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8話 初日を終えて


 彼らの買い物はまだまだ続く。


⸺⸺ハーモニア魔具(まぐ)店⸺⸺


「魔具? 魔導具とは違うの?」

 ミオは店に入るなり、ショーケースに並んでいる物を見ながら背中のポールへ尋ねる。


『魔導具は空気中のマナを動力源にした機械みたいなもので、魔具は直接魔力が込められた道具なんだ』


「なるほど、この指輪とか可愛いけど、どういう効果があるの?」

『魔具はそれぞれ効果が違って、ほら、ここに追加効果が書いてある』


「あ、ホントだ。魔力強化、だって」

『装備者の魔力をちょっと高めてくれる魔具みたいだね』


「すごい、面白いね。この腕輪は、力強化だって。怪力になるのかな」

『ミオが装備してもあんま意味なさそうだね〜』

「そもそもある程度の怪力じゃないとダメってことか……」


『あ、クロノなんか買ったね、何買ったのかな』

「ホントだ、あ、こっち来るよ」


「お前な、(はた)から見たら独りで喋ってるヤバい奴だぞ」

 クロノはそう言いながら手に持っていた腕輪をミオへ手渡した。


「あはは、気を付けます……えっと、ありがとう」

 彼女は苦笑しながら腕輪を受け取ると、早速腕に装備した。


『なんの追加効果が付いてるの?』

「まぁ……ただのお守りとでも思ってくれ。もしかしたら要らねぇかもしんねぇけど」

 クロノはそう言うと何故か照れ臭そうにそのまま店を出て行った。


「え、あ、クロノ待ってー」

 ミオが慌てて彼を追いかける。その背中ではポールが独り言を呟いていた。

『もしかしたら要らないかもしれないお守りかぁ、気になるなぁ……』


⸺⸺ハーモニア武器店⸺⸺


「わぁ、魔法使いが持ってそうな杖!」


「そのままの感想だな」

 魔法杖売り場の前で、ミオはぷくーっと膨れる。そんな反応を見てクロノは鼻で笑った。


「まぁ、持ってみろ」

 クロノにそう言われてミオは一本の杖を手に取る。その瞬間、ミオの髪が一瞬ふわっとなびいた。


「わ、何だ今の?!」

 ミオは慌てて杖を元の場所に戻した。


「それは、お前に魔法のセンスがあるってことだ」

「う、嘘だぁ……」

 ミオが半信半疑にもう一度杖を手に取ると、再び髪がふわっとなびいた。

 彼女は試しにクロノへ杖を手渡してみるが、彼の髪がなびくことはなかった。


 ミオは面白くなり、クロノから杖をもぎ取ると別のコーナーにいたエルヴィス、ケヴィン、チャドにも渡してみるが、誰一人髪がなびくことはなかった。

 ミオの髪だけが、皆から杖を受け取る時にいちいちなびいていた。


「ど、どれがいいかな……?」


 ミオはクロノの元へ戻ると、持っていた杖を元に戻し、他の杖も見始めた。


「今みたいに持ってみんのが一番だな。そんでお前の直感で決めればいい。値段は見んな」

「分かった」


 ミオはなるべく下にある値札を見ないように順番に杖を握っていった。

 すると、最後から一つ手前の杖が髪のざわつきが大きい気がした。

 それは、彼女の身長と同じくらいの長さのある杖だった。


「これにする」

 ミオがその杖を手に取ると、クロノは一瞬目を見開き驚いた表情を見せるが、すぐに何でもないフリをした。


「そうか」

 そう言ってミオから杖を受け取ると、そのまま店員のいるカウンターへと持っていった。


 そんなクロノの表情が気になったポールがリュックの隙間(すきま)からコソッと杖の(らん)を確認すると、その店で一番上級者向けの杖であった。



「お前のリュックの側面に杖を固定するベルトがあんだろ」

 会計を終えたクロノはそう言ってミオに杖を渡す。

 彼女が驚いてリュックを降ろして見てみると、確かに謎のベルトが付いていた。


「ほ、ホントだ……どうやって付けるの?」

「近付けるだけでいい。そのベルトは魔具でできてるから自然にくっつくはずだ」

