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末っ子王子と末っ子迷宮  作者: ふたつき
第一章 始まりは王城の隅っこで
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第一章 五話 贈り物品評会

 今日は僕の成人を祝うパーティのお陰で城内はゆるゆるの雰囲気である。

 そして僕を祝うために、各所から贈り物が届けられていた。ありがとう、大半は顔も名前も知らない人達。

 それらを一時保管をしている部屋へ向かう。入り口に控えていた兵が僕に気づいて声をかけて来る。


「これはヴェレス様。何もこのようなおめでたい時に、このような場所へいらっしゃらなくても」

 

「ちょっと珍しい武具があるって聞いて、見てみたくなってね」

 

 しれっと嘘をつく。男子の成人祝いの品である、それなりの武具が1つや2つや3つあるはずだと確信していた。


「どの品物の事かは存じ上げませんが、武具の類はいくつも献上されております。ただですね……現在目録と実物を確認しているところでありますので、大変に散らかっており、ヴェレス様をお招きするには相応しくなく……誠にお見苦しい有様なのですが……」

 

 入り口の兵士の言葉は歯切れが悪く、暗に入るなと言われてる気がするがここは敢えて無視する。

 

「仕事の邪魔してごめんね」

 

 僕が謝った事で兵は萎縮してしまう。

 

「め、滅相もございません! そのような事は――あ、ヴェレス様!」

 

 慌てた兵の脇を抜け、スルッと部屋に入ってしまう。

 

「ちょっとだけだから!」



 僕が部屋に入った事で、中で作業していた人達が一斉にこちらを向く。

 

「これはヴェレス様! このようなところに――」

 

 作業の代表者っぽい人が掛けて来た声を右手を上げて制する。

 

「ちょっと気になるものがあるから見せてもらうよ。僕の事は気にせず作業をしてて」

 

「あ、え? あ、はい」


 少し混乱しながらも作業を進めてくれる皆の脇から、山になった贈り物を物色する。

 まず目に入ったのは、絹か何かの高そうな生地やら派手な装飾品、彫り物が見事な家具なんかの贅沢品の山。

 売ってしまえばしばらく遊んで暮らせそうだが、そんなものより武器と防具と出来れば杖、あとは何か便利そうな道具は無いかなーっと。

 

 武具の類は贅沢品とは山が別にされていた。

 分かりやすくて助かる。

 槍や斧、大小の剣、弓に大砲、鞭なんて物も。

 槍は嵩張るし、斧や鞭なんて扱えない、大砲はちょっと撃ってみたいけど……弓は矢を持ち歩くのが地味に大変だし、それに矢が無くなってしまえばただの荷物だ。

 遠距離攻撃は魔術ですれば良いとして……とすれば、やはりここは扱い慣れた剣が無難かな。

 良さそうな剣は……と内心で呟きながら、狙いを剣に絞って贈り物の山を見てまわる。

 

 やがて一振りの剣が目を惹いた。

 

 飾り気の無い無骨な鞘と、そこから抜かれて隣に並べられた剣はやや幅狭な刀身をしており、柄などの拵えにも殆ど装飾は無く、実用性を重視したと思える剣だった。

 贈り物としては少し不似合いに見えるが……だからこそ性能に期待出来ると思った。


「あったあった、これちょっと良いかな?」

 

 さもコレが目的と言わんばかりに剣を手に取る。

 一見頼りなさげな刀身だが、そのお陰で軽く重量のバランスも良い、握った柄が手に馴染む感触はむしろ頼もしくすらある。

 

「これは目録との照会済んでる?」

 

 近くに居た作業員へ声を掛ける。


「はい、こちらは騎士団長がご出身の道場からの物ですね。作は武具の名匠、かのバルタザールです」

 

 クレイグの家の道場からの物とは、大当たりだったか。

 剣を目の前に掲げ、切先から柄尻まで鑑定魔術に通す。

 刀身からは非常に精緻に鍛え上げられた鋼の反応が返って来る。柄には魔術回路が仕組まれていることも分かった。

 

「打ち込む瞬間、装備してる者の腕に強化がかかる仕組みかな」

 

 地味で単純だけど威力の強化と手首の保護に効果的だ。

 そばで見ていた作業員が感心した様子で息を漏らす。伊達に様々な物に鑑定魔術を試しまくっていないのだ。

 例の薬には役に立ってないが。


 ふふふ、少し悲しくなる。

 

「これ持っていくね」

 

「あ、はい」

 

 気を取り直して剣を鞘に納めて腰に佩く。

 僕への贈り物なんだから好きにして良いよね。


 次は防具。

 王族に贈る鎧だけあって、全身の守りを堅めた全身鎧が数領、目を引く。

 しかし今は全身鎧なんて扱い慣れてない上に屋敷が建ちそうな高価な物は遠慮したい。まず僕の体格に合わせて調整するのが面倒だし、準備にそこまで時間をかけられない。

 とすれば、急所の守りだけを堅めた軽鎧が良かったのだけど……。


 これはもう全身鎧の装甲を省いて使おうかと思った時、1つだけあった軽鎧が目についた。

 

