今の私は……
昨日までの『女だてらに中学校の数学教師をやっている“お堅いオンナ”』では無く、男にカモられるのが性のだらしないオンナだ。
4年前の私は正しくそれで……そんな自分が嫌で“あの人”から逃げ出したのだけど……
私の心の奥底には“ある後悔”が眠っていた。
“あの人”は女ならだれでも振り向く程の美顔の持ち主で……しかも私は“あの人”の幼少期の写真を見てしまった。
「あんな珠の様な子を産みたい!」
逃げ出して来たオトコの幼少期の写真を捨てられないでいる自分は……冷静に考えるとどうかしていると思う。
実際、私は“お堅い”就職先に収まり、婚活の末に商社勤務の手堅い男性と婚約した。
その彼が4月からフィリピンへ赴任すると言う。
それを機に結婚して付いて来て欲しいと言われて……
揺れる筈の無い私の心は揺れた。
その震源が……“あの人”の幼少期の写真だった。
もちろん、今の彼と別れて、“あの人”とよりを戻そうとは思わない。
でもあの愛くるしい顔の子供が我が子になる可能性があるのなら!!
どうせ“あの人”は!!
容姿以外は女にとって唾棄すべき存在なのだから!!
利用したって構わないだろう!
4年前には拒み続けていた“中出◇”を……「“バースコントロール”はちゃんとできているから」とOKすれば、カレは喜んで私の上に乗るだろう。
だから私は、婚約者には『夏休みまでは学校を辞められない』との嘘の申告をして、子種を得る為だけに、この街へやって来た。
気の早い私が……万全の準備を整える為の排卵予測検査薬を買いに行ったドラッグストアの軒先にツバメの巣があった。
古びた糞トレイがくっ付いたままになっている。
どうやら去年の物がそのままになっていたらしい。
と、その巣の中で黒い頭と尾羽が動くのが垣間見えた。
もう、ツバメが来ているんだ!
先週あたりはとても寒かった筈なのに……
卵を産んだところでエサとなる虫は充分捕まえられるのだろうか?
でも、この気の早いツバメはまるで私そのものだ!
“古巣”を使って子をなさんとしている。
そう言えばツバメの世界にもメスの浮気があるらしい。
何羽かいる雛の中には別のオス由来の雛が居て……
そうとは知らないオスのツバメは、その雛にもせっせとエサを運んでいる。
そんなツバメも秋には子供達とフィリピン辺りへ還るらしい。
どうやらこの春は……ツバメとの競争になる様だ。
おしまい
季節に合わせて書きました(^_-)-☆
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