 クロノにそう言われ恐る恐る杖をリュックへ近付けると、カチッという音と共に固定された。


「おぉぉぉ……」

 彼女は感動してカチカチと何度も杖を付け外しするが、クロノに「もういいだろ」とリュックを没収され、(あきら)めたようにそのリュックを背負った。



 日も暮れる頃、ようやくミオの買い物を終えた一行は昼の酒場『白猫亭』の個室でミオの歓迎会をした。

 エルヴィスが昼間のうちにマスターへ個室の予約をしていてくれたのだった。


⸺⸺


 長い時間飲み明かした一行は白猫亭に隣接する宿屋『黒猫亭』で一泊することになっていた。

 その一室では、ミオがポールと共に今日という一日を振り返っていた。


「なんか私さぁ、やっぱり夢なのかなって思えてきた」


『船では現実だって実感したって言ってたじゃん』

「うん、空気とか、買ってもらった物とか全部本物。でも、みんな良い人で楽しくて、寝て起きたらやっぱ夢で独りぼっちの家で目が覚めるんじゃないかなって思ったら、ちょっと怖くなっちゃった」

 ミオはベッドの上でキュッと縮こまった。


『大丈夫、君はちゃんとこの世界に移転してるよ。話、変えようか、マキナになった感想はどう?』

「うん、最初はビックリしたけど、私はこの姿、好きだよ。子供に戻った感じがして何もかもが新鮮だし、何より鏡見たら、可愛いもん」

断崖絶壁(だんがいぜっぺき)でも?』

 ポールは彼女が自分の胸元をスカスカと擦っていたことを思い出す。

「うん、尻尾に衝撃を受けすぎておっぱいがないことなんてどうでもよくなったよ。それに、こういう種族なんだって思ったら、割とすんなり受け入れられた」

『あはは、良かったね』


「うーん、流石に色々あって疲れたな。怖いけどもう寝ようかな」

『そりゃ目に映るもの全部が新しいんだもん、疲れるよ。大丈夫、大丈夫。オイラが子守唄歌ってあげるから、安心して寝なよ』

 彼はそう言うとよく分からない音階を辿り始める。



 とんでもなく音痴だった。


「えっと、ポール、ありがとう。寝れそうだから、もう大丈夫だよ」

『ホントに?』

「ホントのホント」

『そっかぁ。寝れそうなら良かった、おやすみ』

「おやすみなさい」


 ミオは3分もしないうちに寝息を立て始めた。ポールはそれを確認すると、出窓に登りのんびりと夜空を眺めていた。

 月の様な大きな星が煌々(こうこう)と照っていた。


⸺⸺


 翌朝。ミオはポールに起こされると、寝ぼけながら着替えを済ませた。

 そして、急に覚醒する。


「ポールがちゃんと喋ってる!」

『ちゃんと喋ってるときたか……』

「だ、大丈夫だよね、ここ、ちゃんと黒猫亭だよね」

『じゃぁ早く着替えて下の食堂に行ってみよう』

「うん」



 ミオは大急ぎで支度をし、部屋を勢い良く飛び出ると、向かいの部屋の同じく部屋を出たクロノに突撃した。


「うぎゃ!」

 彼女はそのまま跳ね返って尻餅をつく。


「……マキナ族飛び出し注意だな……」

「あ、クロノ……! ちゃんとクロノが居るよ〜!!」


 ミオが急にわんわんと泣き出すので、クロノはあたふたしながらしゃがみ、様子を伺う。

「そんなケツ強く打ったのか? つーか、ちゃんとって何だよ」


 すると、ミオの泣き声を聞きつけて、2つの部屋から双子が同時に廊下へと出てくる。


「「ミオ? あー、船長泣かした〜!!」」


「めんどくせぇタイミングで出てくんなよ……」 


 ミオはお構いなしにわんわん泣いているので、ポールが皆へ事情を説明した。



 説明に納得した双子に頭をヨシヨシされ、涙を拭いたミオは気を取り直して皆と食堂へと向かう。

 先に食堂にいたエルヴィスとも合流し、皆でわいわい朝食を済ませた。


 そして宿を出た一同は、ハーモニア内にあるクラン支部へと向かうのであった。


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