 一目で分かる、これは良い物だ。

 革を基本にしており、体の要所は守りつつ関節の動きを邪魔しない造りになっていた。

 胸や腹は鋼板が体のラインに合わせ、蛇腹の様に重なり守る。左の肩部分を外せば兜にもなる便利な仕様だ。左腕部分には平根の鏃の様な形をした小盾がついており、先端には相手の武器を引っ掛ける小さな返しまである。

 正しく、実戦を考えた戦士の鎧と言った感じだ。


「こちらも騎士団長ご出身の道場からの物ですね。作は先程と同じくバルタザールとなっております。」

 

「やはりバルタザールの物は流石だね」

 

 さもバルタザール製の武具を見に来ました、という体にしておく。

 良いと思った武具の作者が一緒とは、バルタザールさんファンになりました、素敵な武具をありがとうございます。

 感謝しつつ試しに胴鎧を体に当ててみる、何故かピッタリだ。調整要らずは大変ありがたいけど、なんでだろう?

 クレイグの家の道場からって事だから、クレイグに言われて予め僕の体に合わせてくれたのかな。

 何で僕の体の寸法知ってるの?クレイグ。

 え、怖い。


 一目で剣の間合いを測れる達人ともなると、体のサイズも分かるのだろうと納得する事にした。

 あとは杖があると魔術が使いやすいのだけど、邪魔かなあ。

 杖は体内の魔力を整流し魔術の発現を容易にしてくれるし、地面に魔術回路を描くのにも便利だ。

 あるとないでは魔術の使用難度が一段階変わって来る。また、魔術回路を仕込む事で特定の魔術の使用を格段に早く、簡単にする事も出来る。

 しかし贈り物の杖は、やはりどれも装飾華美な長杖(スタッフ)だ。弓矢を邪魔だと諦めたのに嵩張る長杖(スタッフ)を持ち歩くのもなあ。

 歩き疲れた時の支えに丁度良いと言えば良いんだけど……。


 ダメ元で作業員に聞いてみる。

 

「短杖があったと思うんだけど、見なかったかな?」

 

 あれば良し、無ければ適当に誤魔化して諦めよう。

 

「それでしたらコチラに一把ございます」

 

 おお、言ってみるものだ。まさかコレもバルタザール製……ではなかった。

 

「作は不明ですが、見事な造りの物ですね」

 

 その短杖は前腕ほどの長さの手頃な物で、縞の杢目が綺麗な楓で作られていた。

 真っ直ぐ先端にかけて細くなっており、中程には蔦が絡んだような飾り彫りが施され、持ち手には赤い飾り布が巻かれている。

 杖の後端には、カットの美しい赤い宝石が嵌め込まれ、魔術回路が幾つか仕込めそうだ。

 バルタザール製の無骨な剣や鎧と違って装飾は多かったが、派手すぎない意匠が気に入ったのでこれも頂いていこう。


 武具はこれで良しとして、後は旅に役ちそうな便利な物とか無いかな。

 贅沢品や武具の山とは少し離れて置かれた小さい山を見やる。

 魔道具の類が集められていた。

 宝探しの気分でゴソゴソと漁った結果、旅にも役立ちそうな便利な道具が数点あった。ありがたい。

 その他の細かい物は途中の街で買い揃えれば良いかな。

 そうだ、そういう時に換金できそうな装飾品を……。

 邪魔にならない指輪が良いか。

 その辺から適当に抜き出し指で弾いて次々と鑑定魔術に通す。うむ、中々良い物のようだ。そのまま手に取ってポケットにしまう。

 あとは部屋で荷物をまとめて……薬師と鑑定魔術師の資格証は、小さいし首に下げて行こう……そうだ、隠してた薬品類も忘れずに持って行かないと。



 自室に戻り荷物をまとめていると、これから家出だと言うのにワクワクしている自分に気付く。

 

「そういえば、父上とあの場所へ出かける前日もこんな気分だったよな……ふふふ」

 

 逸る気持ちと寂しさが混ざり合う複雑な笑い声が夜の部屋に溶けて行った。

こんばんは、リリエッタです。今日はおめでたい日ですので、私も飲んでおります。大丈夫です、私酔いませんので。あ、王妃様溢れるのでそこでストップです。はい、お返しに私からも。王妃様にお酌をさせて不敬では、と?いえ、お返ししてるので不敬ではありません。成人された坊っちゃまをお祝いする今の気分は父兄ですが。


それにしてもパーティに乗じての物色とは……流石です坊っちゃま。剣や鎧の質を見極める審美眼、まさにこれまで蓄積された知識の賜物でございます。更に適当な口車で目当ての短杖まで入手されるとは……まさか盗賊の才までおありだとは、このリリエッタ感服いたしました。

あ、坊っちゃま、最後にリリエッタをお忘れですよ。まぁ、忘れられても着いていきますのでご安心下さい。

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